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第1章 白狼は恋を知る
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「そこまで。」
剣を払う仕草の後、剣を仕舞ったガイアスがミアへ向き直ると、息の整わないミアが、はぁはぁ、と息をはきながら「はい。」と答える。
「汗を拭いたほうが良い。」
「ありがとう。」
立ったまま膝に手をつき、ふぅーっと息を吐いているミアに、タオルを手渡す。
ミアはにっこりと笑いかけながらそれを受け取った。
(打ち合いって、こんなに激しいんだな…。)
初めてガイアスと打ち合いをさせてもらえるとあって、喜んでいたのは最初だけ。
ガイアスの速い振りに対応するには、ずっと集中しておかねばならず、打ち込まれた時の重さに耐える度に、腕や足がジンとした。
そして、終わった後のこの疲労感。もっと体力をつけなければ、と新たな課題もできたミアだった。
「ミア、汗を拭いて少し休んだら、森の奥に行ってみよう。」
「じゃあ転移で行こうよ。地図持ってるよね?」
「ああ、持ってきた。…2人できるのか?」
ガイアスはこの森の地図を取り出しミアへ手渡す。
「うん、石の持ち主に触れてたら、何人でもできるよ。」
「それは凄いな。」
石の力にまたもや驚かされたガイアスはミアの腕輪に嵌る赤い石をじっと見る。
「便利でしょ。まだいろんな使い方があるから、見せてあげよう!」
「はは、いっぺんに見たら驚くだろうから、ちょっとずつ見せてくれ。」
得意げに言ったミアの頭に手を置き軽く撫でたガイアスは、湖の側で少し休憩するようミアを促した。
「この辺かな。」
ガイアスに説明された辺りを地図上で指差す。
「そこでいい。」
「じゃあ、行こう。」
「ああ。」
ミアがガイアスの手を握って目を閉じる。大きなガイアスの手がミアを握り返してくる感触にちょっと照れながらも、ミアは転移したいと念じる。
「着いた。」
「凄いな、本当に一瞬だ。」
目をゆっくり開けたガイアスが、視線だけで辺りを見回す。
「気持ち悪くなったりしてない?」
「大丈夫だ。」
じゃあ行こう、と目的地に向かおうとするガイアスに連れられミアも歩き出すが、手が繋がれたままであることに気づく。
「あの…ガイアス?」
「どうした?」
「いや…その…。」
視線を手元に向けながら話すミアは、明らかに繋がれたガイアスの手を意識している。
「転移したばかりで、うまく方向感覚がつかめないんだ。…嫌か?」
「えっ!そうなのか?…初めてだからかな。」
(見たところミアに嫌がっている様子は無い。)
「もう少し、こうしてていいか?」
(ミアには悪いが嘘をつかせてもらおう。)
「うん、もちろん!俺が支えてやるから安心して歩いて!」
「頼もしいな。」
「へへ。」
頼もしいという言葉に喜びを露わにするミア。
「俺、可愛いとか子どもっぽいってよく言われるけど、本当は頼りになる大人の男に憧れてるんだ。」
「そうなのか?ミアは男らしいと思うぞ。」
「ほ、本当にっ?!そんなこと言われたの、人生で数えるほどだ。」
「一生懸命で努力家で、今はこうして手を握ってくれている。そんなミアを俺は、かっこいいと思う。」
「そう…?ガイアスみたいなかっこいい人に言われたら、本当かもって思っちゃうよ。」
へへ、と照れるミアが、耳をピコピコと動かしながら手をぎゅっと握った。
ピタっと急に歩みを止めたガイアス。
何かあったのかと心配になったミアが見上げると、繋いでいない方の手で目を覆っているガイアスの姿があった。
(俺のことをそんな風に…。手を握ってくるとか…反則だろ…。)
予想外のミアの言葉と反応に、ガイアスは心臓がいくつあっても足りそうになかった。
「ガイアス、大丈夫そうか?」
「ミアのおかげで安心して歩ける。」
「さっき立ち止まった時も平気って言ってたけど、無理しないようにな。」
手を繋いだまま、例の白い花の場所まで向かう途中、何度もミアが尋ねてきた。
(俺がミアに触れていたいから嘘をついている、なんて思いもしないんだろうな。)
純粋で素直なミアに、またしても心が癒される。
「あれだ。」
「わぁ~、本当に真っ白だ!」
驚いた声で花のある部分を見渡す。
「形も面白いぞ。」
「近くで見よっ!」
ガイアスの手を引きながら、花へと向かって少し小走りになるミア。
「おお~、狼の耳みたいだ。」
ちょんちょんっと尖った花弁を指で触って確かめる。
2人は座って白い花を観察していた。手はいまだに繋がれたままであるが、ミアはそれを気にせず花に集中している。
「ミアにそっくりだ。」
「たしかに。感触も似てたよ。」
「そうなのか。」
ガイアスはそう言いながら、片手の親指と人差し指でミアの耳を優しく挟む。
「ッわぁ…っ!」
「ん?驚かせたか?」
言いながらも、ガイアスは感触を確かめるように耳の頂上まで指をスッと滑らせる。
ビクっと震えたミアだったが「次は花を触ってみて。」と言おうとした瞬間に、耳の根元を触られ変な声が出た。
「…っやぁ…ッ」
「ミア?」
様子のおかしいミアの顔を覗き込むと、真っ赤な顔をしたミアが涙目でうつむいている。
「痛かったかっ?」
「違くて…その…。」
「驚いただけか?」
手はいまだに耳の根元に置かれ、痛くないことを確認したガイアスは先ほどのように指を動かす。
「…痛くないけど、離して。」
小さく言ったミアの言葉に、ようやく手をのけたガイアスは、どうしたのかと様子を伺う。
薄い涙の膜を張ったミアが、ガイアスを見上げる。
ガイアスの喉がゴクリ…と上下に動いたが、ミアは「伝えなければ。」と必死で気づかない。
「狼は、耳が弱いんだ。触られるとムズムズするから…その、ダメ。」
「……そうだったのか、すまない。感触が似てると言ってたから、気になって。」
「ううん、先に言っとけば良かったね。」
お互い黙ってしまい、なんとも言えない空気が漂う。
(もっと「なんともないぜ!」って感じで言えば良かった…。)
ミアは自分の反応がおかしかったのではないか気になり、汗をかく。
(あ~!なんだか恥ずかしい雰囲気になっちゃった~!ガイアスも気まずそうだしっ!)
「昼でも食べようか。」
沈黙を破るように、ガイアスは繋いだままのミアの手を引き、開けた場所の真ん中へ移動する。
切り株がいくつかあり、ここがガイアスの祖父によって切り開かれた場所であることが分かった。
ガイアスが昼食の準備をするために手を離す。
ミアの手の平は、風を感じて少しひんやりと感じた。
「花は後で根から抜いて持って帰るといい。」
「そうするよ、弟も見るの楽しみにしてたから。」
最初のガイアスの手つきを見てから、紅茶はミアが入れることになった。
いつもの可愛らしいティーカップとは違って、今日はシンプルなマグカップだ。
慣れた様子で紅茶を注いでいる間に、ガイアスが敷物の上に昼食を並べる。
「うわ~、美味そうだな!」
「けっこう量が多いな。全部食べなくていいからな。」
「了解。」
さっそくと、サンドウィッチを掴んだミアが「いただきまーす」と頬張る。
「んまいっ!」
「そうか。良かった。」
美味しい美味しい、と食べるミアの幸せそうな顔を見ながら、ガイアスもそれを口へ運ぶ。
「毎日でも食べたいよ、コレ。」
「そう言ってもらえたら、料理長も喜ぶだろう。」
「これ、絶対に弟が好きな味だ。食べさせてあげたいなぁ。」
ミアは人間国の屋台ご飯に憧れている弟リースを思い浮かべる。
「明日、うちに昼を食べにくるか?帰る時にそれを土産として持たせよう。」
「え!いいの?…2日連続だけど。」
「かまわない。調理の者も、たまにはジャンクな物を作りたい、って前からぼやいてたからな。」
ガイアスの言葉に兄カルバンの厳しい顔が浮かんだミアだったが、『関係ない』と頭から消し去る。
「行っても、いい?」
「ああ。俺から誘ったんだ。」
(明日もミアと一緒に長く居られる。)
ガイアスは幸せを感じていた。
(皆には『ミアは狼』とだけ伝えてあるが、王家の者だと言うべきだろうか…。いや、ミアにも事情があるのかもしれない。身分を隠しておきたいのであれば、俺はそれを尊重する。)
ミアがいつまでも王家の狼だと告白しないことに多少疑問の残るガイアスだったが、ミアが揚げ物を摘まんでは嬉しそうに尻尾を振る姿を見ていると、そんなことはどうでも良くなってくる。
素直に「明日も一緒に過ごせるのだ」と楽しみに思った。
剣を払う仕草の後、剣を仕舞ったガイアスがミアへ向き直ると、息の整わないミアが、はぁはぁ、と息をはきながら「はい。」と答える。
「汗を拭いたほうが良い。」
「ありがとう。」
立ったまま膝に手をつき、ふぅーっと息を吐いているミアに、タオルを手渡す。
ミアはにっこりと笑いかけながらそれを受け取った。
(打ち合いって、こんなに激しいんだな…。)
初めてガイアスと打ち合いをさせてもらえるとあって、喜んでいたのは最初だけ。
ガイアスの速い振りに対応するには、ずっと集中しておかねばならず、打ち込まれた時の重さに耐える度に、腕や足がジンとした。
そして、終わった後のこの疲労感。もっと体力をつけなければ、と新たな課題もできたミアだった。
「ミア、汗を拭いて少し休んだら、森の奥に行ってみよう。」
「じゃあ転移で行こうよ。地図持ってるよね?」
「ああ、持ってきた。…2人できるのか?」
ガイアスはこの森の地図を取り出しミアへ手渡す。
「うん、石の持ち主に触れてたら、何人でもできるよ。」
「それは凄いな。」
石の力にまたもや驚かされたガイアスはミアの腕輪に嵌る赤い石をじっと見る。
「便利でしょ。まだいろんな使い方があるから、見せてあげよう!」
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「この辺かな。」
ガイアスに説明された辺りを地図上で指差す。
「そこでいい。」
「じゃあ、行こう。」
「ああ。」
ミアがガイアスの手を握って目を閉じる。大きなガイアスの手がミアを握り返してくる感触にちょっと照れながらも、ミアは転移したいと念じる。
「着いた。」
「凄いな、本当に一瞬だ。」
目をゆっくり開けたガイアスが、視線だけで辺りを見回す。
「気持ち悪くなったりしてない?」
「大丈夫だ。」
じゃあ行こう、と目的地に向かおうとするガイアスに連れられミアも歩き出すが、手が繋がれたままであることに気づく。
「あの…ガイアス?」
「どうした?」
「いや…その…。」
視線を手元に向けながら話すミアは、明らかに繋がれたガイアスの手を意識している。
「転移したばかりで、うまく方向感覚がつかめないんだ。…嫌か?」
「えっ!そうなのか?…初めてだからかな。」
(見たところミアに嫌がっている様子は無い。)
「もう少し、こうしてていいか?」
(ミアには悪いが嘘をつかせてもらおう。)
「うん、もちろん!俺が支えてやるから安心して歩いて!」
「頼もしいな。」
「へへ。」
頼もしいという言葉に喜びを露わにするミア。
「俺、可愛いとか子どもっぽいってよく言われるけど、本当は頼りになる大人の男に憧れてるんだ。」
「そうなのか?ミアは男らしいと思うぞ。」
「ほ、本当にっ?!そんなこと言われたの、人生で数えるほどだ。」
「一生懸命で努力家で、今はこうして手を握ってくれている。そんなミアを俺は、かっこいいと思う。」
「そう…?ガイアスみたいなかっこいい人に言われたら、本当かもって思っちゃうよ。」
へへ、と照れるミアが、耳をピコピコと動かしながら手をぎゅっと握った。
ピタっと急に歩みを止めたガイアス。
何かあったのかと心配になったミアが見上げると、繋いでいない方の手で目を覆っているガイアスの姿があった。
(俺のことをそんな風に…。手を握ってくるとか…反則だろ…。)
予想外のミアの言葉と反応に、ガイアスは心臓がいくつあっても足りそうになかった。
「ガイアス、大丈夫そうか?」
「ミアのおかげで安心して歩ける。」
「さっき立ち止まった時も平気って言ってたけど、無理しないようにな。」
手を繋いだまま、例の白い花の場所まで向かう途中、何度もミアが尋ねてきた。
(俺がミアに触れていたいから嘘をついている、なんて思いもしないんだろうな。)
純粋で素直なミアに、またしても心が癒される。
「あれだ。」
「わぁ~、本当に真っ白だ!」
驚いた声で花のある部分を見渡す。
「形も面白いぞ。」
「近くで見よっ!」
ガイアスの手を引きながら、花へと向かって少し小走りになるミア。
「おお~、狼の耳みたいだ。」
ちょんちょんっと尖った花弁を指で触って確かめる。
2人は座って白い花を観察していた。手はいまだに繋がれたままであるが、ミアはそれを気にせず花に集中している。
「ミアにそっくりだ。」
「たしかに。感触も似てたよ。」
「そうなのか。」
ガイアスはそう言いながら、片手の親指と人差し指でミアの耳を優しく挟む。
「ッわぁ…っ!」
「ん?驚かせたか?」
言いながらも、ガイアスは感触を確かめるように耳の頂上まで指をスッと滑らせる。
ビクっと震えたミアだったが「次は花を触ってみて。」と言おうとした瞬間に、耳の根元を触られ変な声が出た。
「…っやぁ…ッ」
「ミア?」
様子のおかしいミアの顔を覗き込むと、真っ赤な顔をしたミアが涙目でうつむいている。
「痛かったかっ?」
「違くて…その…。」
「驚いただけか?」
手はいまだに耳の根元に置かれ、痛くないことを確認したガイアスは先ほどのように指を動かす。
「…痛くないけど、離して。」
小さく言ったミアの言葉に、ようやく手をのけたガイアスは、どうしたのかと様子を伺う。
薄い涙の膜を張ったミアが、ガイアスを見上げる。
ガイアスの喉がゴクリ…と上下に動いたが、ミアは「伝えなければ。」と必死で気づかない。
「狼は、耳が弱いんだ。触られるとムズムズするから…その、ダメ。」
「……そうだったのか、すまない。感触が似てると言ってたから、気になって。」
「ううん、先に言っとけば良かったね。」
お互い黙ってしまい、なんとも言えない空気が漂う。
(もっと「なんともないぜ!」って感じで言えば良かった…。)
ミアは自分の反応がおかしかったのではないか気になり、汗をかく。
(あ~!なんだか恥ずかしい雰囲気になっちゃった~!ガイアスも気まずそうだしっ!)
「昼でも食べようか。」
沈黙を破るように、ガイアスは繋いだままのミアの手を引き、開けた場所の真ん中へ移動する。
切り株がいくつかあり、ここがガイアスの祖父によって切り開かれた場所であることが分かった。
ガイアスが昼食の準備をするために手を離す。
ミアの手の平は、風を感じて少しひんやりと感じた。
「花は後で根から抜いて持って帰るといい。」
「そうするよ、弟も見るの楽しみにしてたから。」
最初のガイアスの手つきを見てから、紅茶はミアが入れることになった。
いつもの可愛らしいティーカップとは違って、今日はシンプルなマグカップだ。
慣れた様子で紅茶を注いでいる間に、ガイアスが敷物の上に昼食を並べる。
「うわ~、美味そうだな!」
「けっこう量が多いな。全部食べなくていいからな。」
「了解。」
さっそくと、サンドウィッチを掴んだミアが「いただきまーす」と頬張る。
「んまいっ!」
「そうか。良かった。」
美味しい美味しい、と食べるミアの幸せそうな顔を見ながら、ガイアスもそれを口へ運ぶ。
「毎日でも食べたいよ、コレ。」
「そう言ってもらえたら、料理長も喜ぶだろう。」
「これ、絶対に弟が好きな味だ。食べさせてあげたいなぁ。」
ミアは人間国の屋台ご飯に憧れている弟リースを思い浮かべる。
「明日、うちに昼を食べにくるか?帰る時にそれを土産として持たせよう。」
「え!いいの?…2日連続だけど。」
「かまわない。調理の者も、たまにはジャンクな物を作りたい、って前からぼやいてたからな。」
ガイアスの言葉に兄カルバンの厳しい顔が浮かんだミアだったが、『関係ない』と頭から消し去る。
「行っても、いい?」
「ああ。俺から誘ったんだ。」
(明日もミアと一緒に長く居られる。)
ガイアスは幸せを感じていた。
(皆には『ミアは狼』とだけ伝えてあるが、王家の者だと言うべきだろうか…。いや、ミアにも事情があるのかもしれない。身分を隠しておきたいのであれば、俺はそれを尊重する。)
ミアがいつまでも王家の狼だと告白しないことに多少疑問の残るガイアスだったが、ミアが揚げ物を摘まんでは嬉しそうに尻尾を振る姿を見ていると、そんなことはどうでも良くなってくる。
素直に「明日も一緒に過ごせるのだ」と楽しみに思った。
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