だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する

モト

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番外編

番外編 サモン16歳 アーモンとの出会い②

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だ」

 ロッカー前で顔を歪ませたフランに近づくと、はっきりと分かる異臭。

 俺が学園教師に呼び出されている間、フランのローブがまた盗まれた。
 そして、今、精液まみれとなって、フランの元に戻ってきた。
 
「僕に性欲向ける奴ら、みんな滅べばいいのに」
「……」

 フランは、以前から多数の男に欲情を向けられているからか、精そのものに嫌悪しているようでもある。
 だがまあ、こんな汚物を見たあとでは当然の反応だ。

 俺は、ローブに手を翳した。
 瞬時に赤い炎が点火し、燃えカスとなった。
 フランには俺のローブを貸し、それから次の日、新しいローブを渡した。

「えぇ、なんで⁉ いいよ! 失くしたのは僕のせいなんだから」
「貴様の管理は、俺が行っている。俺のミスだ」

 そう言うと、碧眼の目がまんまるに見開かれ、また「ええぇ⁉」と手を左右に振る。

「いやいやいや! おかしいよ。それを君のミスだというのは、あまりに僕が横暴すぎないかい⁉」
「なければ不便だろう。使え」
「……う。君ってば、僕に優しくしすぎやしないかい」

 問答無用でローブを彼の胸に押し付けると、彼はしぶしぶ受け取った。

「分かった。有難く頂戴する。だけど、僕だってされっぱなしじゃないんだから」

 気にするなとは言ったが、フランは俺に何かをお礼をすると言って聞かなかった。





「サモン君、ほら、ほら!」
 休日のこと。夕食後に本を読んでいたら、俺はフランに強引に外に連れていかれた。

 どこに行くのかと聞けば、フランはニマニマと微笑み、人差し指を立てて「な・い・しょ」と言う。
 何か企んでいることは見て取れたが、黙ってあとを付いていく。

 そして、フランが連れてきた先は、休日の誰もいない学校だった。
 何をするつもりだと思えば、フランは木のうしろにしゃがんだ。

「こっちこっち。サモン君も」
 と、彼はいたずらっ子のような顔をして手招きする。言われたとおりフランの隣にしゃがみ込んだとき、フランが樹に息を吹きかけた。
 すると、ふわっと綿毛のような光が飛ぶ。

「虫……?」
「この時期、魔法樹の蜜を求めて虫が集まるんだって。こうやって息を優しく吹きかけると、ほら、光がね? 綺麗でしょう?」

 ふわふわ、とフランの周りに小さい光が包んでいる。

「僕は漫画で読んで知っていたんだ」
「漫画?」
「あ、ううん。なんでもない!」
「君は物知りだけど、直接見るのははじめてでしょう?」
「……あぁ」
「でしょう! 本で見るより絶対綺麗だから、君に見せたかったんだ!」

 フランは、そう言って自慢げにふふんと鼻を鳴らした。
 さっきから抑えきれないほど、ニマニマしていたのは、これを俺に見せるため……

「綺麗だね!」
「……」

 ふわふわと光に包まれるフランが、俺の目にはより一層綺麗に映った。
 造り物のように美しいかんばせが、眉を下げて満面の笑みになる。
 
 こんなの綺麗すぎて、誰だってフランを見てしまう。
 俺も……
 俺は一番汚い。
 男どもの汚い気持ちを誰より分かりながら、違うふりをして居続けるのだから。欲望も何も感じていない態度で彼に触れる。
 

「サモン君、また一緒に見にこようね!」
「あぁ」
「やった!」

 喉奥に飲み込めない何かがつっかえるようだった。
 フランが俺を求めるのなら、我が物顔で居続けてやる。




──*──*──*──
お読みくださりありがとうございます。
続きの番外編は週末アップいたします

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