断罪のアベル

上弦の章 帝国内乱

ヌリカエラレルキオク

「グッ！」

　何だ、この痛みは？

　彼女を見る度にひどくなっていく。

　意識が底に飲まれるほどに。

「俺…………っは……………………………………」

「カイン！？　ねぇ！　カイン！！」

　少女が叫んでいる。

「オレは………………………」

　痛みに混じって同じ彼女の顔が頭に思い浮かぶ。

「君はカインなんだよ！　思い出して！！！」







　何なんだ、さっきから叫び続ける女は？

　あいつは誰だ？

「カインッ、約束したよね！！　この不条理な世界を浄化しようって！！！！」

　浄………………化？

「罪には罰を、腐敗には浄化をっ！！」

　放つ単語を拾うだけで脳裏に様々な情報が行き交う。


　知らないはずの光景。


　覚えの無い記憶。


　何かの……………………ナマエ。

　その名前は、

「クローディ…………………………」

「！」

　その言葉を聞いて驚く少女。

　だが、それが最後まで紡がれることは無かった。

　いつの間にか左手に剣が刺されている。

　それを握っていたのは…………………………、

「うああああああぁぁぁっっっっっ！！！」

　頭の痛みが極限にまで達した。

　思考が掻き回される。

「オレハッッッッ！」

　誰だ？

　白く染め上げられる視界の中心。

「アアアアアアアアアアッッッ！」

　そこに女が立っている。

　そいつは叫びにも動じず、微笑みながら口を開いた。

「あの子の口車に乗せられてはいけませんよ」

　その手には剣が握られており、その剣先は俺の手の甲だった。

　それを見ただけで光景がグニャリと曲がる。

「あれは断罪されるべき人間なんですよ」

「断…………………罪」

「そう。だから…………………………」

　そのきれいな手を首元に持っていき、

「あなたの手で終わらせるんです。彼女に終止符を」

　真横に引いた。

　それを合図に白い光景は色を取り戻し、女も消える。



　これは断罪されるべき人間なのか。

「だったら、オレの糧にしても問題はない」

　鎌をその哀れな少女に向けた。

「さあ、始めよう。断罪の時間だ」

　その行いに、ピクリと反応する。

「ハハッ………………………そういうことだったんだ。カインが唆そそのかされたのも、アタシの事を思い出せなかったのも、全部そういうことだったんだね」

　手にしていた棺を持ち直し、少女もこちらに武器を掲げる。

「あの汚女クソアマッッッッッッッ！」

　鎌と棺がぶつかり合い、戦いの開始が宣言された。

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※最後の表記、再戦が正しい言い方だと思うでしょうが、彼の主観で書いてるので正しいです。
　そしてパンドラは何かを見たようです。ずいぶん汚い言葉を言ってましたが、それだけ彼女にとっては憎い人間だったんでしょう。

　あと、文章短くてすみません。