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上弦の章 帝国内乱
遺骸ヲ冒涜セシ大罪ノ棺 3
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「クソっ!」
こんな時に憑血ノ魔犬がいれば戦況を覆せるのだが………。
「そろそろ逝って♪」
間に合いそうにない。
離脱しようにもパンドラの移動速度を考えると簡単に回り込まれる。
一時凌ぎでも霧血ノ暴蛇でどうにか…………。
そう思ったが、
「アベル? どこ? 返事をして!」
今一番近づけたくない人物が遠くから叫ぶ。
流石に夜中の静けさに反して響くあの棺の悲鳴が原因だな。
まだこちらの姿が暗闇で見えてないのが幸いか。
もう一つの問題を除けばだが…………。
「アベ………………」
「あれぇ♪ 君のこと呼んでるのってもしかして、ノスタルジア家のお嬢ちゃん?」
パンドラはその声に反応して、興味を持ったように一歩踏み出す。
「もしそうなら、急いでご挨拶しないと♪」
「待てパンドラ!」
「「「ァ、ァァァ………………」」」
「邪魔をするなッ!」
俺の事は死体で牽制して、既にカレンの方に走っていくパンドラ。
しかも、ヴィルヘルムも追従させて。
「オオオオオオオッッッッ!」
俺は纏わりつこうとする死体を横に薙ぎ払いながら、パンドラを追いかける。
この姿を見られる訳に行かないが、彼女をパンドラに殺される可能性を考えると悠長に言っていられない。
それにヴィルヘルム・ノスタルジア。
彼女に合わせるわけにはいかない気がする。
けれど、死体達が常に邪魔をし距離が開かれていった。
どうすれば……………。
「カレン! 速く逃げろ!」
棺の悲鳴に負けないくらいの大音量で俺は叫んだ。
今はとにかく、カレンを生かす事だけを考えなければ。
「え……………アベル?」
遠くから聞こえる困惑にも似た声。
単刀直入にこんなこと言われても、すぐに理解できるとは思えないが、非常時だと伝えることができればよい。
あとは俺がパンドラを食い止める。
確かに移動速度は俺の方が下だが、パンドラに追いつく為には足以外の方法もある。
ようやく死体を全て跳ね飛ばし、追いかけられているものの、俺の目の前からは死体が消えた。
「止まれ、パンドラァァァァァァァ!!」
俺は大きく振りかぶって、短刀をパンドラの膝めがけて投げる。
追いつけないなら、相手の足を動けなくすればいい。
だが、投げたそれに対して当たる手前で透明で緑色に輝く障壁に遮られた。
「プロテクティオか…………………」
防御魔術プロテクティオ。初歩中の初歩にして比較的使用頻度が高く、応用にも発展できる多様性を備えた魔術。
ヴィルヘルムが発動したようだ。
その証拠に、パンドラの後ろを守るように目のない空洞でこちらを凝視している。
その口元はモゴモゴと動いていて声の小ささから聞き取ることが出来なかったが、何を言っているかは推測できた。
それは何か?
ひたすら彼は繰り返していた。
カレン、と。
こんな時に憑血ノ魔犬がいれば戦況を覆せるのだが………。
「そろそろ逝って♪」
間に合いそうにない。
離脱しようにもパンドラの移動速度を考えると簡単に回り込まれる。
一時凌ぎでも霧血ノ暴蛇でどうにか…………。
そう思ったが、
「アベル? どこ? 返事をして!」
今一番近づけたくない人物が遠くから叫ぶ。
流石に夜中の静けさに反して響くあの棺の悲鳴が原因だな。
まだこちらの姿が暗闇で見えてないのが幸いか。
もう一つの問題を除けばだが…………。
「アベ………………」
「あれぇ♪ 君のこと呼んでるのってもしかして、ノスタルジア家のお嬢ちゃん?」
パンドラはその声に反応して、興味を持ったように一歩踏み出す。
「もしそうなら、急いでご挨拶しないと♪」
「待てパンドラ!」
「「「ァ、ァァァ………………」」」
「邪魔をするなッ!」
俺の事は死体で牽制して、既にカレンの方に走っていくパンドラ。
しかも、ヴィルヘルムも追従させて。
「オオオオオオオッッッッ!」
俺は纏わりつこうとする死体を横に薙ぎ払いながら、パンドラを追いかける。
この姿を見られる訳に行かないが、彼女をパンドラに殺される可能性を考えると悠長に言っていられない。
それにヴィルヘルム・ノスタルジア。
彼女に合わせるわけにはいかない気がする。
けれど、死体達が常に邪魔をし距離が開かれていった。
どうすれば……………。
「カレン! 速く逃げろ!」
棺の悲鳴に負けないくらいの大音量で俺は叫んだ。
今はとにかく、カレンを生かす事だけを考えなければ。
「え……………アベル?」
遠くから聞こえる困惑にも似た声。
単刀直入にこんなこと言われても、すぐに理解できるとは思えないが、非常時だと伝えることができればよい。
あとは俺がパンドラを食い止める。
確かに移動速度は俺の方が下だが、パンドラに追いつく為には足以外の方法もある。
ようやく死体を全て跳ね飛ばし、追いかけられているものの、俺の目の前からは死体が消えた。
「止まれ、パンドラァァァァァァァ!!」
俺は大きく振りかぶって、短刀をパンドラの膝めがけて投げる。
追いつけないなら、相手の足を動けなくすればいい。
だが、投げたそれに対して当たる手前で透明で緑色に輝く障壁に遮られた。
「プロテクティオか…………………」
防御魔術プロテクティオ。初歩中の初歩にして比較的使用頻度が高く、応用にも発展できる多様性を備えた魔術。
ヴィルヘルムが発動したようだ。
その証拠に、パンドラの後ろを守るように目のない空洞でこちらを凝視している。
その口元はモゴモゴと動いていて声の小ささから聞き取ることが出来なかったが、何を言っているかは推測できた。
それは何か?
ひたすら彼は繰り返していた。
カレン、と。
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