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祝賀会 1

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疲れも回復し元気になったリリカは、リユー王から城内の見学と書物の閲覧許可を貰っていた。

夕方まで十分時間のある彼女の頭の中に真っ先に浮かんだのは、早く城内を見学したい本を読みたいと言う事だった。

仕事で忙しそうなエメリンを部屋に残し、彼女は城内探索に出掛けようと扉を開けた。部屋を出ると、幅の広い廊下が真っすぐ伸びる。天井には、幾何学模様のレリーフが彫られ、壁には獣人族の絵画や彫像が並んでいた。装飾を施された廊下に獣人の姿は無く、遠くで足音が聞こえるだけだ。

広くて迷いそうな城内に好奇心旺盛なリリカは、キョロキョロと周囲を見渡した。新しい発見を楽しみに、長い廊下を歩みだした。

立ち入りが制限されている部屋の前に立つ衛兵に挨拶をすると、無言で頭を下げてくれる。

外の光が見えたので小走りで向かうと、そこは回廊になっていて花々が咲く中庭だった。感動したリリカは、足を止め胸の前で両手を合わせた。

中庭には、草花が香り人工的に作られた小川からせせらぎが聞こえる。

色とりどりの花の周りには、蜜を集める蜂が忙しく飛び回っていた。

綺麗な光景に誘われて中庭に入ったリリカは、思わずここで寝転びたい衝動にかられたが、ブルブルと首を振り高ぶる気持ちを抑える。

「ダメダメ、せっかく城の書物が読めるのに、もっと時間を有効に使わなくちゃ」と、書庫を探す為に廊下へ戻り再び歩き始めた。

書庫は、重厚な扉と槍を持つ衛兵に守られていた。

パソコンや電話などが無い通信技術の乏しい世界では、書物は大切な情報源になる。

そのため重要な文献や精密な地図が保管される書庫は、国の大切な場所として厳重に管理される。当然、許可された者しか入れない。

リユー王から貰った許可書を衛兵に見せると、扉の鍵を開けてくれた。重厚な扉が、ギシギシと音を立てて開かれる。

部屋の中は、三層に分かれた本棚が天井まで並んでいる。

所狭しと廊下が張り巡らされ、至る所に梯子が設置されている。壁際には、二層に行くため階段があった。 

大分類でセクションごとに分けられ綺麗に整理された本棚に、リリカは感心させられた。大量の本が、探し易く並べられている。

さあ、必要な情報を集めて行こうと、意気揚々の彼女は腕をまくった。

書庫に収められる全ての本は、持ち出しと写本が禁止されていた。しかし、リリカは事前にメモを取る許可を得ていたので、安心して情報収集が出来る。

旅に必要な情報を集めたかったリリカは、詳細な地図とこれから訪れる国々の主要都市や町の情報が記載された本を探し出した。

書庫の真ん中に置かれる机の上に、棚から取り出した本を積み上げていく。

椅子に座ったリリカは、ポシェットから地図とノート、そして筆記具を出した。手にした地図を見ながら、自分の地図に書かれていない都市や地名を書き加え、気になる点をメモに記していく。

「ふーん、マラガの次は、ウォリス連邦国に属する港町ナルラカなのね」、地図の上を彼女は指でなぞる、「へえー、ナルラカを出たら平原がある、ベシニーロウカ平原て言うんだ」、ここで危険そうな場所に印を入れメモに注意点を書いた。

地図から目が離せないリリカは、独り言を呟きながらペンを動かす。

テラダモルテ砂漠の横を通ると、カイセラと書いてあるわ。何々、ここは、東西の交易路が交わる都市で、世界中の商人が集まると。

それじゃあ、北には何があるの。おお、ドワーフの町だって。集合都市ルナンか、ドワーフの集合都市は、どんな所だろう。時間があったら寄って見たいな。ペンを下唇に当てながら、リリカはドワーフの町を想像する。

カイセラから西へは、道が整備されていて定期的にドマンやアテナイ行きの馬車が出ているんだ。これは、馬車に乗り損ねたら大変だから、忘れないようにメモに書いておこう。

シャメニコーラ遺跡を通り過ぎると、民主主義国家のアテナイがあり、その隣の国が目的地のアバルディーンだね、「地図は、これで良しと!」

国の名前が表紙になった本には、その国を治める種族、人口、産業などが詳細かに書かれていた。挿絵を見ているだけなら楽しい本なのだが、専門用語羅列された難解な文章に、目尻を抑えるリリカは読解できず疲れるだけだった。

「うーん、難しい言葉ばっかりで、疲れちゃったよ・・・キャッ」

椅子にもたれて背筋を伸ばそうとしたリリカは、勢い余って後ろに倒れてしまった。

ドスンと、大きな音が誰もいない部屋に響いた。

「痛た、た、た」、誰にも見られていないのに赤面していた。

「リリカ、居るの?」

時間になったのか、エメリンがリリカを呼びに書庫にやって来た。

「はーい、ここに居ますよ」

部屋を出てから、だいぶん時間が経っていたようだ。リリカの事が心配になったエメリンは、様子を見に来たのだ。

「そろそろ準備しないと、間に合わないわよ」

「直ぐに片付けて、部屋に戻りますね」、机の上にあった本をそれぞれ元の場所に戻し、急いで書庫を出ていった。
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