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2章 学校編
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しおりを挟む「ちょ、笠井か橋口。こいつを見てくれ」
僕はおもむろに丸めた紙切れを二人に見るように促しながら、ノートPCのパスワード解除を手伝うように誘導した。
「これはなんだ?」
「なんなんだよ、この暗号は」
各々口に驚きを出す。
見ても分からないのか? と頭をぼりぼり掻きながらパスワードと思わしき文字と数字の羅列を打ち込んでいく。
やはり……ダメだ。
パスワードが解読できないからと。
自分じゃ、やっぱ無理だ、とさじを投げ掛けたそのとき。
「パスワードのメモ……なるほどな、貸してみ?」
と、パスワード予測の書かれた紙切れと打鍵する様子をジーッと眺めていた橋口が口を開き、ノートPCの真ん前の座席を奪い取った。
すると、僕が言うより先に笠井が口を開いた。
「お? なにか答えでも分かったの?」
橋口は僕の書きなぐった紙切れとノートPCのキーボードとを何度も行き来しながら、彼なりの解釈を話し出した。
「なんだろうな、先生のパスワードは? って考えたときさ、答えが出てこないか?」
「どういうこと?」
「え、わかんない。教えて?」
やっぱり、わかんないって、橋口。
考えて頭を回すより先に悲鳴が上がる。
僕も笠井も橋口の考えにはついていけてない。
橋口だけがこの状況についていけてるように思う。
◆◇◆◇
パスワードとの格闘が続いていく。
自習室内にはノートPCを前に固唾を飲んで見守る三人の息づかいとカタカタ、打鍵してはデリートを繰り返し、パスワード解除できません、という警告が立ち上がる音が響くだけだった。
15分から20分近くは経っただろうか。
ふと僕らは思い起こした。
「見張り! 見張りだよ!」
見張り、見張りをたてないとダメじゃないか、と意見は合致したようで僕らは興奮気味の声を合わせた。
「じゃあ、誰が見張りする?」
いつの間にか、笠井が会話の主導権を握っていた。
「俺が? やだよ!」
「僕も嫌だな」
「俺も嫌だよ……じゃあ、誰がやるんだよ、見張りを」
口を開く者は橋口、僕、笠井の順に移る。
笠井のところまで発言権が一周まわるも、笠井の発言で場に沈黙が生じた。
──見張りなんてやりたくない。
三人の思いは口を開かずとも明白だった。
今、口を開いた者が見張りを誰がやるか決める。
言いたくない。
僕は固く心に決めて沈黙を守ることにした。
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