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集団憑依 ④

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 一瞬の暗闇、テレビのチャンネルを変えるように場面が切り替わっり、真っ白な空間が目の前に広がった。眩しいと言うより、只々、何もない白い空間。
 隼人自身が前から歩いて来た、夢の中の偉そうな俺か?
“自己犠牲か、無意識に行動したとしても褒められる事ではないな。アルバイトをする前に忠告してやったのに”
「褒めてもらわなくて結構だ。結果的に俺が身代わりになってしまっただけで、今更後悔してもしょうがないからな」
“はぁ~、お前は無鉄砲だな。せっかく助けてやった命なのに”
「助けてやった? 俺は、お前に助けてもらった記憶は無い」
“忘れているだけだ。思い出して見ろよ、幼い頃、祠の封印を解いた後、お前自身がどうなったのかを”
「どうなった?」
 自身からの問いかけに戸惑う。
 祠の扉を開いた後、俺に何が起こった?
 必死に記憶の断片をたどっていく。祖父母の暮らしていた村、走り回った野山の景色、近づくなと言われていた池のほとりの祠、気が付いたとき祖父母の住む家の縁側で寝ていた俺。
――― ・・・?
 寝ていた?
 なぜ、俺は縁側で寝ていた?
 あの時、目を覚ました俺を抱きかかえた祖母は、どうして涙ぐんでいた?
――― ・・・!
 池に落ちた?
 その光景と言葉が頭に浮かび上がると、偉そうに話す隼人が手を差し伸べてきた。
“大まかな所は、思い出したな。全てを見せてやるよ”
 差し出された手を取ると、懐かしい景色の中に居た。
「ここは、俺の祖父母が暮らしていた村か」
“そうだ、じゃあ、池のほとりにある祠に行こうか”
 場面が変わる、祠の扉を開けようと背伸びする幼い隼人の姿があった。
 幼い彼は、祠の封印を破り、扉を開ける。その瞬間、扉の中から丸い光の玉が飛び出し、驚いた俺はそのまま後ろに倒れて転がっていく。
 あっ、勢いを付けたまま、池に落ちた。
「そうだ、池に落ちて溺れた」
“溺れるお前を助けてくれる大人は、誰もお前の傍に居なかった。目覚めて直ぐの俺に十分な力もなく、本来の姿に戻る事も出来なかった。だから、お前の中に入り助けるしか方法はなかった”
「お前が俺を助けた? じゃあ、お前は祠の中に封印されていた物の怪か?」
“失礼だな、お前は。あそこの池の名を覚えていないのか?”
「名も無い池だったはずだが」
“地元の人は何と呼んでいた、お前の祖父は何て言っていた”
「・・・龍神池には近づくな」
“そう、俺はあそこで眠っていた龍だ。お前が俺を目覚めさせた”
「目覚めて、俺を助けてから今までずっと俺の中に居たのか? 俺の体を依り代にしていたのか?」
“本来の力を取り戻すため、お前の中に居た。ただ、長く居過ぎてしまった”
「居過ぎるとどうなるんだ?」
“お前の魂と俺の魂が癒着してしまった。直ぐには、引きはがせない。だから、お前に死なれると俺が困るんだよ。力を貸してやる、俺がお前の体から出て行けるようになるまでの期間限定だが”
 隼人は夢で語り掛けてくる自分は龍だったと知る、考えても答えは出ないか。
 このまま、拒否しても死ぬだけだ。
 桜は? 正人さんや長老は、悪魔を倒すことは出来ただろうか?
“仲間の事が心配か? なら、迷う事は無いから早く目覚めて悪魔と戦え”
「その通りだな。期間限定でも良い、お前の力を借りるよ」


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