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第三章 魔女だなんて、とんでもない! わたしは聖女です!!

4 聞き覚えのある声は

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 せっかくの収入なので美味しい物を食べて元気になろう。ルンルン気分のあたしは、喜び勇んで街へと入ろうとした。

「すみません、入国したいので通行証を……」

 そう言っただけで何故か、いきなり兵士達が集まってきた。挙動不審だとか言動が怪しいとか疑われるようなことは一切していないのにだ。

「あ、あのぉ~? 勘違いじゃないでしょうか?」

 絶対何かの間違いだ。何が何でどう間違いなのかは分からないけど、きっとそうに違いない。
 よく分からないあやふやな考えで恐る恐る話し掛けてみた。

「魔女だ捕まえる」
「魔女は処刑しろ」

 有無を言わせぬ態度で捕縛。こちらを見つめる瞳は、生気の感じられない虚ろな目をしている。

「…………へっ?」

 あまりに急過ぎる展開。あたしに魔法封じの首輪を着け、身体を拘束。強制的に何処かへと連行されてしまう。

「……えっ……えっ?……ええぇっ!?」

 頭の中は疑問符だらけ。訳も分からぬまま連行されていく。


 ビックリしすぎて抵抗らしい抵抗が出来なかった。これが誠実そうな兵士ではなく悪漢の風貌で

「ゲッヘッヘッ、よぅ姉ちゃん。俺とイイとこ行かねぇかい?」

 なんてことを言われていたならば、悲鳴を上げるなり魔法を使うなり抵抗したのだけれど。



 街中をズンズン行かされれば、街の住人達が集まり魔女だ処刑だの大合唱。そして、あれよあれよという間に磔にされてしまった。

「いきなり何なのよコレ──────!?」

 兵士も民衆もこちらが何を言おうと、まともな受け答えはない。魔女を捕獲か処刑の二つだけが返事代わり。
 性別や年齢で言い方のニュアンスが変わるぐらいで老若男女それしか話さない。みんなが同じ言葉をオウム返しするだけの異常な事態。

(……横暴以前に様子が何か。いやもう明らか過ぎるぐらいにおかしいんだけど……)

 心当たりはある。メモハーで似たようなことがあったのだから。

(ひょっとしなくても洗脳?)

 旅するリリア達の行く先々で悪事を働く魔女の得意魔法。様子といい態度といい、とてもソックリ。少女がそう感じていたときだ。

「お黙り! 煩いわよ愚民共!!」

 ヒステリー気味に叱り飛ばす一声。それだけで、あんなに騒がしかった魔女コールが一斉に静まり返った。

「邪魔! 通れないじゃないの!! まったく、気が利かないったらありゃしない」

 手に持つのは、鳥の羽根が付いたファー扇子。それを犬でも追い払うようにシッシッと左右に振った。
 今度は人々が左右に寄って、一つの道が出来上がる。
まただ、全員が命令を聞き入れている。

「オ~ホッホッホッホッ~!!あたくしの王国にノコノコやってくるなんて、残念だったわねぇ。悪しき魔女リリア・イヴス?」
「誰が魔女……って、あなたはっ!?」

 嫌味ったらしい言い方。聞いただけで虫唾が走る高笑い。
 いる筈なんて有り得ない存在が、そこにはいた。

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