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上弦の章 帝国内乱
黒塗りの歴史(閑話) 救済の使徒
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これより記すことは歴史の闇に消えた事実である。
ヴァルトを唯一苦戦させた教団にして、その信者の中に追放された元ヴァルト家の人間が所属していた忌まわしき邪教、ダリア教団の一派、救済の使徒についてだ。
正確な成立時期は不明だが、この集団の活動範囲は、村などの少数集落を点々とではあるが、帝国の端から端までであった事。
そして何より恐ろしいのはこの邪教が記した教典の一部だ。
◀帝国における王公諸侯の圧政、富に目を眩ませた豪商の搾取、魔術を用いて畏怖を抱かせ人道に劣る虐殺を繰り広げる魔導師一族。
これらに隷属せざる終えない迷える民。虐げられた人々。
女神ダリアを信奉せし我ら七人、救済の使徒が彼の者らを救うべし。
我らの最終悲願は圧政、差別の無い、女神ダリアを元に全てが平等である教国を、帝国の滅亡と共に作り上げる事である。
現在大陸にある別の教国では、神官の私利私欲による国内暴走が活発化しているが、我らがそのようなことに陥ることは、まずあるはずがない。
罪には罰を
腐敗には浄化を
教団の教えを理解しない愚者には神の裁きを▶
ヴァルトを愚弄するだけでなく、当時派遣したヴァルトの人間に対して、追放されたとは言え、同じ血族を刺客として送り込んできたとは、恥も良いところである。
ちなみに派遣した内、レナード・ヴァルターニャ、トラヴィス・ヴァルチェ、リカルド・ヴァルテシモ及び多数の教え子は、使徒パンドラ(ヴァルト時代はクローディア・ヴァルトーガ)と使徒カイン(出自等詳細不明。ただし、教団における聖人の象徴として活動。少なくとも帝国常備軍と貴族、騎士が保有する兵士を一人で50000人殺傷)によって殺害されている。
最終的にこの邪教はある旗印を楔にヴァルト、グランドル、ベネットの相互連携を欠かさず事を進めたお陰で、実行部隊である救済の使徒のほぼ全てを排除。
指導者たる元・ベルギウス帝国の錬金術師だった使徒エラスムス、それに続き使徒レイン、使徒ドロシー(ヴァルトの教え子)、使徒ウォルター、使徒ダグラスは大陸全土にて各個殺害。
使徒パンドラは、ダリアが死去した場にして、教団によって建てられた嘆きの聖堂で籠城。ヴァルトによる大規模魔術に建物ごと焼かれた。
炎が静まった後、死体の確認を急いだところ、その中の焼死体から銀髪、教団の法衣を着た死体を発見。これにより死亡を断定。
なお、帝国軍を翻弄していた救済の使徒の生き残り、使徒カインは嘆きの聖堂から落ち延びた先で討伐軍との死闘の末、断崖絶壁から氷の海に落ち、浮かぶことはなかった。
これにて極秘戦争は終結している。
反乱が起きたことは帝国中で話題になったが、大半の人は詳細を知らない。
それは、教団の活動範囲が帝国の端の領土だったこと、教団の教えを受けたと疑われた者を全員処刑したことが幸いし、機密に処理されたからだ。
ただ、これで安心はできない。
教団は時代によってではあるが、形を変えて必ず復活する。
救済の使徒の前にも別の団体があったのは事実であるし、これからもまた生まれる事を視野に入れるべきだろう。
さながら、害虫の様だ。
第65代当主 エルヴァスト・ヴァルト
🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑
パタン。
閉じた本から栞が落ちる。
「…………」
赤く染まった月の栞が。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
ヴァルトを唯一苦戦させた教団にして、その信者の中に追放された元ヴァルト家の人間が所属していた忌まわしき邪教、ダリア教団の一派、救済の使徒についてだ。
正確な成立時期は不明だが、この集団の活動範囲は、村などの少数集落を点々とではあるが、帝国の端から端までであった事。
そして何より恐ろしいのはこの邪教が記した教典の一部だ。
◀帝国における王公諸侯の圧政、富に目を眩ませた豪商の搾取、魔術を用いて畏怖を抱かせ人道に劣る虐殺を繰り広げる魔導師一族。
これらに隷属せざる終えない迷える民。虐げられた人々。
女神ダリアを信奉せし我ら七人、救済の使徒が彼の者らを救うべし。
我らの最終悲願は圧政、差別の無い、女神ダリアを元に全てが平等である教国を、帝国の滅亡と共に作り上げる事である。
現在大陸にある別の教国では、神官の私利私欲による国内暴走が活発化しているが、我らがそのようなことに陥ることは、まずあるはずがない。
罪には罰を
腐敗には浄化を
教団の教えを理解しない愚者には神の裁きを▶
ヴァルトを愚弄するだけでなく、当時派遣したヴァルトの人間に対して、追放されたとは言え、同じ血族を刺客として送り込んできたとは、恥も良いところである。
ちなみに派遣した内、レナード・ヴァルターニャ、トラヴィス・ヴァルチェ、リカルド・ヴァルテシモ及び多数の教え子は、使徒パンドラ(ヴァルト時代はクローディア・ヴァルトーガ)と使徒カイン(出自等詳細不明。ただし、教団における聖人の象徴として活動。少なくとも帝国常備軍と貴族、騎士が保有する兵士を一人で50000人殺傷)によって殺害されている。
最終的にこの邪教はある旗印を楔にヴァルト、グランドル、ベネットの相互連携を欠かさず事を進めたお陰で、実行部隊である救済の使徒のほぼ全てを排除。
指導者たる元・ベルギウス帝国の錬金術師だった使徒エラスムス、それに続き使徒レイン、使徒ドロシー(ヴァルトの教え子)、使徒ウォルター、使徒ダグラスは大陸全土にて各個殺害。
使徒パンドラは、ダリアが死去した場にして、教団によって建てられた嘆きの聖堂で籠城。ヴァルトによる大規模魔術に建物ごと焼かれた。
炎が静まった後、死体の確認を急いだところ、その中の焼死体から銀髪、教団の法衣を着た死体を発見。これにより死亡を断定。
なお、帝国軍を翻弄していた救済の使徒の生き残り、使徒カインは嘆きの聖堂から落ち延びた先で討伐軍との死闘の末、断崖絶壁から氷の海に落ち、浮かぶことはなかった。
これにて極秘戦争は終結している。
反乱が起きたことは帝国中で話題になったが、大半の人は詳細を知らない。
それは、教団の活動範囲が帝国の端の領土だったこと、教団の教えを受けたと疑われた者を全員処刑したことが幸いし、機密に処理されたからだ。
ただ、これで安心はできない。
教団は時代によってではあるが、形を変えて必ず復活する。
救済の使徒の前にも別の団体があったのは事実であるし、これからもまた生まれる事を視野に入れるべきだろう。
さながら、害虫の様だ。
第65代当主 エルヴァスト・ヴァルト
🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑🌑
パタン。
閉じた本から栞が落ちる。
「…………」
赤く染まった月の栞が。
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