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小話②
※完全ネタバレ※登場人物設定①
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※作中に明記していない設定山盛りです。裏話もあり。
リエン・ジヴェルナ→アクイラ・ヴォフコフ
異世界で奈積として生きた記憶を持つ悪魔つき、未来視の「巫」リーナの娘。一人格だった奈積とリエンの意識が一つの魂として統合されたのは十歳のとき。
「巫」の実子=女神転生候補のため、器としての肉体が異様に強靭。精神との釣り合いが取れていない反面、精神の安定と肉体の成長が比例している。本来の人間の肉体と、女神の器として求められる強靭な肉体とのバランスを取ろうとしたら生殖器官が欠損し、ミヨナの魂が宿らなかったことで不完全のまま生まれ落ちた。
他の悪魔つきと違い、前世と名前が違うのは、この世界における女神の上位存在の圧力が強いため(異世界の前世から同一の存在ではない、この世界のものだと強く認識させる)。
幼い精神を奈積に教え導かれていたが、現実的には極端に孤立しており、真の孤独を拒絶したいがために奈積を一個の存在として扱っていた。
同時に、孤立しすぎて前世からの悪癖(自己犠牲)が更に悪化。人間性や性格よりも役割、役職において人を判断する癖がついた。また対人関係の徹底的な経験不足ゆえに嘘が下手くそな上に、場数を踏んでいるようで踏んでいないのでボロが出やすい。また思い詰めやすい上に秘密主義の単独行動が多かった。
親子や兄弟姉妹など、近い血の繋がりを一目で看破できる(前世からの勘)。
あまりに理不尽な日々を送り続けたせいで、自身に流れる王家の血を憎悪している。
世俗的常識に疎い。
トラウマは主に女性の憎悪的表情、突発的な苦痛、性犯罪、赤色(後ろ二つは奈積から引き続く)。
趣味は読書やからくり関係をいじったりすること。理系。
嫌いなものランキング一位、戦争・性犯罪。二位、「誰かのため」という言い訳。
王女、女王としてはあまりの業績の少なさ、それとは不釣り合いな政治能力、夭逝によって、後世において架空の人物と見なされるも、さらにあとにヴィオレットの手記の発見で実在を証明される。
ガルダ・ザルム
ジヴェルナ最強の騎士。
近衛騎士長→専属護衛兼離宮警備隊隊長→国王親衛隊隊長→ヴォルコフ商会会頭アクイラの護衛。
武神の愛し子並みの戦闘能力の高さゆえに実家の兄と折り合いが悪く、お披露目を機に城に籍を置く。
尋常ではない自身の戦闘能力を心の片隅で持て余しており、その力を持って生まれた理由を無自覚に探していたが、追い詰められたリエンの言葉によって生来自分は「衛る」気質なのだと自覚。それならば、人生まるごと心から捧げる相手は、ガルダの誇りを尊重してくれたリエンがいいとどんどこ没入していった。
本来なら主人に忠実な狂犬になるところ、主人の精神が不安定なので、護衛しつつも大人として主人を支える役回りになったため、戦闘狂は片鱗しか見られなくなった。海のような許容範囲を備えたのも、びっくり箱を体現する主人のため。
リエンとの出逢いによっていっそ生まれ変わったようなものだし生まれ変わるつもりで実家と絶縁(失敗)。それでも主人共々身の置き所が定まったために数年後に考え直し、ふらっと里帰りして、兄と酒を酌み交わせるようになる。
ユーフェ・ラズワルド
フェルミアーネ、ユーフェミアなど複数名前をもつ。
神聖王国王女リューダと獣使いの「巫」シルヴァの一人娘。
リエンと同じく女神の器の異様さを肉体に備えているはずだったが、ミヨナの魂が宿り、完全なる転生を果たしたことで中和された。しかし前世で女神としての力をほぼ奪われており、今生はほぼ人間。
二度の記憶喪失は、転生したものの一人格として留まったミヨナによる精神保全策。精神の成長するに合わせ緩やかに思い出させる仕様だった。出てくるつもりはなかったミヨナが、ファーランのために人格としてはっきり顕現してから、ユーフェに自覚がないまま魂が統合中。
ロナウド家の養女→リエン暗殺の刺客→リエンの侍女(侍女長の養女となる)兼書記官→アクイラの補佐。
夫であるイオンにはミアと呼ばれる(フェルミアーネとユーフェミアから重なる部分を抜き取った愛称)。
※ミヨナはユーフェの精神を、記憶を一時封じることで守ろうとし、奈積はリエンを庇うことでその精神を守ろうとした。二人の違いは、性格と、頼れる相手がいるかいないかという状況の差による。
ヴィオレット・ジヴェルナ
リエンの異母弟王子として生まれるも、母の不貞の子であり、王の直系ではない。十数代前の王家の傍系の血筋。でもしっかり王家の血を目覚めさせており、「覚醒」の端緒は、かつて母に散々いたぶられた翌日のリエンと遭遇したこと。
リエンの死に直面して闇落ちしかけたところ、リエンとの思い出や周囲の援助により持ち直し、「覚醒」の成功例となった。その後、父の便りの「ジスカルディに春が来た」との一文でリエンの復活を知ったものの、本来ヴィオレットが求め愛した姉の存在はもうヴィオレット自身で葬式に出しており、よみがえったリエンは全くの別人という認識のため、愛がよみがえることはなかった。ただしこれからよき友人になるのは確定。
幼い頃から日常的に遊ぶ感覚で記憶能力を鍛えていたら高い記憶能力を持つようになった。
美貌のせいでそれ以外の能力が軽視されがちだったゆえに性格が歪み、腹黒へ到達。しかし周囲の愛を受け取り愛を返すくらいには真っ当な感性が育まれた。後にそれらを自分とリエンのために切り捨てたことで「これ以上はなにも切り捨てない」と自身に誓い、博愛傾向に。
愛称呼びをするのはそこからもう少し仲良くなったとき。ハロルドの場合は政変で足場が心もとなくなったヴォオレットが新宰相と仲良しだと表明するための方策で、王やハロルドからの提案に乗った形。
ガルダとユーフェを呼び捨てにしないのは、二人がリエンが選んだものであり、ヴィオレットのものにはしないという線引きの表れ。
元から基礎能力は高かったが、さらに高めたのはリエンのため。
趣味は特にない。強いていうならリエンとヴィオレット自身の足場固めの画策。文系。
史上類を見ない少年王として即位し、統治時代は長かった。一度揺らぎかけた平和を安定させた立役者として後世に評価される。
ティオリア・ノーズリード
ヴィオレット専属護衛、近衛騎士。平騎士→近衛大隊副隊長。
ノーズリード伯爵家次男。ルシェル派と距離を置きたい家の都合で王立学園には入学しなかったが、代わりに軍部に預けられた。当時の師は将軍グレイセス。実はガルダとは兄弟弟子の関係(ガルダの昇進が早くてすれ違い)。
中枢の政治の空気を日常的に浴びる宮中伯としての厳しい貴族子弟の教育により寡黙で無表情に育ったが、内面は普通の若者。ヴィオレットの外面に流されかけたがリエンとの関わりを見て、改めて見つめ直したことがヴィオレットに評価され、愛称呼びをされるようになる。
未熟な精神をヴィオレットと共にリエンに振り回されながら鍛えた結果、ちゃっかりした性格に。ヴィオレットのふとしたときの強引さは半分くらいティオリアのせい(根本的にはリエンのせい)。
王族姉弟をはじめて平等に尊重した臣下。
リエン不遇の時には、頑張って出世して姉弟のためにリエンの婿に名乗りをあげようかと思ったが、隣国の王子とかガルダが出てきたので手を下ろした。
国王になったヴィオレットの専属護衛の立場は変わらず。縁談が舞い込んできているが本人は興味なし。いつかヴィオレットのためになる縁談があったら受けようかな。
マティス・クレイグ
ヴィオレットの参謀。
クレイグ侯爵家嫡男→当主、宰相補佐。
十歳のお披露目に父親に無理やり銀髪を染められかけたことで父親に決定的な不信感を抱き、その後入学した学園では勉学には重きを置かず、父親と家の使い走りとして城に出入りして政情と家の立場を探る。学園を卒業してから父親とともにヴィオレットに正式に面通し。城内では甘ったれ貴族を装い閑職に就き、継続して調査をしつつ、領政にこっそり手を加え始める。
城内のアルビオンの存在に気づいたことで、ルシェル派に与する家の将来が暗迷か繁栄かという根本的なことを考えるようになったが、その頃に内宮で男装したリエンと出会して色々衝撃を受けた。
「影」に有能と認知されており、始末対象に片足を突っ込んでいたが、リエンから見逃されたので、リエンの不興を買うことを恐れた結果、命拾いした。
自身の銀髪とヴィオレットの美貌を同じような「異端」と考えていたため、ヴィオレットのたぐいまれな美貌に惑わず、ヴィオレットから信頼を受けていた(リエンが見逃した理由の一つ)。
政変の頃にはヴィオレットのためにルシェル派のてこ入れを考えていたが、結局は間に合わず、家の存命に精一杯だったが、領地はこれまでちまちま重ねていた努力で掌握(父親の庶子数名も把握し懐柔済み)。アーノルドたちにその判断力を評価されて、伸び代アリとして次代のための布石とされた。
上司ハロルドの実力に畏怖を抱いていたが段々慣れてきて対応が雑に。基本的に真面目。政変で揺らいだヴィオレットの足場固めのために、対照的に足場が強固になっていたリエンの侍女との婚姻を目論んでいたがフラれた(リエンとの結婚は断固拒否)。結果的にはヴィオレットが国王になったのでよし。
父との関係は悪かったが、母とは良好で、お節介の見合い攻撃から逃げ回っている。
ワルター・ディクセン
ヴィオレットの侍従兼書記官。地方の子爵家出身。
家が貧乏だったので王立学園には入学せず、お披露目の後すぐに城に侍従見習いとして勤める。
稼ぎたいための出世欲と勉学への興味から、工務省在籍の友人の手を借りて働きながら自主学習。素養があったのをアルビオンに目をつけられ、政変時に工務大臣推薦をもらって書記官として臨時登用、実践で鍛えられた。
堅実に働いて稼ぐことを重要視していたため、崖っぷち貴族たちの甘言は受け付けないし、脅迫には普通に虎(上司)の威を借りて対処。
アルビオンへの王族姉弟旅行時に、侍従長ディスケの推薦で試験的にヴィオレットに付けられた。先入観なく職務に忠実なのを買われていたが、旅の間のヴィオレットの扱いを見て肩入れするようになった。しかしあくまで公正かつ書記官と侍従の立場を使い分ける柔軟な姿勢をリエンに認められたことで正式に着任することに(リエン本人は試験官の自覚なし)。
元々場数を踏んでいたのが、この辺りで肝が据わるように。稼ぐためだけではなく主君を戴く忠義心を身に付ける。
ティオリアとはほぼ同年なので友人付き合いをし、マティスのことは爵位とヴィオレットへの忠誠心と政治手腕を尊敬しており、自分の役目は影の立ち回りだと自認して努めるようになる。
ヴィオレットたちが西の塔に投獄されたときに、その覚悟が決定的に開花。
いち早く城を出て工務大臣の手引きでこっそり学園に。ヴィオレットの作った学園改革の草案を無人のリオールの部屋に置き、そのまま一晩学園に潜伏。戻ってきた学園長とも密かに面談して政局における学園の立ち位置を確認したのち、アルビオンに捕縛され西の塔へ。
サームが前日にナキアに全員捕らえたと言ったのは、ナキアが下手に動いて「影」に始末されるのを防ぐため。
塔から出たあとはリエンからの地位簒奪に動くヴィオレットの立ち回りを支援。戦争にはナキアが従軍したので、代わりに城内でマティスと協力して政情の調整に働く。
ヴィオレットが即位するのに合わせて、ナキアに内向きでのヴィオレットの世話をほぼ全て預けて、公務などの外回りの掌握に専念するように。次期侍従長として本格的に教育されはじめる。
ディスケからお茶狂いを継承させるかと思うようなしごきを受けることには辟易しているが一応頑張っており、ハーブティーに目覚めかけている。
アーノルド・ジヴェルナ
リエンの実父、ジヴェルナ国王。
誕生がシュバルツとの百年以上続く戦争の完全なる終結の起因になったため過度な期待を背負わされていたところ、リーナに出逢い「覚醒」。執着を拒絶されないどころか受け入れられて、ずぶずぶと依存していった。
愛した妻を亡くし悲嘆に暮れるだけ暮れまくって結果国が荒れた。
ヴィオレットの血筋には予想をつけていたし、リエンがヴィオレットを王にしようとするのも惰性で黙認していた。リエンはリーナそっくりだがそれだけだったのでなんとも思ってなかったはずだが、同類なこととリエンのやけっぱちさ加減とアーノルドへの無遠慮さに徐々に絆され、一個人として気にかけるように。
傍観者にも責任があるとやっと理解したのが政変のときで、そこからリエンとヴィオレットを我が子と見なすようになった。
「影」を出し抜く隠密能力を持つ。リーナとの交流を通して「影」とも接点が増え、勝手に利用して能力を鍛えた。
隠居してからは暗躍ライフ満喫中。元国王としての伝と知識を縦横無尽に発揮してアクイラにドン引かれている。
リーナ・アルビオン
リエンの実母。アルビオン公爵家長女として一族に溺愛される。
生まれたときから能力を発揮していた未来視の「巫」。
本人は覚えていないが未来視で知ったアーノルドの存在を探し回っては死にかけ、周囲を震撼させた。結果的に出逢えたので奇行は収まったが、破天荒な性格の素地はここで築かれていた。
本能的な行動力でいくつか未来を変えている(ネフィルの誕生やエドガーとナキアの結婚)が、すかさず新たに作り替えられた先の未来を予知していたので、本人に改変の自覚はない。
セルゲイとは「巫」について調べるための伝として関わりを持ち、セルゲイだけはうっすら察しているのを黙認した。
アーノルドと出逢ってしばらくして街中で流浪の星読み(古神の巫女の末裔)に会い、その不可思議を目の当たりにしたことで予知能力と自分の将来について向き合うように。たまにエドガーを連れて突撃してはお茶友達として交流を重ねた。
未来を知りながらその通りに進むことに葛藤し、時には抗い、自由を目指して奔走したものの、毒殺によって幕引き。死後はリエンをずっと見守り、アーノルドが毒殺未遂で黄泉に片足を突っ込んだときには張り倒して説教して送り返した。
強い好奇心と多彩な才能で各分野をそれなりに修養する。
酒を二杯飲ませただけで絡み酒のキス魔に暴露癖を爆発させたので、それ以来周囲から酒を遠ざけられた。
甘味が嫌い。
王妃になると確定してから権力を使って学園の変革を段階的に計画していた。アーノルドの王政と次代の安定のための人材確保が目的だったが、道半ばで死去してルシェル派が改悪してしまった。
国政におけるルシェル派排除を目論んだが、ウォルに悉く工作を潰され敗北を喫した。
ベリオル・ジヴェルナ
アーノルドの第一の側近。王族の末端傍系。
ジスカルディ大公家の後継者として生まれたが両親の夭逝により閉門。
城に向かう道中で自然と「覚醒」したことで、本来予定していた大公家への引き取りはなしになり、「覚醒」の真実も知らされず、王家に預けられることになった。きっかけが特にない「覚醒」は先例がないので、当時城にいたアーヴィンに基礎的なことを学びながら見極められた。
アーノルドと出会い、その孤独に触れて臣下として支えることを決意する(同時にアーヴィンが遠ざかる)。
年上なのを利用して学園で先に足場を整えたり人材を発掘したり、アーノルドの父親について本格的に実践して経験を積む。卒業してからは平和の象徴として在るアーノルドの治世を視野に入れて、軍部に在籍して顔と伝と能力の幅を広げる。
自分の能力の限界を思い知りながらも努力を重ね続けたので天才な年下たちから尊敬される。ただしその負い目ゆえに加減できず、何度か過労で倒れることに。
リーナの死後も揺るがぬ忠誠心とこれまで重ねてきた努力のために、若くして王国の支柱の役割を担わされた。アーヴィンに救援を求めたが突っぱねられ、傾いていく政治に精神が追い込まれていった。
唯一リエンの前で誠心誠意謝罪し、リエンの不遇を背負おうとしたので、子どもたちからも尊敬一色。政変後は復活したアーノルドに加えてリエンとヴィオレットを公然と支援。王家に「影」に代わる諜報機関を創設、現在人材育成中。
そんなこんなで主人は隠居したのに本人の隠居はまだまだ先送りにされているどころか嫁志願者が現れて「おれはロリコンじゃない!!」と全力で逃げ回っている。その影でジスカルディ大公位が復活しかけていることにまだ気づいていない。
ネフィル・アルビオン
リエンの叔父。
本来アルビオン公爵を継ぐはずだった姉の代替品として生を受けた。
リーナが無自覚に未来を変えた(なにがなんでもアーノルドを探し回ってアルビオンを追い込んだ)ことによって誕生した、本来の筋的にイレギュラーな存在。
リーナを追いかけ回るために才覚を身に付け伸ばしていったので、かなり優秀に(クッキー作りなど、たまに方向性がおかしい)。一族にも幼馴染みたちにも末っ子として甘やかされてそれなりに傲慢に育ち、気が利かない性格になった。
未熟なまま「修羅の一族」の血に翻弄されていたが、リエン(奈積)との接触を通して散々に凹まされ、視野を広げることを知り、精神を持ち直した。
リエンを一番はじめに掬い上げた人物として、一族のなかで唯一リエンから身内認定を受けた。
ヴィオレットとは同族嫌悪。ただし大人の余裕を身につけて、段々叔父として接せられるようになった。
政変の時には完全に出遅れたので、せめて以降のリエンの立場を磐石にするために陰日向に奔走。これまで蓄えた情報を駆使して人材を押さえ、アルビオン含めリエンに罰せられなかった貴族たちを制御、外交にも首を突っ込むようになる。
一族に裏切られて暗殺されかけ、下半身が不随になる。亡命したシュバルツでジヴェルナとの橋渡しをしながらヴィオレットを助け、アクイラを見守りながら余生を過ごす。後世に禍根を残さないため、生涯独身を貫く。
奈積への恋心は最期まで自覚なし。手が届かない絶対的な存在への淡い思慕だった。
ハロルド・リベル
旧姓ディアマンテ。子爵家長男だったが絶縁の上宰相となり一家を建て(させられ)る。伯爵位。
興味本位で学園の官僚科に入学したことが運のつき。淑女科のクラリスとは同期生で、図書館で勉強を教えた。クラリス経由でリーナと出会い、結果としてアーノルドとベリオルの目に止まり、ネフィルに目をつけられ、散々に振り回された。
視野の広さと対処能力の高さから、知らない間にアーノルドの側近に収まっていたが、開き直って中枢に腰を据える。側近の中でも使い走りの段階でルシェル派が台頭し、二分した側近内で唯一ベリオル側についたが、そこから実務を本格的に担うように。この時点でアルビオンとオリフラムという二公爵家が大嫌い。
政変まではベリオルのフォローに回った。後宮での麻薬流通で工務省長官を救ったりなどして官僚からの信頼が厚い。
政変後はアーノルドとベリオルに無理やり表舞台に引き出されたがやはり開き直って働く。
目立つ若き宰相の看板を掲げて城内をあちこちうろつき、影響力の把握と官僚の調査、牽制をしていたが、マティスから仕事しろと追い回されるように。ユーフェに目をつけて書記官として育成、ついでに養女にしてリエンの地位固めと宰相家の後継者獲得を目論んでいた。
揺らがない強固な芯を持つゆえ、アーノルドに自身を「使う」ことを許された唯一の臣下。まともな人間性と堅実な手腕、勘の鋭さをリエンに評価されている。
昔から目をつけていたクラリスとどさくさ紛れに結婚成立させた。フラれるのが怖くて正面から向き合ってプロポーズできなかった。これから尻に敷かれながらも友人のような距離感で仕事をしていく。
アーノルド、ベリオル、ネフィルよりも遥かに長く生き、ヴィオレットとその次の代にも大きく貢献した。
リエン・ジヴェルナ→アクイラ・ヴォフコフ
異世界で奈積として生きた記憶を持つ悪魔つき、未来視の「巫」リーナの娘。一人格だった奈積とリエンの意識が一つの魂として統合されたのは十歳のとき。
「巫」の実子=女神転生候補のため、器としての肉体が異様に強靭。精神との釣り合いが取れていない反面、精神の安定と肉体の成長が比例している。本来の人間の肉体と、女神の器として求められる強靭な肉体とのバランスを取ろうとしたら生殖器官が欠損し、ミヨナの魂が宿らなかったことで不完全のまま生まれ落ちた。
他の悪魔つきと違い、前世と名前が違うのは、この世界における女神の上位存在の圧力が強いため(異世界の前世から同一の存在ではない、この世界のものだと強く認識させる)。
幼い精神を奈積に教え導かれていたが、現実的には極端に孤立しており、真の孤独を拒絶したいがために奈積を一個の存在として扱っていた。
同時に、孤立しすぎて前世からの悪癖(自己犠牲)が更に悪化。人間性や性格よりも役割、役職において人を判断する癖がついた。また対人関係の徹底的な経験不足ゆえに嘘が下手くそな上に、場数を踏んでいるようで踏んでいないのでボロが出やすい。また思い詰めやすい上に秘密主義の単独行動が多かった。
親子や兄弟姉妹など、近い血の繋がりを一目で看破できる(前世からの勘)。
あまりに理不尽な日々を送り続けたせいで、自身に流れる王家の血を憎悪している。
世俗的常識に疎い。
トラウマは主に女性の憎悪的表情、突発的な苦痛、性犯罪、赤色(後ろ二つは奈積から引き続く)。
趣味は読書やからくり関係をいじったりすること。理系。
嫌いなものランキング一位、戦争・性犯罪。二位、「誰かのため」という言い訳。
王女、女王としてはあまりの業績の少なさ、それとは不釣り合いな政治能力、夭逝によって、後世において架空の人物と見なされるも、さらにあとにヴィオレットの手記の発見で実在を証明される。
ガルダ・ザルム
ジヴェルナ最強の騎士。
近衛騎士長→専属護衛兼離宮警備隊隊長→国王親衛隊隊長→ヴォルコフ商会会頭アクイラの護衛。
武神の愛し子並みの戦闘能力の高さゆえに実家の兄と折り合いが悪く、お披露目を機に城に籍を置く。
尋常ではない自身の戦闘能力を心の片隅で持て余しており、その力を持って生まれた理由を無自覚に探していたが、追い詰められたリエンの言葉によって生来自分は「衛る」気質なのだと自覚。それならば、人生まるごと心から捧げる相手は、ガルダの誇りを尊重してくれたリエンがいいとどんどこ没入していった。
本来なら主人に忠実な狂犬になるところ、主人の精神が不安定なので、護衛しつつも大人として主人を支える役回りになったため、戦闘狂は片鱗しか見られなくなった。海のような許容範囲を備えたのも、びっくり箱を体現する主人のため。
リエンとの出逢いによっていっそ生まれ変わったようなものだし生まれ変わるつもりで実家と絶縁(失敗)。それでも主人共々身の置き所が定まったために数年後に考え直し、ふらっと里帰りして、兄と酒を酌み交わせるようになる。
ユーフェ・ラズワルド
フェルミアーネ、ユーフェミアなど複数名前をもつ。
神聖王国王女リューダと獣使いの「巫」シルヴァの一人娘。
リエンと同じく女神の器の異様さを肉体に備えているはずだったが、ミヨナの魂が宿り、完全なる転生を果たしたことで中和された。しかし前世で女神としての力をほぼ奪われており、今生はほぼ人間。
二度の記憶喪失は、転生したものの一人格として留まったミヨナによる精神保全策。精神の成長するに合わせ緩やかに思い出させる仕様だった。出てくるつもりはなかったミヨナが、ファーランのために人格としてはっきり顕現してから、ユーフェに自覚がないまま魂が統合中。
ロナウド家の養女→リエン暗殺の刺客→リエンの侍女(侍女長の養女となる)兼書記官→アクイラの補佐。
夫であるイオンにはミアと呼ばれる(フェルミアーネとユーフェミアから重なる部分を抜き取った愛称)。
※ミヨナはユーフェの精神を、記憶を一時封じることで守ろうとし、奈積はリエンを庇うことでその精神を守ろうとした。二人の違いは、性格と、頼れる相手がいるかいないかという状況の差による。
ヴィオレット・ジヴェルナ
リエンの異母弟王子として生まれるも、母の不貞の子であり、王の直系ではない。十数代前の王家の傍系の血筋。でもしっかり王家の血を目覚めさせており、「覚醒」の端緒は、かつて母に散々いたぶられた翌日のリエンと遭遇したこと。
リエンの死に直面して闇落ちしかけたところ、リエンとの思い出や周囲の援助により持ち直し、「覚醒」の成功例となった。その後、父の便りの「ジスカルディに春が来た」との一文でリエンの復活を知ったものの、本来ヴィオレットが求め愛した姉の存在はもうヴィオレット自身で葬式に出しており、よみがえったリエンは全くの別人という認識のため、愛がよみがえることはなかった。ただしこれからよき友人になるのは確定。
幼い頃から日常的に遊ぶ感覚で記憶能力を鍛えていたら高い記憶能力を持つようになった。
美貌のせいでそれ以外の能力が軽視されがちだったゆえに性格が歪み、腹黒へ到達。しかし周囲の愛を受け取り愛を返すくらいには真っ当な感性が育まれた。後にそれらを自分とリエンのために切り捨てたことで「これ以上はなにも切り捨てない」と自身に誓い、博愛傾向に。
愛称呼びをするのはそこからもう少し仲良くなったとき。ハロルドの場合は政変で足場が心もとなくなったヴォオレットが新宰相と仲良しだと表明するための方策で、王やハロルドからの提案に乗った形。
ガルダとユーフェを呼び捨てにしないのは、二人がリエンが選んだものであり、ヴィオレットのものにはしないという線引きの表れ。
元から基礎能力は高かったが、さらに高めたのはリエンのため。
趣味は特にない。強いていうならリエンとヴィオレット自身の足場固めの画策。文系。
史上類を見ない少年王として即位し、統治時代は長かった。一度揺らぎかけた平和を安定させた立役者として後世に評価される。
ティオリア・ノーズリード
ヴィオレット専属護衛、近衛騎士。平騎士→近衛大隊副隊長。
ノーズリード伯爵家次男。ルシェル派と距離を置きたい家の都合で王立学園には入学しなかったが、代わりに軍部に預けられた。当時の師は将軍グレイセス。実はガルダとは兄弟弟子の関係(ガルダの昇進が早くてすれ違い)。
中枢の政治の空気を日常的に浴びる宮中伯としての厳しい貴族子弟の教育により寡黙で無表情に育ったが、内面は普通の若者。ヴィオレットの外面に流されかけたがリエンとの関わりを見て、改めて見つめ直したことがヴィオレットに評価され、愛称呼びをされるようになる。
未熟な精神をヴィオレットと共にリエンに振り回されながら鍛えた結果、ちゃっかりした性格に。ヴィオレットのふとしたときの強引さは半分くらいティオリアのせい(根本的にはリエンのせい)。
王族姉弟をはじめて平等に尊重した臣下。
リエン不遇の時には、頑張って出世して姉弟のためにリエンの婿に名乗りをあげようかと思ったが、隣国の王子とかガルダが出てきたので手を下ろした。
国王になったヴィオレットの専属護衛の立場は変わらず。縁談が舞い込んできているが本人は興味なし。いつかヴィオレットのためになる縁談があったら受けようかな。
マティス・クレイグ
ヴィオレットの参謀。
クレイグ侯爵家嫡男→当主、宰相補佐。
十歳のお披露目に父親に無理やり銀髪を染められかけたことで父親に決定的な不信感を抱き、その後入学した学園では勉学には重きを置かず、父親と家の使い走りとして城に出入りして政情と家の立場を探る。学園を卒業してから父親とともにヴィオレットに正式に面通し。城内では甘ったれ貴族を装い閑職に就き、継続して調査をしつつ、領政にこっそり手を加え始める。
城内のアルビオンの存在に気づいたことで、ルシェル派に与する家の将来が暗迷か繁栄かという根本的なことを考えるようになったが、その頃に内宮で男装したリエンと出会して色々衝撃を受けた。
「影」に有能と認知されており、始末対象に片足を突っ込んでいたが、リエンから見逃されたので、リエンの不興を買うことを恐れた結果、命拾いした。
自身の銀髪とヴィオレットの美貌を同じような「異端」と考えていたため、ヴィオレットのたぐいまれな美貌に惑わず、ヴィオレットから信頼を受けていた(リエンが見逃した理由の一つ)。
政変の頃にはヴィオレットのためにルシェル派のてこ入れを考えていたが、結局は間に合わず、家の存命に精一杯だったが、領地はこれまでちまちま重ねていた努力で掌握(父親の庶子数名も把握し懐柔済み)。アーノルドたちにその判断力を評価されて、伸び代アリとして次代のための布石とされた。
上司ハロルドの実力に畏怖を抱いていたが段々慣れてきて対応が雑に。基本的に真面目。政変で揺らいだヴィオレットの足場固めのために、対照的に足場が強固になっていたリエンの侍女との婚姻を目論んでいたがフラれた(リエンとの結婚は断固拒否)。結果的にはヴィオレットが国王になったのでよし。
父との関係は悪かったが、母とは良好で、お節介の見合い攻撃から逃げ回っている。
ワルター・ディクセン
ヴィオレットの侍従兼書記官。地方の子爵家出身。
家が貧乏だったので王立学園には入学せず、お披露目の後すぐに城に侍従見習いとして勤める。
稼ぎたいための出世欲と勉学への興味から、工務省在籍の友人の手を借りて働きながら自主学習。素養があったのをアルビオンに目をつけられ、政変時に工務大臣推薦をもらって書記官として臨時登用、実践で鍛えられた。
堅実に働いて稼ぐことを重要視していたため、崖っぷち貴族たちの甘言は受け付けないし、脅迫には普通に虎(上司)の威を借りて対処。
アルビオンへの王族姉弟旅行時に、侍従長ディスケの推薦で試験的にヴィオレットに付けられた。先入観なく職務に忠実なのを買われていたが、旅の間のヴィオレットの扱いを見て肩入れするようになった。しかしあくまで公正かつ書記官と侍従の立場を使い分ける柔軟な姿勢をリエンに認められたことで正式に着任することに(リエン本人は試験官の自覚なし)。
元々場数を踏んでいたのが、この辺りで肝が据わるように。稼ぐためだけではなく主君を戴く忠義心を身に付ける。
ティオリアとはほぼ同年なので友人付き合いをし、マティスのことは爵位とヴィオレットへの忠誠心と政治手腕を尊敬しており、自分の役目は影の立ち回りだと自認して努めるようになる。
ヴィオレットたちが西の塔に投獄されたときに、その覚悟が決定的に開花。
いち早く城を出て工務大臣の手引きでこっそり学園に。ヴィオレットの作った学園改革の草案を無人のリオールの部屋に置き、そのまま一晩学園に潜伏。戻ってきた学園長とも密かに面談して政局における学園の立ち位置を確認したのち、アルビオンに捕縛され西の塔へ。
サームが前日にナキアに全員捕らえたと言ったのは、ナキアが下手に動いて「影」に始末されるのを防ぐため。
塔から出たあとはリエンからの地位簒奪に動くヴィオレットの立ち回りを支援。戦争にはナキアが従軍したので、代わりに城内でマティスと協力して政情の調整に働く。
ヴィオレットが即位するのに合わせて、ナキアに内向きでのヴィオレットの世話をほぼ全て預けて、公務などの外回りの掌握に専念するように。次期侍従長として本格的に教育されはじめる。
ディスケからお茶狂いを継承させるかと思うようなしごきを受けることには辟易しているが一応頑張っており、ハーブティーに目覚めかけている。
アーノルド・ジヴェルナ
リエンの実父、ジヴェルナ国王。
誕生がシュバルツとの百年以上続く戦争の完全なる終結の起因になったため過度な期待を背負わされていたところ、リーナに出逢い「覚醒」。執着を拒絶されないどころか受け入れられて、ずぶずぶと依存していった。
愛した妻を亡くし悲嘆に暮れるだけ暮れまくって結果国が荒れた。
ヴィオレットの血筋には予想をつけていたし、リエンがヴィオレットを王にしようとするのも惰性で黙認していた。リエンはリーナそっくりだがそれだけだったのでなんとも思ってなかったはずだが、同類なこととリエンのやけっぱちさ加減とアーノルドへの無遠慮さに徐々に絆され、一個人として気にかけるように。
傍観者にも責任があるとやっと理解したのが政変のときで、そこからリエンとヴィオレットを我が子と見なすようになった。
「影」を出し抜く隠密能力を持つ。リーナとの交流を通して「影」とも接点が増え、勝手に利用して能力を鍛えた。
隠居してからは暗躍ライフ満喫中。元国王としての伝と知識を縦横無尽に発揮してアクイラにドン引かれている。
リーナ・アルビオン
リエンの実母。アルビオン公爵家長女として一族に溺愛される。
生まれたときから能力を発揮していた未来視の「巫」。
本人は覚えていないが未来視で知ったアーノルドの存在を探し回っては死にかけ、周囲を震撼させた。結果的に出逢えたので奇行は収まったが、破天荒な性格の素地はここで築かれていた。
本能的な行動力でいくつか未来を変えている(ネフィルの誕生やエドガーとナキアの結婚)が、すかさず新たに作り替えられた先の未来を予知していたので、本人に改変の自覚はない。
セルゲイとは「巫」について調べるための伝として関わりを持ち、セルゲイだけはうっすら察しているのを黙認した。
アーノルドと出逢ってしばらくして街中で流浪の星読み(古神の巫女の末裔)に会い、その不可思議を目の当たりにしたことで予知能力と自分の将来について向き合うように。たまにエドガーを連れて突撃してはお茶友達として交流を重ねた。
未来を知りながらその通りに進むことに葛藤し、時には抗い、自由を目指して奔走したものの、毒殺によって幕引き。死後はリエンをずっと見守り、アーノルドが毒殺未遂で黄泉に片足を突っ込んだときには張り倒して説教して送り返した。
強い好奇心と多彩な才能で各分野をそれなりに修養する。
酒を二杯飲ませただけで絡み酒のキス魔に暴露癖を爆発させたので、それ以来周囲から酒を遠ざけられた。
甘味が嫌い。
王妃になると確定してから権力を使って学園の変革を段階的に計画していた。アーノルドの王政と次代の安定のための人材確保が目的だったが、道半ばで死去してルシェル派が改悪してしまった。
国政におけるルシェル派排除を目論んだが、ウォルに悉く工作を潰され敗北を喫した。
ベリオル・ジヴェルナ
アーノルドの第一の側近。王族の末端傍系。
ジスカルディ大公家の後継者として生まれたが両親の夭逝により閉門。
城に向かう道中で自然と「覚醒」したことで、本来予定していた大公家への引き取りはなしになり、「覚醒」の真実も知らされず、王家に預けられることになった。きっかけが特にない「覚醒」は先例がないので、当時城にいたアーヴィンに基礎的なことを学びながら見極められた。
アーノルドと出会い、その孤独に触れて臣下として支えることを決意する(同時にアーヴィンが遠ざかる)。
年上なのを利用して学園で先に足場を整えたり人材を発掘したり、アーノルドの父親について本格的に実践して経験を積む。卒業してからは平和の象徴として在るアーノルドの治世を視野に入れて、軍部に在籍して顔と伝と能力の幅を広げる。
自分の能力の限界を思い知りながらも努力を重ね続けたので天才な年下たちから尊敬される。ただしその負い目ゆえに加減できず、何度か過労で倒れることに。
リーナの死後も揺るがぬ忠誠心とこれまで重ねてきた努力のために、若くして王国の支柱の役割を担わされた。アーヴィンに救援を求めたが突っぱねられ、傾いていく政治に精神が追い込まれていった。
唯一リエンの前で誠心誠意謝罪し、リエンの不遇を背負おうとしたので、子どもたちからも尊敬一色。政変後は復活したアーノルドに加えてリエンとヴィオレットを公然と支援。王家に「影」に代わる諜報機関を創設、現在人材育成中。
そんなこんなで主人は隠居したのに本人の隠居はまだまだ先送りにされているどころか嫁志願者が現れて「おれはロリコンじゃない!!」と全力で逃げ回っている。その影でジスカルディ大公位が復活しかけていることにまだ気づいていない。
ネフィル・アルビオン
リエンの叔父。
本来アルビオン公爵を継ぐはずだった姉の代替品として生を受けた。
リーナが無自覚に未来を変えた(なにがなんでもアーノルドを探し回ってアルビオンを追い込んだ)ことによって誕生した、本来の筋的にイレギュラーな存在。
リーナを追いかけ回るために才覚を身に付け伸ばしていったので、かなり優秀に(クッキー作りなど、たまに方向性がおかしい)。一族にも幼馴染みたちにも末っ子として甘やかされてそれなりに傲慢に育ち、気が利かない性格になった。
未熟なまま「修羅の一族」の血に翻弄されていたが、リエン(奈積)との接触を通して散々に凹まされ、視野を広げることを知り、精神を持ち直した。
リエンを一番はじめに掬い上げた人物として、一族のなかで唯一リエンから身内認定を受けた。
ヴィオレットとは同族嫌悪。ただし大人の余裕を身につけて、段々叔父として接せられるようになった。
政変の時には完全に出遅れたので、せめて以降のリエンの立場を磐石にするために陰日向に奔走。これまで蓄えた情報を駆使して人材を押さえ、アルビオン含めリエンに罰せられなかった貴族たちを制御、外交にも首を突っ込むようになる。
一族に裏切られて暗殺されかけ、下半身が不随になる。亡命したシュバルツでジヴェルナとの橋渡しをしながらヴィオレットを助け、アクイラを見守りながら余生を過ごす。後世に禍根を残さないため、生涯独身を貫く。
奈積への恋心は最期まで自覚なし。手が届かない絶対的な存在への淡い思慕だった。
ハロルド・リベル
旧姓ディアマンテ。子爵家長男だったが絶縁の上宰相となり一家を建て(させられ)る。伯爵位。
興味本位で学園の官僚科に入学したことが運のつき。淑女科のクラリスとは同期生で、図書館で勉強を教えた。クラリス経由でリーナと出会い、結果としてアーノルドとベリオルの目に止まり、ネフィルに目をつけられ、散々に振り回された。
視野の広さと対処能力の高さから、知らない間にアーノルドの側近に収まっていたが、開き直って中枢に腰を据える。側近の中でも使い走りの段階でルシェル派が台頭し、二分した側近内で唯一ベリオル側についたが、そこから実務を本格的に担うように。この時点でアルビオンとオリフラムという二公爵家が大嫌い。
政変まではベリオルのフォローに回った。後宮での麻薬流通で工務省長官を救ったりなどして官僚からの信頼が厚い。
政変後はアーノルドとベリオルに無理やり表舞台に引き出されたがやはり開き直って働く。
目立つ若き宰相の看板を掲げて城内をあちこちうろつき、影響力の把握と官僚の調査、牽制をしていたが、マティスから仕事しろと追い回されるように。ユーフェに目をつけて書記官として育成、ついでに養女にしてリエンの地位固めと宰相家の後継者獲得を目論んでいた。
揺らがない強固な芯を持つゆえ、アーノルドに自身を「使う」ことを許された唯一の臣下。まともな人間性と堅実な手腕、勘の鋭さをリエンに評価されている。
昔から目をつけていたクラリスとどさくさ紛れに結婚成立させた。フラれるのが怖くて正面から向き合ってプロポーズできなかった。これから尻に敷かれながらも友人のような距離感で仕事をしていく。
アーノルド、ベリオル、ネフィルよりも遥かに長く生き、ヴィオレットとその次の代にも大きく貢献した。
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