10番街の人々

吉住最架 BL

Ⅰ

姉の男狂いは昔からで、そのせいで俺が災難に見舞われることなんて日常茶飯事だった。

なんでも奢る姉のせいで金持ちと思われカツアゲされたことなんて数しれず。いや、実際家は金持ちなんだが、これとそれとは別だ。どこでも誰でも惚れ込むせいで姉への取り次ぎの為に見ず知らずの人間に声を掛けられるのも日常茶飯事で。

俺はある日ブチ切れた。

姉にも、姉のせいで寄って集ってくる男共にも、そういう男共のせいで寄って集ってくる女共にも。

そんな俺を見兼ねた親と隣の家の敦君が全寮制の学校を進めてきた。けどそれが男子校ってのもあって最初は拒否したが、敦君からそこには姉を知る者なんていないだろうから気にするなと妙に説得を受け、中学の途中から編入と同時に入寮を始めた。

外部からの編入生ってことでかなり注目を浴びたが、騒がれたのは本当に最初だけで、現状かなり落ち着いた生活を送れている。

今では親と敦君に感謝の日々だ。

だが平穏な生活というのは続かないもので、・・・何でだ？何でなんだ？

事の発端は、上級生である春宮先輩に声を掛けられたことだ。図書館で本を物色していると、横から行成声を掛けられた。

「ねぇ、ちょっと頼みたいことあるんだけど」

春宮先輩とは話したことは無かったが、家のパーティーで何度か見かけたことがある位だった。そんな人が突如こんな台詞を吐いて近づいてくれば人違いだと思うだろう。

けど実際これは人違いでは無かった。正真正銘、俺への頼みごとだった。
勿論断るなんて末恐ろしいことはしない。
家と家を見れば互角か向こうが少し上位なものだが、この学園において言えば俺とこの人では天と地程の差があるからだ。