少女への贈り物

谷川ベルノー

文字の大きさ
上 下
1 / 1

少女への贈り物

しおりを挟む

「さあっ! 観念したまえっ!! 虚偽によって更に罪が重くなる前に正直に言ったほうがいいぞ! 『わたしは貴方の息子に毒を盛りました』となっ!!」
「…………違います! …………これは…………これは…………これはなにかの…………間違いですっ!!」
「まだ、ワシに対してしらばっくれるつもりか!? 往生際が悪いぞ!!」
「…………嘘じゃない…………本当に…………嘘じゃあないんです…………違うのに…………わたしにも…………どうしてなのか…………何も…………分からないんです…………」

 嗚咽混じりに少女は必死に訴える。
 嘘偽りが一滴も含まれていない涙を流す、悲しみに満ちた泣き顔で。

 演技でないことは確か。
 だが、毒によって婚約者が倒れたという事実がある。


「尋問途中に失礼します、旦那様」

 急ぎ現れた執事は、自らの主人に耳打ちをする。
 そうすれば、ほんの数分前までは怒りで真っ赤に染まりきっていた顔が、みるみる内に真っ青な色へと変わっていく。




「君へのあらぬ疑い! まことに済まなかった!!」

 言うなり、当たれば魔物も一撃で即死させかねない勢いと力強さで、父親は少女へと頭を素早く下げた。
 

「………………………………えっ?そっ、それは一体全体どういうことなのでしょうか?」
「あぁ、実はだね────────」



 有能な執事の調査結果によれば、毒の出処は実は息子の方であることが判明。
 通常は目に見えぬ毒の痕跡を魔法によって解析したところ、何時の間にか屋敷に作られていた隠し部屋を探索したことで分かった事実。
 服毒云々についてはよく分からなかったが、何らかのミスで誤って扱ったせいによるものであろうということとなった。




 何も知らぬ無垢な少女を葬りし損なった男は牢屋行きとなり、婚約の契約は抹消。
 婚約は破棄され、少女には心からの詫びの謝罪と共に宝物が授けられたという。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

王子と王女の不倫を密告してやったら、二人に処分が下った。

ほったげな
恋愛
王子と従姉の王女は凄く仲が良く、私はよく仲間外れにされていた。そんな二人が惹かれ合っていることを知ってしまい、王に密告すると……?!

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

処理中です...