命、大事に

谷川ベルノー

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命、大事に

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 わたしの婚約者は、ペットの世話をちゃんとしない。


 自分で飼うって決めたくせに、真面目に世話をしたのは最初だけ。


 飽きて、面倒になってからはほとんど放ったらかし。


 ……………………今は、ほぼ全部わたし任せ。


 御飯も水もブラッシングも病院に連れて行くのも。

 なにもかも。



 そのせいで、一度ペットが死に掛けてしまったことがある。


 用事で一日家に居ることが出来なかったある日のことだ。


 帰ってみると、ペットが衰弱していた。
 グッタリとして、死んだようにうつ伏せになって。


 魔法で癒しながら慌てて病院に連れて行って、なんとか一命をとりとめた。



 彼を怒ったら、悪びれるどころかむしろ逆ギレして酷い事を叫んだ。


「ちょっとのあいだ世話しないだけで死に掛けている方が悪いんだよ!!」
「どうせ死んでも、他に代わりはいくらでもいるだろ!!」




 その心無い人でなしの言葉で、わたしの婚約破棄の決意は絶対なものとして固まった。


 ……………………命に責任を持てず放棄する人なんて、大嫌い。




 わたしが婚約を破棄した後の彼は、病院で叫んだ言葉が噂で広まりに広まり続けた結果。
 両親に勘当を言い渡されて館から追放。



 ────────その後は、行方不明となった。


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