足掻くオメガ

モト

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「ねぇ、ガチブス。」


朝練を終え、部室を片付けていると、オメガの渡里がそう呼んだ。
ガチブスってなんだ。ブスじゃねぇって言ってんだろうが。

「省略するなら、ガチガチと呼べ。」


「ねぇ、ガチブス、昼休憩に体育館裏に来て欲しいんだけど。」

無視か。

じゃ、俺も無視しよう。

スタスタと渡里を無視して部室の鍵をとりに行こうとしたら、渡里がくいっと引っ張った。子供みたいな力。

「わ・・・なにっ!オメガなのに力強いっ!」

渡里が俺の腕を引っ張ったが俺は無視して歩いているので、渡里ごとズルズルと引っ張るように歩いた。

「ガチブスっ!、話があるんだってば!」

「俺はないぜ。」

「東吾さんの事でっ!」

東吾の事・・・?
俺は歩みを止めて、渡里を見た。

やっぱり、華奢でシミ一つないキレイな顔立ちをしている。
確かに、東吾の横はキレイな美少年が似合う。

「好きにしろよ。東吾の事で俺から言う事は何もないから。」

「ふーん。でも、来てよ。体育館裏に。相談があるんだ。」

行かないというセリフを言う前に渡里は「絶対だよ!!」と去って行ってしまった。




勝手過ぎると思いながら、昼休み体育館裏に向かった。

「おい。来たぞ。いないのか?」

そこに渡里の姿はなく、いたのは他校のアルファとベータだった。
俺を見たアルファとベータが、ニヤッと笑った。

あーそういう・・・ね。

渡里が俺を呼んだ意図を理解した。


色々こいつらが言っているけど、まぁ理解しているからいいや。渡里に雇われたんだよな。

その通りにアルファがラッドをした・・・らしい。

らしいというのは、俺がその匂いをやっぱり分からないからだ。勝手にふーふーと言っているコイツにはキモさしか伝わってこない。

つまらねぇなぁ。とこいつらにも渡里にもガッカリして、フックとアッパーと右ストレートとついでに勃起している股間に金蹴りをお見舞いしてやった。


「流石だな。」

「・・・。」

いつ居たのか分からないが、東吾がいた。

渡里の目論見が東吾には筒抜けだったということか。運命の番が性格ブスで可哀想にな。

「助けてやろうと思ったが、不要だったな。」

「その通り。」

まぁ、いいや。

俺が並みのアルファより強いという事がよく分かっただろう。

こんなに強いオメガは、俺以外いない。(多分。)

俺は、自分の勇姿を東吾に見せる事が出来て少し嬉しかった。


「今日も部活か?」

「あぁ。」

先輩たちが卒業して、俺達は三年になった。ボクシング部も自分の事だけじゃなくて、後輩の面倒もみなくてはいけない。

なんてったって、副部長だしな。

やばい。ちょっとハイテンションになってる?うん。アルファを倒せたってことは、俺にとってとても自信になったみたいだ。


「なら、終わるまで待っている。」

「・・・。」

だから、いらねぇっつーの。

テンション下がる。

仕方ない。これの積み重ねだ。積み重ね自分が強いという事を東吾に知ってもらうしかない。

卒業には、俺は東吾の前から姿を消す。

俺は俺の道を楽しく暮らし、東吾は大学進学。

番じゃなくなるっていうのは、オメガには鬱などの精神異常をきたすって言われているけど、アルファ側には何もなかったよな。

『俺なら大丈夫だろう』と思われるのが俺の最終理想形だ。

俺の事を忘れた頃に、性格悪いけど運命の番の渡里と仲良くやればいい。


三年の夏で部活動も終わりか。部活が終わると凄く卒業を意識するだろうな。


「何かあったのか?」

何が?と東吾を見た。東吾は口元を手で押さえている。

「六のいい匂いがする。」

「・・・。」

見るんじゃなかった。俺は東吾の欲情した顔にとても弱い。


「あ、あっち行けっ!学校で欲情すんなっ!」

「そんな匂い撒き散らかす方が悪い。」

「嘘!?やる気!?やめろっ!!」

逃げようとすると、東吾に腰を掴まれ体育倉庫に連れてこられた。

鍵閉まってねぇのかよ!?

なんで?あ、まさか、さっきの奴ら体育倉庫で俺を手籠めにしようとして倉庫開けてた!?


「学校ではしたくないっ!学校ではしたくないからっ!!」

誰かにバレたら厄介だ。

すると、東吾が内側から鍵を閉めた。


「最後まではしない。」

「あ、当たり前だっ!ていうか、しない!独りで処理して・・・く、れ・・・。」

そう言いながら、狭い体育倉庫の空気の薄い中、東吾の香りが充満していく。

「く・・・はっ。」

香りでむせかえる。この香りヤバい。

膝に力が入らなくなってしまって東吾に支えられる。抗える気がしない。俺の匂いが充満しているのか東吾も興奮している。

東吾は、お互いのズボンを下げた。


もう完全にお互い勃っていて東吾の大きい手が互いの陰茎を一緒に包んだ。

「くっふ・・・。」

東吾の大きい手で動かされるのが、気持ちいい。俺の手もその手に重ねた。ヤバい。ダメだダメだと言いながら、すぐにやる気になる自分が嫌だ。

東吾が俺を後ろ向きにして、跳び箱に手をつかせた。

ま・・・まさかっ!

「待って!俺、ゴムないっ!入れちゃ駄目だっ!!!」

「最後までしないと言っただろう。」

すると、俺の尻と内股に東吾のちんこを擦りつけられる。

これって、素股・・・?

「ヤバいっ!!!コレ、変な気分になるから、やめろっ!!さ、さっきの擦り合いでいいじゃねぇか。」

この体勢は嫌だ。

セックスと同じ体勢だ。挿れている感触全部思い出してしまう。

勝手に尻が引くついてしまう。

「絶景だな。」

「ク・・・クソッ!早く終われよっ!」

俺は恥ずかしさと声を堪える為に指を噛んだ。その指を離して代わりというように東吾の指が口に入れられる。

「・・・噛むなら俺の指にしろ。」

「ふっ・・・くっ・・・。」

やっぱり、腹が立つ。だから噛んでやった。

すると、後ろで東吾が笑う気配がした。




結局、昼休みも終わって五時間目もサボってしまった。

ついで、俺は六時間目も屋上でサボった。

コーヒー牛乳を飲んで雑誌を飲んでいた所、渡里が来た。

「ねぇ、ガチブス。」

「よぉ。性格ブス。」

性格ブス呼ばわりされた渡里は眉間にシワを寄せて睨んできた。

「なんで東吾さんと君が一緒に体育倉庫から出てきたんだよ。」


・・・ほら見ろ。学校でなんかやるもんじゃない。目撃者っていうのはいつでもどこでもいるんだ。

まぁ、コイツが東吾と俺の事を言いふらしてもメリットないし。大丈夫か。

「東吾さん、僕のヒートすら平気だった。君たち番なんだろ。」

初めて、東吾と俺の関係を言い当てられた。さすが、運命の番だな。

こんなに一緒にいるのに、周りは東吾と俺を番だと思ってもいないようだ。

これが、俺だよ。

誰も認めないし、俺だって認めていない。


「性格ブスは、やり方がセコいし考えが浅いなぁ。そんな事しなくてもノシつけてやるよ。」

渡里が東吾の事を好きな事は知っているし、運命の番なんだろ。

「なにそれ。」

「さぁな。どっちにしろ、その性格ブス直さないと東吾に振り向いてもらえないぞ。」

キレイな顔がキッと睨んだ。


鬱陶しい。

この夏の暑さが、益々鬱陶しい。



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