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上弦の章 帝国内乱
幕間 にっ♪
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死は孤独と終わり。
ほぼ全ての人間はそう思うだろう。
当たり前だ。
生まれ、育ち、老いあるいは病んで、死ぬ。
花弁を散らすように、
家族に看取られ、最期を迎えるように。
存在そのものが無くなれば、群れや集合体は関係無くなる。
群が、
個となり、
無に還る。
そんな消えていく存在を孤独以外なんと言う。
死は生命の終焉、現世での消滅なのだ。
ベルギウス帝国はそう宣言する。
「ルン、ルン、ルン♪」
ある能力を恐れて……………………。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
リトラル村跡近辺、未明。
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!」
鼓膜を痛め、空気を震撼させるほどの絶叫から生者を沈める鎮滅歌は始まった。
ある騎士が何かに足を取られ、引きずり込まれたのだ。
「あれは、死体!?」
引きずり込まれた騎士と同行していた二人の騎士は驚愕する。
引きずり込んだのはなんと、腐食が進んだ亡骸の群れ。
動くはずのない存在が騎士に食らい付いていた。
首もとを食いちぎられた者は生き絶える。
「な、何だあれは!?!?」
「冗談じゃない! 引き返すぞ!」
仲間を見捨て、来た道を引き返す二人の騎士。
だが、小柄で儀式の礼装の様な服に身を包んだ少女が立ち塞がる。その右側には巨大な箱型の何かが置かれていた。
「邪魔だ! どけ!!」
騎士達は止まることなく、場合によっては少女を剣で殺す事さえ躊躇しなかった。
それだけ彼らは必死なのだ。
死にたくない。
ただ、その一心で。
「分かる、分かるよその気持ち♪ 死にたくないって心からの叫び♪」
相対する少女は動くことなく、むしろこの状況では殺してくださいと煽っているような物言いだった。
小馬鹿にした訳でもないが、歌うように喋る彼女。
迫り来る騎士が目の前に刃を突こうとした瞬間、少女は消えた。
「ガッッッッ…………!?」
否、騎士の懐に潜り込み、鎧と鎧の隙間を狙って顎に短剣を突き立てる。
「罪には罰を、腐敗には浄化を♪」
ルン、ルン、ルン♪
「ッッ! ッッッッゥ!」
少女は何度も刺した部位を楽しそうに抉る。
痛みで必死に抵抗する騎士の一人だが、剣が持たれていた右手はなんと、少女の華奢な片腕に押さえ付けられていた。
「アハハハ♪ 痛いでしょ♪ 苦しいでしょ♪ これが教団を何度も潰したクズの一味が辿る末路だよ♪」
そう言うと、騎士の体ごと設置していた箱に投げ入れた。
「さて、あと一人だね♪ あれ、騎士なのに女の子に背を向けて走ってる♪ ま、どっちにしろ神の裁きはその身に受けるけどね♪」
少女は見守っていた。
そして、そう時間がかからない内に生き残っていた騎士も最初に殺された騎士と同じく、死体に引きずり込まれて魔術を唱える間もなく、呆気なく死んだ。
「やっぱり土の中に埋めてると気づかれないもんだね♪ あの時と全く変わらないや……………………」
朗らかな声が一転、彼女に暗い声音を出させる。
「まだ戦力が足りない…………。あの憎たらしいヴァルトを裁くには、やっぱりカインがいないと……………」
影のある笑顔のまま、ふらふらと立ち上がると収穫物を棺に入れた。
「他の誰でもない…………………ヴァルトを皆殺しにするにはヴァルトの捨て犬同士のあたし達じゃないと意味がないよ………」
彼女が抱く、怨嗟の糧として。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さらっと最後、重要なことを言っていた少女は、果たして?
ほぼ全ての人間はそう思うだろう。
当たり前だ。
生まれ、育ち、老いあるいは病んで、死ぬ。
花弁を散らすように、
家族に看取られ、最期を迎えるように。
存在そのものが無くなれば、群れや集合体は関係無くなる。
群が、
個となり、
無に還る。
そんな消えていく存在を孤独以外なんと言う。
死は生命の終焉、現世での消滅なのだ。
ベルギウス帝国はそう宣言する。
「ルン、ルン、ルン♪」
ある能力を恐れて……………………。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
リトラル村跡近辺、未明。
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!」
鼓膜を痛め、空気を震撼させるほどの絶叫から生者を沈める鎮滅歌は始まった。
ある騎士が何かに足を取られ、引きずり込まれたのだ。
「あれは、死体!?」
引きずり込まれた騎士と同行していた二人の騎士は驚愕する。
引きずり込んだのはなんと、腐食が進んだ亡骸の群れ。
動くはずのない存在が騎士に食らい付いていた。
首もとを食いちぎられた者は生き絶える。
「な、何だあれは!?!?」
「冗談じゃない! 引き返すぞ!」
仲間を見捨て、来た道を引き返す二人の騎士。
だが、小柄で儀式の礼装の様な服に身を包んだ少女が立ち塞がる。その右側には巨大な箱型の何かが置かれていた。
「邪魔だ! どけ!!」
騎士達は止まることなく、場合によっては少女を剣で殺す事さえ躊躇しなかった。
それだけ彼らは必死なのだ。
死にたくない。
ただ、その一心で。
「分かる、分かるよその気持ち♪ 死にたくないって心からの叫び♪」
相対する少女は動くことなく、むしろこの状況では殺してくださいと煽っているような物言いだった。
小馬鹿にした訳でもないが、歌うように喋る彼女。
迫り来る騎士が目の前に刃を突こうとした瞬間、少女は消えた。
「ガッッッッ…………!?」
否、騎士の懐に潜り込み、鎧と鎧の隙間を狙って顎に短剣を突き立てる。
「罪には罰を、腐敗には浄化を♪」
ルン、ルン、ルン♪
「ッッ! ッッッッゥ!」
少女は何度も刺した部位を楽しそうに抉る。
痛みで必死に抵抗する騎士の一人だが、剣が持たれていた右手はなんと、少女の華奢な片腕に押さえ付けられていた。
「アハハハ♪ 痛いでしょ♪ 苦しいでしょ♪ これが教団を何度も潰したクズの一味が辿る末路だよ♪」
そう言うと、騎士の体ごと設置していた箱に投げ入れた。
「さて、あと一人だね♪ あれ、騎士なのに女の子に背を向けて走ってる♪ ま、どっちにしろ神の裁きはその身に受けるけどね♪」
少女は見守っていた。
そして、そう時間がかからない内に生き残っていた騎士も最初に殺された騎士と同じく、死体に引きずり込まれて魔術を唱える間もなく、呆気なく死んだ。
「やっぱり土の中に埋めてると気づかれないもんだね♪ あの時と全く変わらないや……………………」
朗らかな声が一転、彼女に暗い声音を出させる。
「まだ戦力が足りない…………。あの憎たらしいヴァルトを裁くには、やっぱりカインがいないと……………」
影のある笑顔のまま、ふらふらと立ち上がると収穫物を棺に入れた。
「他の誰でもない…………………ヴァルトを皆殺しにするにはヴァルトの捨て犬同士のあたし達じゃないと意味がないよ………」
彼女が抱く、怨嗟の糧として。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さらっと最後、重要なことを言っていた少女は、果たして?
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