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 教会に近づくにつれ、村人の頭や帽子、肩に担いだ荷物の向こうに見え隠れしていた勇者たちの姿が、だんだんはっきりと見えてきた。
 広い階段に居並ぶ一行は、まるで舞台に立っているように壮麗に見えた。
 このあいだ会話を交わした背の小さい男は、今日は、繊細な装飾が施された銀色の甲冑に身を固めて、中央にすっくと立っている。
 大きな二本の角がついた兜を脇に抱えたままで、村人に向かって手を振る。
 その右隣りにはつば広帽の女性がいる。
 黒紫色の帽子を深々とかぶり、同じ色のケープを纏い、金色の飾り物をいくつもぶら下げた長い錫杖を携えている。
 ときどき小柄の男に顔を寄せて、何かをつぶやいている。
 左隣りには黒い鎧の男が並ぶ。
 前に見た通り、頑健そうな身体に重い鎧を身に着けていて、さらに巨大に見える。
 腰に下げた剣は、小柄の男の得物とそう大差ない大きさだが、まるで小剣のように思えてしまう。
 その後ろでは、少年が目いっぱい手を振る。
 相変わらず短いナイフを腰に差し、それだけではなく、両肩からナイフをびっしりと挿したベルトを垂らしている。
 ローブ姿の老人は、階段の後ろの方、教会の入り口に腰を下ろし、開いた扉にもたれかかって、一行の方を眺めている。
 ぼろ雑巾のようなローブはそのままで、すぐにもぼろぼろに崩れてしまいそうだ。
 たしかに、数日前、道案内をした連中だ。はっきりと思い出した。

 いや、そういえば……。
 頭の中の像が、まるではじかれたように、幾重にも重なって現れてきた。
 何だろう、この記憶は。
 たしかその前も、別の一行に、同じ道案内をした覚えがある。
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