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第二章 あの悪魔を退治しよう

9 喋る悪魔

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 レオン&ハルトの銃口は攻撃魔法を交互に絶え間なく撃ち出し、朧月は先ず様子見と手裏剣と苦無を投げつける。
 無数の顔達がそれぞれ動く度に魔法が放たれてくるのを避け、二人は敵はどちらか分かったものの、もう一体の方はどうするべきかとそれぞれ思案していた。

 さっきからこちらを襲う気が見えないので、邪魔にならないなら放って置いてもいいかもしれない。
 もしも、目の前の巨体を倒した途端にこちらを襲ってきたら? そんな風に考えていた時だ。

『おい、アイツと戦うなら良い方法があるぞ』

 耳元よりももっと近い、脳に直接届く低い男性の声がした。二人は揃って、その異様な言葉の届き方に驚いてしまう。
 どうやら、敵が攻撃していない瞬間を狙って、もう一方のほうがやったらしい。

「い、いきなり声がっ!? お主の仕業でござるか!?」
「……喋った、とはちょっと違う……?」

 いつの間にか、近くにいた。真っ黒な身体は、まるで影の具現化だ。

『オレの名前はアプドルク。あの悪魔を殺しにここへ来た』
「……悪魔ってあの怪物のこと……?」
『オレも悪魔だが、悪魔らしい悪魔というならアレだな。それがどうした?』
「あの悪魔、どう倒せばいいのか分かるでござるのか!?」

 攻撃を叩き込んでいるが、見た目同様かなりしぶとい。ダメージを受けている感じが、いまいちしない。

『オレがアイツを弱体化させる薬を館で手に入れている。ソイツを使って弱らせたいが、アイツの攻撃が激し過ぎて浴びせられない。だから、お前達はもっと攻撃して気を引かせろ』
「ひょっとしなくとも、隠し部屋にあった物でござるか?」
『そうだが?』
「……いやいや、何でわざわざ己を弱体化させる薬液を敵に用意してるんでござるか、あの総大将はっ!?」
『秘密の部屋を見つけたご褒美とか一方的ななぶり殺しは好かないとかなんとか設定資料集に書いてあった気がするが、研究の為なら何でもする奴なんだ。狂人の思考なんぞいちいち放っておけ』

 アイツの思考なんて分かりたくない。そんな嫌そうな響きが声無き言葉に含まれていた。

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