過去はどうでもいいことで、今の私は幸せです

過去はどうでもいいことで、今の私は幸せです

 パンとスープの皿を逆に置いたからという理由で、私の婚約は破棄されたわ。

 ────────えっ? 意味が分からないって?
 うん、私も。


 ある日、突然。
「スープは右、パンが左なのは常識だろう。お前はどれだけ馬鹿なんだ!?」
 そう怒鳴り散らすなり、彼はいきなり説教しだしたの。
 今までスープを左でパンを右で出してたのによ。

 でもね、その時にピンときたの。
 あぁ、機嫌悪いんだなって。


 急に突拍子もないこと言い出して、八つ当たりで怒鳴り散らすっていうかなり迷惑なことを何度もしでかされてるから、またかって感じ。
 一回怒鳴っておしまいだったらマシだったんだけど、その日はかなり機嫌が悪かったみたい。
 ずっと説教モドキを言い続けてたの。


「お前はどうして俺の言う事をきかない!」
 ────────何度もきいてあげてるのを忘れるなんて、随分と都合のいいおつむなのね。今日の料理も貴方がどうしても食べたいと言ったものだらけなのに。

「しかも、俺は料理を8時になる前に完食したいと言っているのに約束を守りやしない!」
 ────────一方的に言い放つのは約束って言わないじゃないの。
 そもそも、その日の気分で6時だったり7時だったり時間が気紛れでコロコロ変わり過ぎてついていけないんだけど。
 そんなに言うなら一人で作って一人で食べればいいじゃない。自分だけのルールに私をまきこまないでよ。


 そんなこんなで時間の無駄を口から垂れ流し続けているのを料理が不味くなって勿体ないと思って適当に相槌をうちながら聞き流していたら。


「パンとスープを逆に出すようなお前には我慢できん! 婚約なんぞ破棄だ!!」

なんて叫びだしたの。
婚約破棄しだした理由の方は今も分からないし、分かりたくもない。


……………………んっ? 私と別れた彼は今どうしてるのかって?


………………えっと………………あっ! そうそう、そうだ!!
 横暴っぷりのせいで怒らせてはいけない魔女を怒らせて呪いを掛けられたらしいわ。
 それで人目に出れない姿にされて何処かに幽閉されているって。



 思い出したくない過去なんか、もうどうでもいいわ。
 
今、私は自分を好きにできる新しい人生を過ごしているんだから。