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第2章 白狼と秘密の練習
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「面を上げよ。」
王の凛とした声に、謁見の間に並んだ10人余りの自衛隊の隊員達が顔を上げる。
「希望が決まっている者は伝えよ。決まらぬ者は保留で良い。」
辛い2年間の遠征を終えた隊員達は、この日を待ち望んでいた。
王から直々に褒美が貰えるとあって皆、興奮した面持ちだ。
1人ずつ王の前に行き恩賜の内容を伝える。王の周りには幕が張られており、他の者にその内容は一切聞こえない仕組みだ。
まずは、今回の遠征組唯一の隊長であるガイアスが前に出る。次に副隊長のジェンが控えていた。
「入れ。」
王の声を聞き、中へ入ると、王が台座に座ってこちらを見ている。
「ガイアス。この度は苦労であった。褒美はどうする。」
「保留とさせていただけますでしょうか。」
「分かった。」
側に控えていた男が、紙に回答を記している。
「決まったらすぐに言え。」
「承知いたしました。」
頭を下げて幕を出る。
ちらと後ろに目をやると、妙に緊張した面持ちのジェンが少し離れた位置で控えていた。
幕から「入れ。」と声がし、幕を捲るジェン。
(ジェンのことだ。研究に関することだろう。)
副隊長のジェンは、自分が自衛隊に引き込む前は植物の研究をしていた男だ。
今も休日は自宅で研究をしていることを知っているガイアスは、彼の願いなどお見通しだ。
ガイアスは、保留にしてもらった自分の願いをどう使うのか考えたが、今は決められずにいた。
・・・・・
「はっはっは~!こんなにすぐに会えるとはな!」
「また一緒に酒が飲めるぞ~!外交とは良いものだな。」
「ははーん、俺と飲むのが狙いか?」
「百理あるな。」
あっはっは~、と笑う2人の声が響く応接室。
親しい者しか通さないこの応接室は、床にそのまま座れるように厚い絨毯が敷かれ、座椅子やクッションが置いてあるくつろげる空間だ。
暖色のライトがさらに落ち着いた雰囲気を醸し出している。
そして、今夜は王2人で外交の話し合いと称して酒を注ぎあっている。
「あまり飲みすぎてはシナ王妃に怒られるぞ。」
「なーに、今日は先に寝ていろと言ってある。気にするな。」
(本当に仲が良いんだな。)
ミアが言っていた通りシーバ国の王とここサバル国の王は気が合うらしく、今も冗談を言い合っては笑いあっている。
王の顔もリラックスしており、2人の仲の良さは本物のようだ。
日頃は数名の王室自衛隊という特殊な部隊のみが王の警護を任されているが、ごくたまに自衛隊の者が数合わせで入ることがあった。
この部屋にはガイアスと王室自衛隊員1名のみ。
王の警護をする者には『勤務中に聞いた内容は他者に話してはならない』という鉄の掟がある。
これを破った場合の刑はとても重く、生きていることが苦痛に感じる程だという。そしてそれが強い抑止力となっている。
ガイアスはその刑に処されたという人物を知らないが、もしかしたら秘密裏に消されているのかもしれない。
しばらく飲みながら近況を話し合っていた2人だが、ふとアイバンが「思い出した!」と大きい声を出した。
「そうだそうだ!これを言わねばならんのだった。」
「む、どうした?」
「うちのミアに恋人ができたんだ!サバルの自衛隊らしい。」
ガイアスはびっくりして思わず2人を振り向きそうになった。
(陛下に報告するのか…。しかし、さすがに俺の名前は知らないだろう。)
「何?!可愛いミアが!しかもうちの自衛隊だと?!」
「ああ、名前はガイアスと言うらしい。ミアがこの前家族の前で発表したん」ガイアス?」
王は「むむ。」と考え、端で控える男に「ガイアス!」と声をかけた。
「はっ。」
軽く礼をして王の元へ寄る。
(こんなに早くミアの父親に顔を合わせることになるとは。)
しっかりと正装し準備を万全にしてから王宮へ挨拶へ行く予定だったガイアスは、緊張で冷や汗をかいた。
「この男がガイアスだが。」
「何!?君か、うちのミアの恋人は。」
「はい。」
驚いた様子のアイバンに、緊張した面持ちでガイアスが答える。
「いやぁ、こんな偶然あるもんかね~!私はミアの父のアイバンだ。」
「はっ。私は自衛隊第7隊隊長のガイアス・ジャックウィルと申します。現在、ミア様と交際させていただいております。」
「ミアの言っていた通り真面目そうな青年だな。今週末うちに来るんだろう?」
「はい。よろしくお願いいたします。」
やりとりを聞いていたサバルの王は、笑いながらガイアスを見る。
「うちの自衛隊隊長がまさかアイバン殿の息子と。こりゃあ、ますます飲む機会が増えそうだな!」
「お、君もそう思ったか!」
あっはっは~、と笑う王達を前に、ガイアスはどうして良いのか分からずそこに立っていたが、良いタイミングで交代の隊員が入ってきたことで、その場から離れることができた。
・・・・・
あれからすぐに屋敷に戻り、風呂に入った。
ミアが遊びに来ると言っていた約束の時間まであとわずか…気が落ち着かずソワソワする。
本を開いたかと思えばすぐ閉じてクッションの場所を直してみたり、ベッドのシーツを引っ張ってみたり。また椅子に座って本を広げるが、内容が全く入ってこない。
(まるで10代みたいだ…もっと落ち着け、俺。)
ガイアスは、前回のキスの事を考えていた。
ミアは明らかに初めてといった様子で緊張しており、それは可愛らしかった。
それとともに、ミアにほとんど性知識がないことも明らかになった。
キスが気持ちいいと言っていたものの、ミアのソコは全く反応していなかった。
ガイアスの硬くなったモノを見ても、病気かどうか心配していたほどだ。
穢れを知らないミアにどこまでして良いのか、またミアはそれを望むのか、見当もつかない。
今日、どういうつもりでミアが夜に遊びに来たいと言ったのか分からず、ガイアスはもやもやとしていた。
(もしかして、期待して良いのか…?)
もんもんとしていると、部屋に優しく風が吹きミアが表れた。
「ガイアス!」
後ろを向いているガイアスに抱き着くと「元気?」と背中から声をかけてくる。
(可愛い…。)
無邪気に自分に触れてくるミアが愛しい。
「ミア、顔が見たい。」
「はーい。ちょっと待ってね。」
手はそのまま、自分の背中から前に横歩きでぐるりと回ってくるミア。
顔を上にあげて「お待たせ!」と笑う。
その頭に軽くキスすると、うれしそうにミアがはにかんだ。
(今夜、大丈夫か…。)
自分の精神力が試されている…とガイアスは拳を握った。
「ベッドにあがっていいか。」と聞くミアに頷き、自分は用意していた茶を入れる。
「ほら、熱いから気を付けろ。」
「ありがとう。」
ベッドサイドのテーブルにお茶を2つ置き、ガイアスもベッドに上がる。
今のミアは寝間着のような服を着ている。
白いすべすべした生地はキメの細かい薄い素材だ。
ゆとりがある部分は問題ないが、ピタっと身体に張り付いた時に中が少し透けて見えるようになっている。
「ガイアスの寝間着、面白いな。」
ふふっ、と笑いながらミアが言う。
ガイアスは紺色の薄いシャツのような寝間着を着ていた。シンプルだが肌触りが良く、寝る時はだいたいこの恰好だ。
ミアは襟が付いている部分を珍しそうに触っている。
どうやらそこが面白いポイントのようだ。
「寝る時コレ邪魔じゃない?」
「いや、特に気になったことはないな。」
「へぇ~。」
「ミアのはちょっと薄すぎないか?」
ミアの腕の部分を触るガイアスはその感触に驚く。すべすべと気持ちが良く、癖になりそうだ。
腕を何回も往復させていたガイアスだったが、ミアが自分を見つめていることに気が付いて顔を上げた。
「ミア、遊びに来たんだったな。何かしたいことでもあったか?」
「特には。…恋人だから、イチャイチャしに来ただけだよ。」
そう言ったミアは、ガイアスの太ももに頭を乗せて寝転んだ。
仰向けに寝転ぶミアの胸から足にかけて、寝間着が身体に沿って張り付いている。
その生地越しに、唇と同じく薄いピンクの乳首も透けて見えた。
「…ッミア?」
動揺したガイアスがミアを見下ろすと、撫でてほしいとばかりに顎を上にあげた。
首から顎にかけて撫でていく。気持ちよさそうな顔をしたミアがガイアスをとろんとした目で見つめる。
以前教えてもらった『狼の気持ち良い部分』を触る。
顎の下から耳の付け根まで優しく撫でていると時折身体がピクっと震えて、良い場所だとわかる。
「ミア…気持ちいいか?」
ガイアスが問いかけると「うん。」と言って、少しもじもじとするミア。
何か言いたそうな口が動くのを待っていると、ミアは小さい声で言う。
「なんか、キスしたくなった。」
ガイアスはミアの頭を自分の足の上から優しくどかすと、仰向けのミアに覆いかぶさるような体勢を取る。
片手をミアの顔の横に付き、もう一方はミアの前髪をおでこに沿って後ろへ撫でつけながらミアを見つめる。
「この恰好でキスするの、初めてだ。」
ふふ、と笑うミアにガイアスは一瞬動きが止まる。
(…俺を試してるのかッ…?いや、違うな。)
無自覚で言っているミアへのやましい気持ちを納めようと、ガイアスは必死に自分を抑える。
「ミア…ッ」
小さく名前を呼びミアの顔に口を寄せる。ミアはゆっくりと目を閉じた。
ちゅ…ちゅ…っ
音が出る軽いキスをして、ガイアスはミアの様子を見る。
ミアは少し照れているのか耳が赤くなっている。目も強くつむっているようだ。
その姿にふっ、と笑いを落とすとミアの口を軽く舐め、開けるよう促す。
ミアがその意図に気づいたように口を薄く開けた。ガイアスがその中へ入っていく。
「…ん。」
少し身じろぎしたミアの足がガイアスの足の付け根に当たる。
「…はッ…ミア。」
偶然とはいえ刺激されたガイアスは、ミアに優しくキスをする余裕がない。
その小さな口を自分の舌で激しく犯した。
「ん…んぅ…む…ッ」
ミアが少し苦し気に声を出すが、気遣う余裕がない。
ガイアスのソレは痛く張りつめだし、ミアを求めている。
ミアの歯列をなぞり、舌を吸い上げる。
ちゅむちゅむという水音と、ミアの声が響く自分の部屋。
ガイアスはミアの上着の端に手を入れた。
「ん…ッ はぁッ…ガイアス?」
その手に気付いたミアが、ガイアスにどうしたのか、と聞いてくる。
「ミア…キスは好きか?」
「う…うん。」
「…もっと気持ちいいことしよう。」
「えっ?」
そんなものがあるのか、と言わんばかりのミアの反応。
(嫌がってはいないな…。)
安心したガイアスは、そのままミアの上着をずり上げて脇腹に手を添える。
腰にある模様がチラ、と覗く。
その瞬間、ミアにガシッと手を掴まれた。
「…ミア?」
ミアは少し怒ったような顔をして頬を膨らましている。
スッと冷静になったガイアスが脇腹から手を離す。
(怒らせたか?)
「ガイアス…その手…」
ゴクリ、とガイアスの喉が鳴る。
この行為が嫌だと拒否されたら立ち直れそうにない…ガイアスはミアの言葉の続きを待った。
「くすぐる気だったろ!」
ミアが「よくも騙そうとしたな!」と言って笑いだした。
笑うミアを見ながら、ガイアスは何が起こっているのか分からなかった。
ひとしきり笑ったミアが、ガイアスの脇腹をコショコショとくすぐる。
「あれ?ガイアス何も感じないの?」
「ああ、俺は何ともない。」
さっきまでの甘いムードが嘘のようだ。
今、体勢はさっきと同じくミアを下にベッドに押し倒している形だが、ミアはガイアスを笑わせようとくすぐり、ガイアスはそれをポカンと見ている。
「キスより気持ちいいとか言って俺をだまして、くすぐる気だったろ!」
なんて悪い奴なんだ!と言うミアの顔は、セリフとは裏腹に愉快そうだ。
何と言って良いか分からずガイアスはミアの腕を引き、起こしながら考える。
(ミアは俺が思っている以上にそういう知識がない。)
「くすぐったがりなんだな。」
「うん、そうなんだ。だから誰かがくすぐろうとして来るのに敏感なんだよ。」
その後、昂ぶりが落ち着いてきたガイアスが「時間は大丈夫か?」と聞くと、ミアは「そのまま泊まってもいい?」と聞いてきた。
もちろん嬉しい申し出だったが、今のガイアスには少しキツいものがあった。
結局、ガイアスに後ろから抱きしめられる形で話をしながら眠っていったミア。
ガイアスは地獄のような夜を過ごした。
王の凛とした声に、謁見の間に並んだ10人余りの自衛隊の隊員達が顔を上げる。
「希望が決まっている者は伝えよ。決まらぬ者は保留で良い。」
辛い2年間の遠征を終えた隊員達は、この日を待ち望んでいた。
王から直々に褒美が貰えるとあって皆、興奮した面持ちだ。
1人ずつ王の前に行き恩賜の内容を伝える。王の周りには幕が張られており、他の者にその内容は一切聞こえない仕組みだ。
まずは、今回の遠征組唯一の隊長であるガイアスが前に出る。次に副隊長のジェンが控えていた。
「入れ。」
王の声を聞き、中へ入ると、王が台座に座ってこちらを見ている。
「ガイアス。この度は苦労であった。褒美はどうする。」
「保留とさせていただけますでしょうか。」
「分かった。」
側に控えていた男が、紙に回答を記している。
「決まったらすぐに言え。」
「承知いたしました。」
頭を下げて幕を出る。
ちらと後ろに目をやると、妙に緊張した面持ちのジェンが少し離れた位置で控えていた。
幕から「入れ。」と声がし、幕を捲るジェン。
(ジェンのことだ。研究に関することだろう。)
副隊長のジェンは、自分が自衛隊に引き込む前は植物の研究をしていた男だ。
今も休日は自宅で研究をしていることを知っているガイアスは、彼の願いなどお見通しだ。
ガイアスは、保留にしてもらった自分の願いをどう使うのか考えたが、今は決められずにいた。
・・・・・
「はっはっは~!こんなにすぐに会えるとはな!」
「また一緒に酒が飲めるぞ~!外交とは良いものだな。」
「ははーん、俺と飲むのが狙いか?」
「百理あるな。」
あっはっは~、と笑う2人の声が響く応接室。
親しい者しか通さないこの応接室は、床にそのまま座れるように厚い絨毯が敷かれ、座椅子やクッションが置いてあるくつろげる空間だ。
暖色のライトがさらに落ち着いた雰囲気を醸し出している。
そして、今夜は王2人で外交の話し合いと称して酒を注ぎあっている。
「あまり飲みすぎてはシナ王妃に怒られるぞ。」
「なーに、今日は先に寝ていろと言ってある。気にするな。」
(本当に仲が良いんだな。)
ミアが言っていた通りシーバ国の王とここサバル国の王は気が合うらしく、今も冗談を言い合っては笑いあっている。
王の顔もリラックスしており、2人の仲の良さは本物のようだ。
日頃は数名の王室自衛隊という特殊な部隊のみが王の警護を任されているが、ごくたまに自衛隊の者が数合わせで入ることがあった。
この部屋にはガイアスと王室自衛隊員1名のみ。
王の警護をする者には『勤務中に聞いた内容は他者に話してはならない』という鉄の掟がある。
これを破った場合の刑はとても重く、生きていることが苦痛に感じる程だという。そしてそれが強い抑止力となっている。
ガイアスはその刑に処されたという人物を知らないが、もしかしたら秘密裏に消されているのかもしれない。
しばらく飲みながら近況を話し合っていた2人だが、ふとアイバンが「思い出した!」と大きい声を出した。
「そうだそうだ!これを言わねばならんのだった。」
「む、どうした?」
「うちのミアに恋人ができたんだ!サバルの自衛隊らしい。」
ガイアスはびっくりして思わず2人を振り向きそうになった。
(陛下に報告するのか…。しかし、さすがに俺の名前は知らないだろう。)
「何?!可愛いミアが!しかもうちの自衛隊だと?!」
「ああ、名前はガイアスと言うらしい。ミアがこの前家族の前で発表したん」ガイアス?」
王は「むむ。」と考え、端で控える男に「ガイアス!」と声をかけた。
「はっ。」
軽く礼をして王の元へ寄る。
(こんなに早くミアの父親に顔を合わせることになるとは。)
しっかりと正装し準備を万全にしてから王宮へ挨拶へ行く予定だったガイアスは、緊張で冷や汗をかいた。
「この男がガイアスだが。」
「何!?君か、うちのミアの恋人は。」
「はい。」
驚いた様子のアイバンに、緊張した面持ちでガイアスが答える。
「いやぁ、こんな偶然あるもんかね~!私はミアの父のアイバンだ。」
「はっ。私は自衛隊第7隊隊長のガイアス・ジャックウィルと申します。現在、ミア様と交際させていただいております。」
「ミアの言っていた通り真面目そうな青年だな。今週末うちに来るんだろう?」
「はい。よろしくお願いいたします。」
やりとりを聞いていたサバルの王は、笑いながらガイアスを見る。
「うちの自衛隊隊長がまさかアイバン殿の息子と。こりゃあ、ますます飲む機会が増えそうだな!」
「お、君もそう思ったか!」
あっはっは~、と笑う王達を前に、ガイアスはどうして良いのか分からずそこに立っていたが、良いタイミングで交代の隊員が入ってきたことで、その場から離れることができた。
・・・・・
あれからすぐに屋敷に戻り、風呂に入った。
ミアが遊びに来ると言っていた約束の時間まであとわずか…気が落ち着かずソワソワする。
本を開いたかと思えばすぐ閉じてクッションの場所を直してみたり、ベッドのシーツを引っ張ってみたり。また椅子に座って本を広げるが、内容が全く入ってこない。
(まるで10代みたいだ…もっと落ち着け、俺。)
ガイアスは、前回のキスの事を考えていた。
ミアは明らかに初めてといった様子で緊張しており、それは可愛らしかった。
それとともに、ミアにほとんど性知識がないことも明らかになった。
キスが気持ちいいと言っていたものの、ミアのソコは全く反応していなかった。
ガイアスの硬くなったモノを見ても、病気かどうか心配していたほどだ。
穢れを知らないミアにどこまでして良いのか、またミアはそれを望むのか、見当もつかない。
今日、どういうつもりでミアが夜に遊びに来たいと言ったのか分からず、ガイアスはもやもやとしていた。
(もしかして、期待して良いのか…?)
もんもんとしていると、部屋に優しく風が吹きミアが表れた。
「ガイアス!」
後ろを向いているガイアスに抱き着くと「元気?」と背中から声をかけてくる。
(可愛い…。)
無邪気に自分に触れてくるミアが愛しい。
「ミア、顔が見たい。」
「はーい。ちょっと待ってね。」
手はそのまま、自分の背中から前に横歩きでぐるりと回ってくるミア。
顔を上にあげて「お待たせ!」と笑う。
その頭に軽くキスすると、うれしそうにミアがはにかんだ。
(今夜、大丈夫か…。)
自分の精神力が試されている…とガイアスは拳を握った。
「ベッドにあがっていいか。」と聞くミアに頷き、自分は用意していた茶を入れる。
「ほら、熱いから気を付けろ。」
「ありがとう。」
ベッドサイドのテーブルにお茶を2つ置き、ガイアスもベッドに上がる。
今のミアは寝間着のような服を着ている。
白いすべすべした生地はキメの細かい薄い素材だ。
ゆとりがある部分は問題ないが、ピタっと身体に張り付いた時に中が少し透けて見えるようになっている。
「ガイアスの寝間着、面白いな。」
ふふっ、と笑いながらミアが言う。
ガイアスは紺色の薄いシャツのような寝間着を着ていた。シンプルだが肌触りが良く、寝る時はだいたいこの恰好だ。
ミアは襟が付いている部分を珍しそうに触っている。
どうやらそこが面白いポイントのようだ。
「寝る時コレ邪魔じゃない?」
「いや、特に気になったことはないな。」
「へぇ~。」
「ミアのはちょっと薄すぎないか?」
ミアの腕の部分を触るガイアスはその感触に驚く。すべすべと気持ちが良く、癖になりそうだ。
腕を何回も往復させていたガイアスだったが、ミアが自分を見つめていることに気が付いて顔を上げた。
「ミア、遊びに来たんだったな。何かしたいことでもあったか?」
「特には。…恋人だから、イチャイチャしに来ただけだよ。」
そう言ったミアは、ガイアスの太ももに頭を乗せて寝転んだ。
仰向けに寝転ぶミアの胸から足にかけて、寝間着が身体に沿って張り付いている。
その生地越しに、唇と同じく薄いピンクの乳首も透けて見えた。
「…ッミア?」
動揺したガイアスがミアを見下ろすと、撫でてほしいとばかりに顎を上にあげた。
首から顎にかけて撫でていく。気持ちよさそうな顔をしたミアがガイアスをとろんとした目で見つめる。
以前教えてもらった『狼の気持ち良い部分』を触る。
顎の下から耳の付け根まで優しく撫でていると時折身体がピクっと震えて、良い場所だとわかる。
「ミア…気持ちいいか?」
ガイアスが問いかけると「うん。」と言って、少しもじもじとするミア。
何か言いたそうな口が動くのを待っていると、ミアは小さい声で言う。
「なんか、キスしたくなった。」
ガイアスはミアの頭を自分の足の上から優しくどかすと、仰向けのミアに覆いかぶさるような体勢を取る。
片手をミアの顔の横に付き、もう一方はミアの前髪をおでこに沿って後ろへ撫でつけながらミアを見つめる。
「この恰好でキスするの、初めてだ。」
ふふ、と笑うミアにガイアスは一瞬動きが止まる。
(…俺を試してるのかッ…?いや、違うな。)
無自覚で言っているミアへのやましい気持ちを納めようと、ガイアスは必死に自分を抑える。
「ミア…ッ」
小さく名前を呼びミアの顔に口を寄せる。ミアはゆっくりと目を閉じた。
ちゅ…ちゅ…っ
音が出る軽いキスをして、ガイアスはミアの様子を見る。
ミアは少し照れているのか耳が赤くなっている。目も強くつむっているようだ。
その姿にふっ、と笑いを落とすとミアの口を軽く舐め、開けるよう促す。
ミアがその意図に気づいたように口を薄く開けた。ガイアスがその中へ入っていく。
「…ん。」
少し身じろぎしたミアの足がガイアスの足の付け根に当たる。
「…はッ…ミア。」
偶然とはいえ刺激されたガイアスは、ミアに優しくキスをする余裕がない。
その小さな口を自分の舌で激しく犯した。
「ん…んぅ…む…ッ」
ミアが少し苦し気に声を出すが、気遣う余裕がない。
ガイアスのソレは痛く張りつめだし、ミアを求めている。
ミアの歯列をなぞり、舌を吸い上げる。
ちゅむちゅむという水音と、ミアの声が響く自分の部屋。
ガイアスはミアの上着の端に手を入れた。
「ん…ッ はぁッ…ガイアス?」
その手に気付いたミアが、ガイアスにどうしたのか、と聞いてくる。
「ミア…キスは好きか?」
「う…うん。」
「…もっと気持ちいいことしよう。」
「えっ?」
そんなものがあるのか、と言わんばかりのミアの反応。
(嫌がってはいないな…。)
安心したガイアスは、そのままミアの上着をずり上げて脇腹に手を添える。
腰にある模様がチラ、と覗く。
その瞬間、ミアにガシッと手を掴まれた。
「…ミア?」
ミアは少し怒ったような顔をして頬を膨らましている。
スッと冷静になったガイアスが脇腹から手を離す。
(怒らせたか?)
「ガイアス…その手…」
ゴクリ、とガイアスの喉が鳴る。
この行為が嫌だと拒否されたら立ち直れそうにない…ガイアスはミアの言葉の続きを待った。
「くすぐる気だったろ!」
ミアが「よくも騙そうとしたな!」と言って笑いだした。
笑うミアを見ながら、ガイアスは何が起こっているのか分からなかった。
ひとしきり笑ったミアが、ガイアスの脇腹をコショコショとくすぐる。
「あれ?ガイアス何も感じないの?」
「ああ、俺は何ともない。」
さっきまでの甘いムードが嘘のようだ。
今、体勢はさっきと同じくミアを下にベッドに押し倒している形だが、ミアはガイアスを笑わせようとくすぐり、ガイアスはそれをポカンと見ている。
「キスより気持ちいいとか言って俺をだまして、くすぐる気だったろ!」
なんて悪い奴なんだ!と言うミアの顔は、セリフとは裏腹に愉快そうだ。
何と言って良いか分からずガイアスはミアの腕を引き、起こしながら考える。
(ミアは俺が思っている以上にそういう知識がない。)
「くすぐったがりなんだな。」
「うん、そうなんだ。だから誰かがくすぐろうとして来るのに敏感なんだよ。」
その後、昂ぶりが落ち着いてきたガイアスが「時間は大丈夫か?」と聞くと、ミアは「そのまま泊まってもいい?」と聞いてきた。
もちろん嬉しい申し出だったが、今のガイアスには少しキツいものがあった。
結局、ガイアスに後ろから抱きしめられる形で話をしながら眠っていったミア。
ガイアスは地獄のような夜を過ごした。
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第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
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