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2章 学校編
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しおりを挟む先生が自習室を後にした今、教室内には僕一人と持ち主不在のノートPCぐらいだ。
それも、USB付きの。
口角は不敵な笑みで歪む。
それもそうだ、苦心していたのだから。
先生のUSBをこうして間近に視られる機会など、半永久的に来ないかのようにみえた。
しかし、目の前には確かにある。
この機会はいじめの発覚、相談、そして、先生の離席といういくつかの偶然のダイスが振るわれたことで初めて生じた奇跡だ。
この奇跡は生かさねばならない。
先生が戻ってくるまでに。
思考を何十にも回転させて、こうした考えを再確認すると、僕はノートPCを広げた。
ウィンッという起動音と共にWindowsが立ち上がる。
システムからパスワード解除を求められた。
確か、先生は──。
「と、ち、O、み、N、あ、ろ、2」のキーを打鍵していたはずだ。
(挿し絵参照)
「えぇっと、パスワード解除の条件は……パスワードの文字数は確か10文字で。パスワードに使える文字はっと……」
何度も適当に文字を入力して、パスワードに使用可能な文字の種類を狭めていく。
どうやらアルファベットとアンダーバーと数字、アットマークぐらいだと判明した。
漢字、ひらがな、カタカナは使えないらしい。
パスワード解除という無理難題にもみえる悩みだからか、「パスワードだから、当然か」と事実確認をしながら、つぶやき頭を爪でつい掻いてしまう。
ならば、次は、アルファベッドの大文字か小文字か、についての判断だ。
試しに大文字「T」を打とうとすると、「大文字は使用できません」と表示されて、小文字のまま入力されてしまう。
なるほど……。
ある程度、パスワード解除条件を整理すると、メモするものがないか、自分の着衣をまさぐって探しだした。
ここでようやく気づいた。
どうりで、いじめられたわけだ、と我ながら納得してしまった。
松葉中学では一応制服で来る規則があったのだが、あまりにUSBのことや笹野先生のことで頭がいっぱいになっていたがために、私服できてしまっていたのだ。
普段とは違う格好でこれば、目につくのは当たり前だ。
目立つからいじめの標的にされたのだろう。
まぁ、私服で来る生徒もいる。
不良って言われる分類の生徒たちだ。
単に規則を守らない生徒も増えてきて、私服自由の校風に変えたら良いんじゃないかって思うほど。
ズボンをまさぐった時にポケットから紙の切れ端が見つかった。
ちょうど先のとがってない短くなった鉛筆まで入れられていた。
だからか、指先にあたって少し痛みを感じたけど。
早速、ノートPCをいじるのを中断して、先生が打鍵した場所に書かれた文字をわすれる前に羅列して書き殴った。
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