断罪のアベル

新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

閑話 とある詩人の創作日記 壱

　拝啓

　父さん

　母さん

　元気ですか

　私はあなた達がなった様にプロの詩人になりました

　まだ十個しかできませんが

　自分で丹精込めた詩が仕上がったので次に会った時に披露するのを楽しみにしています

　いろいろな場所を旅していくうちに地元では味わえない感動をこの身に受け

　日々精進しています


　ところで

　私が二十歳の誕生日に

　新たな詩が俺を呼んでるとか言って

　ふらっと旅立ってしまいましたね

　父さん

　あなたは家族の父としてはクズでしたが世界に名を遺した偉大な詩人

　あなたを尊敬しています

　クズでしたけど…………………

　いつかあなたを超えたい

　それが私の夢です

　母さん

　訳のわからないこといって旅立った父さんを温かい目で見送った優しい心の持ち主

　心では寂しかったかもしれませんがその慈愛に満ちた決断

　私は涙を流してしまいましたよ

　あれから四年経過して

　ベルギウス帝国に行こうとした直前

　私に手紙を送ってくれましたね

　私に弟ができたとか

　とうとう私も兄となったのですね

　弟と二十四も離れているのは驚きましたが

　父さんはとうとう一度も帰らなかったのはとても残念です

　夫婦で一緒にいられないだなんて

　母さんがかわいそうです

　あれ？

　父さんが一度も帰ってこなかったのに

　なんで子供ができているんですか？