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上弦の章 帝国内乱
働き稼ぎ、食して寝る 2
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舞台は普通の酒場へ移る。
表の看板には言うまでもなく、ベネット商会のシンボルマーク、五つの硬貨を線で繋ぎ合わせた黄金の正五角形があった。
「そう言えば行商人っていうのはベネット商会の下で働いているのか?」
「んん? 行商人はあくまで個人事業だ。つまり商会には所属してないぞ」
おっさんはそう言うと、さっき注文したザオゼル麦で作られたエールを飲み干した。
そして値段は……………………。
いや、もう考えなくても分かるだろ。
「簡単に言えば行商人ってのは長期的に滞在する拠点を定めていない。それはつまりベネット商会にとっては管理しづらい存在なんだよ。それに…………」
言う前に塩漬けされた肉をむしゃむしゃと頬張る。
「だからと言って商売仇になるわけでもねぇ。商会にも利益がある」
「は?」
「まだ理解できてないようだな。商会が何で栄えたか? 理由の一つとしては経済的に発達した都市と都市を結ぶ道を活用した円滑な取引。物の流れは道路に左右される。そこに目をつけたジョン・ベネットは圧倒的物量を都市の発達に見あった数に割り振って捌いて捌いて捌きまくった。勿論、それだけがベネット商会を三大勢力の一つに持ち上げた理由じゃねぇがな」
俺もエールに口をつける。
味は旨い。
しかし、あの値段が俺の心を揺さぶった。
「地方、もっと分かりやすく言えば田舎の情報だよ」
二人のエールは空になる。
追加で二人分注文しようとしたおっさんを止め、話は再開された。
「当時のジョン・ベネットは道路の発達してない田舎にどうやって物を売るか考えた。道路の整備? そんなのは国の管轄だ。 自ら売りにいく? 言っちゃ悪いが都会から交通の便が悪い田舎なんて僻地同然だ。とここで、わしら行商人の出番って訳さ」
「…………具体的には?」
話は聞いているものの、今日の収入から予想外の出費が出た俺は、会話半分勘定半分だった。
「行商人ってのは基本的に地方と都会を行き来して儲かる商売だろ? つまり商会の商品を行商人が買ってくれれば、売れた上がりに加えて、間接的に地方までベネット商会の知名度も広がるわけだ。行商人が買うものによって大体何がどの地方で需要があるか見当がつくしな」
「なるほど、共存関係ってことか」
「そういうこった。おっと、そろそろ明日の準備しねぇと。わしが頼んだ分はここに置いてくから後は頼んだぜ兄ちゃん」
「あぁ」
懐から注文した分と同じウォルス硬貨をジャラリと机の上に置くと、おっさんは足早に帰っていった。
さて、現実逃避したいがそうもいかない。
俺もエールの代金を準備して帰り支度を始める。
なんだよ!
エール一杯1800ウォルスって!!
2週間前の3倍じゃないか!!!
表の看板には言うまでもなく、ベネット商会のシンボルマーク、五つの硬貨を線で繋ぎ合わせた黄金の正五角形があった。
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おっさんはそう言うと、さっき注文したザオゼル麦で作られたエールを飲み干した。
そして値段は……………………。
いや、もう考えなくても分かるだろ。
「簡単に言えば行商人ってのは長期的に滞在する拠点を定めていない。それはつまりベネット商会にとっては管理しづらい存在なんだよ。それに…………」
言う前に塩漬けされた肉をむしゃむしゃと頬張る。
「だからと言って商売仇になるわけでもねぇ。商会にも利益がある」
「は?」
「まだ理解できてないようだな。商会が何で栄えたか? 理由の一つとしては経済的に発達した都市と都市を結ぶ道を活用した円滑な取引。物の流れは道路に左右される。そこに目をつけたジョン・ベネットは圧倒的物量を都市の発達に見あった数に割り振って捌いて捌いて捌きまくった。勿論、それだけがベネット商会を三大勢力の一つに持ち上げた理由じゃねぇがな」
俺もエールに口をつける。
味は旨い。
しかし、あの値段が俺の心を揺さぶった。
「地方、もっと分かりやすく言えば田舎の情報だよ」
二人のエールは空になる。
追加で二人分注文しようとしたおっさんを止め、話は再開された。
「当時のジョン・ベネットは道路の発達してない田舎にどうやって物を売るか考えた。道路の整備? そんなのは国の管轄だ。 自ら売りにいく? 言っちゃ悪いが都会から交通の便が悪い田舎なんて僻地同然だ。とここで、わしら行商人の出番って訳さ」
「…………具体的には?」
話は聞いているものの、今日の収入から予想外の出費が出た俺は、会話半分勘定半分だった。
「行商人ってのは基本的に地方と都会を行き来して儲かる商売だろ? つまり商会の商品を行商人が買ってくれれば、売れた上がりに加えて、間接的に地方までベネット商会の知名度も広がるわけだ。行商人が買うものによって大体何がどの地方で需要があるか見当がつくしな」
「なるほど、共存関係ってことか」
「そういうこった。おっと、そろそろ明日の準備しねぇと。わしが頼んだ分はここに置いてくから後は頼んだぜ兄ちゃん」
「あぁ」
懐から注文した分と同じウォルス硬貨をジャラリと机の上に置くと、おっさんは足早に帰っていった。
さて、現実逃避したいがそうもいかない。
俺もエールの代金を準備して帰り支度を始める。
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