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第5章 事件解決編その1

30話 〈事件の幕引き〉

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 豊科誠子の持ち寄った証言を一つの証拠として、舩木梓乃に焦点が当てられた。
 
「えぇー。では、舩木梓乃さん。情報の横流しリークとそれのにまつわる話が、こうして、ボイスレコーダーに録音されている訳ですが、この声は貴女で間違いないですね?」
「……はい……」
「では、このボイスレコーダーに記録されている内容は貴女が話したことで嘘偽りはない、と?」
「……はい……」

 豊科誠子の持ち込んだ自白の記録されたボイスレコーダーを用いて、誘拐事件を改め、舩木梓乃が関わった豊科工業の機密情報の横流しリークとそれにまつわる賄賂の事件について、事情聴取をマジックミラー越しに聞いていた永瀬警部補が行う運びとなった。

「警部補の永瀬です。ここからは私が事情聴取の方をさせて頂きます。では、もう一度お聞きしたい。情報の横流しリークと賄賂に関わった人間は、貴女を含めた祐川勇司・紫垣順也の三人で間違いはないですな?」
「……えぇ……間違いありません。確かに私・祐川勇司・紫垣順也が関わってます」
「ふむ。では質問を変えます。機密情報の横流しリークと賄賂を持ち掛けた人物は誰ですか?」
「……私。私です」
「成・る・程。そうか、そうでしたか、そういう事でしたか!」
「どうされたんですか?」
「クククッ……アハハ。面白いですなぁ!貴女と紫垣順也の発言や発言する時の様子をよーく見ていましたが! 紫垣順也も貴女の事をかばっていましたよ」
「……っ!」
「もうお分かりでしょうか? 舩・木・梓・乃さん」
「どういう事ですか! 永瀬警部補。何が言いたいんですか!」
「そんなに感情をあらわにしないでください。怒っても無駄ですよ……。もう既に裏は取れているんですから!」

 舩木梓乃が事情聴取を受けている間、実は紫垣順也からも事情聴取をしていた。誘拐犯の豊科誠子が出頭する時に持ち寄った証言の中に、豊科工業の機密情報の横流しリークとその賄賂に関わった人物の中に舩木梓乃・紫垣順也の名前が入っている為に、二人から得る証言をり合わせ、確証を得て確実に収賄・贈賄罪及び、第一・第二の殺人事件の共犯者として逮捕する為に二人から同時に裏を取ろうと永瀬警部補らが動いていた。

「全・てわかりましたよ! 情報の横流しリークと賄賂に関して共犯関係にあった祐川勇司・紫垣順也、そして舩木梓乃。貴女らが報酬の分け前について揉めていた事。
 そして、仲間割れして祐川勇司を残りの二人である貴女と紫垣順也が殺害し、久屋大通駅の公衆トイレに遺棄した事。又、情報の横流しリークを聞き付けて独自に調べていた豊科忠嗣社長を殺害して隠蔽いんぺいを謀ろうとした事……」
「なっ……!」
「まだまだ続きがあります。祐川勇司と豊科忠嗣社長。二人の遺体には共通点があり、それが首にわずかに残った絞められた痕です。貴女が持っていた所持品を調べた所、鞄に入っていたイヤホンのコードから、被害者の血痕がわずかですがありました。紫垣順也の証言では、貴女ではなく、紫垣順也から二人に情報の横流しリークと賄賂を持ち掛けた、とあります。なのに貴女は紫垣順也をかばっている。互いが互いを庇い合う共犯関係なのは火を見るより明らか!
 よって、舩木梓乃と紫垣順也の二人を殺人の容疑で緊急逮捕する」
「うっ……そんな……」

 こうして、迷警部補の永瀬警部補らの作戦である「二人同時に事情聴取」が功を奏して、情報の横流しリークとそれに係る賄賂を始めとした理由に第一・第二の殺人事件が、舩木梓乃と紫垣順也の逮捕劇によって幕が下りた。
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