秘密の洋館

明智風龍

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前編 ここから全ては始まった

2話

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 守永は塾長達が操作するPCの画面をじーっと見つめていた。あの温厚な塾長が「……覚悟してください。」と声に畏怖いふまとわせていたのだ。その声からは静かな怒りすら感じられた。

 守永はつばをごくりと飲み込んでURLを踏んだ先を注意深く見つめた。そこには、一本の動画が存在し、塾長が既に閲覧していた為か慣れた手付きで動画をワンクリックした。

 動画には、競馬や競輪といった賭博場の様子が克明に映し出されていた。
 さらに、動画の中の人物は競馬や競輪に行き、有り金の大半を散財している様子が映し出されていた。

「ん? まさか……ここに映っている人って! 俺じゃねーかぁあ! しまったぁあ。」
「気付きましたか! ここに映し出された動画の中には守永先生、貴方が居ることに。」
「ひ、ひぃい。」

 動画の主は親友を交通事故で亡くし、の守永であったのだ。
 それにも関わらず、遊びで使い果たしたお金から交通費等を捻出ねんしゅつする為、「気晴らしに行った旅行中に財布を落としたかも知れない」と塾長らに話してお金を幾らか借りていたのである。いわゆる苦し紛れの嘘である。

「分かってますよね? 貴方がしたことを。」
「そうですよ、実際どうだったのですか?」
「は、ハイ。嘘でした!(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」

 塾長らが守永にどうして嘘をつき、お金を無心していた事実を隠していたか、問い詰めている間でさえ、PCの画面は開き続けていた。PCの画面には、塾長らがマウスを動かす手を止めていた事や、一通り動画を見終えた為に、固まっていた……はずだった。
 しかし、PCの画面が突如チカチカと発光して、動画の静止画面から家庭教師塾fight‐mens内をうつすカメラ映像に切り替わっていた。守永や塾長らがPCに向かっている光景がPCの画面上に映し出されていた。どうやら塾内に設置された監視カメラが遠隔操作された為らしい事を守永らは推察した。
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