143 / 151
新章 再び、異世界へ
142.現代に舞い降りし聖女
しおりを挟む
俺は、いつの間にか倒れていて……はっ! と目覚め、起き上がる。目の前には同い年くらいの、一人の女性がいた。
「……気が付いたようですね。梅屋さん」
「……ここは……。……って、雫川!?」
俺は、その女性と面識があった。かつて、敵対した第三次召喚勇者、その生き残りのうちの一人で、Sランクスキル『死者蘇生』を持つ者。
敵対したとは言っても、彼女と直接戦った訳ではない。ので、あの戦いのあとは異世界で話す機会もよくあった。こちらの世界に帰ってからは、会ったことはなかったが……。
周りを見ると、崩れた瓦礫やらで悲惨な光景になっている。確かあの時、『カミサマ』と戦って、倒したと思った直後に――まさか。
「まさか、俺は死んだ――のか?」
「いいえ、生きていましたよ。他の人々はみんな息を引き取ってしまっていますけれど、そのために私がいるんです。……一体、何があったんですか? 異世界が関係しているのは間違いないんでしょうけど……」
「その通りだ。……詳しいことは後でゆっくり話す。それより、唯葉と工藤、水橋を見なかったか? さっきまで一緒に戦ってたんだ」
「残念ながら、まだ。でも、私に戻ったこの力……きっと、この時のためにあったのでしょう。何人たりとも、死にはさせません。必ず助けることができますから、安心してください」
「そうか。雫川もまた、スキルが……。それも含めて、後から話す。……こうなったのも、俺の責任だ。俺も手伝うよ」
***
想像以上にキツい。……血を流しているのは当然で、思いっきり身体が瓦礫に押し潰されてしまっている者さえいる。
これでも、雫川実里のスキル『死者蘇生』は発動するという。
あのスキルを手にしたばかりに、こんな光景を、ずっと見てきたというのだろうか。
「見る限り、これで全員でしょうか。それにしても皆さん、あれほどの爆発の中よく無事でしたね……」
「うん、何とか……ね」
「私はこんな所で死ぬつもりはないし、ね」
「伊達に異世界で戦って来てないしな」
俺と唯葉、工藤は、その高いレベルやステータスによって助かった、といったところだろう。三人とも怪我はしているものの、歩くくらいはできる。
ステータスがそれほど高くない水橋は、咄嗟に鉄の壁を生み出して自身を覆い、爆発の直撃を逃れたという。
再び異世界へ行き、『世界の結合』に関わる俺たち四人と、同じ異世界へと召喚された雫川実里が集まった。
「さて、何から話そうか……」
やるべき事を終え、再び異世界へと行ったこと、異世界が滅びそうなこと、世界の結合のこと、カミサマのこと、ここで起こったこと、知っている全てを話す。
***
「そんな事が……。夢、確かに見ましたが、まさか本当だったとは。もちろん、私もできる限りお手伝いします。
皆さんみたいに戦うことはできませんが、今回のように私の力で助けられるなら。いつでも力になります」
かつて、異世界での戦いをも治めた『聖女』が、再びこの世界に舞い降りる。
「……気が付いたようですね。梅屋さん」
「……ここは……。……って、雫川!?」
俺は、その女性と面識があった。かつて、敵対した第三次召喚勇者、その生き残りのうちの一人で、Sランクスキル『死者蘇生』を持つ者。
敵対したとは言っても、彼女と直接戦った訳ではない。ので、あの戦いのあとは異世界で話す機会もよくあった。こちらの世界に帰ってからは、会ったことはなかったが……。
周りを見ると、崩れた瓦礫やらで悲惨な光景になっている。確かあの時、『カミサマ』と戦って、倒したと思った直後に――まさか。
「まさか、俺は死んだ――のか?」
「いいえ、生きていましたよ。他の人々はみんな息を引き取ってしまっていますけれど、そのために私がいるんです。……一体、何があったんですか? 異世界が関係しているのは間違いないんでしょうけど……」
「その通りだ。……詳しいことは後でゆっくり話す。それより、唯葉と工藤、水橋を見なかったか? さっきまで一緒に戦ってたんだ」
「残念ながら、まだ。でも、私に戻ったこの力……きっと、この時のためにあったのでしょう。何人たりとも、死にはさせません。必ず助けることができますから、安心してください」
「そうか。雫川もまた、スキルが……。それも含めて、後から話す。……こうなったのも、俺の責任だ。俺も手伝うよ」
***
想像以上にキツい。……血を流しているのは当然で、思いっきり身体が瓦礫に押し潰されてしまっている者さえいる。
これでも、雫川実里のスキル『死者蘇生』は発動するという。
あのスキルを手にしたばかりに、こんな光景を、ずっと見てきたというのだろうか。
「見る限り、これで全員でしょうか。それにしても皆さん、あれほどの爆発の中よく無事でしたね……」
「うん、何とか……ね」
「私はこんな所で死ぬつもりはないし、ね」
「伊達に異世界で戦って来てないしな」
俺と唯葉、工藤は、その高いレベルやステータスによって助かった、といったところだろう。三人とも怪我はしているものの、歩くくらいはできる。
ステータスがそれほど高くない水橋は、咄嗟に鉄の壁を生み出して自身を覆い、爆発の直撃を逃れたという。
再び異世界へ行き、『世界の結合』に関わる俺たち四人と、同じ異世界へと召喚された雫川実里が集まった。
「さて、何から話そうか……」
やるべき事を終え、再び異世界へと行ったこと、異世界が滅びそうなこと、世界の結合のこと、カミサマのこと、ここで起こったこと、知っている全てを話す。
***
「そんな事が……。夢、確かに見ましたが、まさか本当だったとは。もちろん、私もできる限りお手伝いします。
皆さんみたいに戦うことはできませんが、今回のように私の力で助けられるなら。いつでも力になります」
かつて、異世界での戦いをも治めた『聖女』が、再びこの世界に舞い降りる。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
大事なのは
gacchi
恋愛
幼いころから婚約していた侯爵令息リヒド様は学園に入学してから変わってしまった。いつもそばにいるのは平民のユミール。婚約者である辺境伯令嬢の私との約束はないがしろにされていた。卒業したらさすがに離れるだろうと思っていたのに、リヒド様が向かう砦にユミールも一緒に行くと聞かされ、我慢の限界が来てしまった。リヒド様、あなたが大事なのは誰ですか?
異世界転生令嬢、出奔する
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました(2巻発売中です)
アリア・エランダル辺境伯令嬢(十才)は家族に疎まれ、使用人以下の暮らしに追いやられていた。
高熱を出して粗末な部屋で寝込んでいた時、唐突に思い出す。
自分が異世界に転生した、元日本人OLであったことを。
魂の管理人から授かったスキルを使い、思い入れも全くない、むしろ憎しみしか覚えない実家を出奔することを固く心に誓った。
この最強の『無限収納EX』スキルを使って、元々は私のものだった財産を根こそぎ奪ってやる!
外見だけは可憐な少女は逞しく異世界をサバイバルする。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる