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5. 終わらないエイプリルフール
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僕がトイレに行って戻ってくると老人は消えていた。さっき起きたことがまるで夢か幻みたいだった。不思議な体験をしたけれど僕はまだ半信半疑で、今日はエイプリルフールだから、老人は僕に嘘をついて手品が何かを見せたのだろうくらいに思っていた。だって僕が老人にお願いしたのは絶対に叶わないことだからだ。
家に帰り春休みの宿題を済ませると、24時前に眠りについた。
翌朝目覚めて枕元のデジタル時計を見た僕は驚いた。何と数字は4月1日のままだったんだ!
驚いてスマートフォンの日付も確認したが同じ4月1日。テレビをつけたらオーツの特集をやっているじゃないか。
僕は驚きの余り身動きが取れなかった。願いが現実になってしまうなんて。
また僕は両親と一緒に病院へ向かった。その日は弟と外を散歩しカフェテリアで彼の好きなパスタとパフェを奢った。半分残したのは僕が食べた。
弟は一度聞いたのと同じ話をした。彼や他の人は僕と同じで今日を繰り返しているという認識はないようだ。
僕はまた同じ嘘をついた。今度は前よりも誇張して、オーツが檻から逃げ出して大空を飛び回ったあと木の上に着地し、のんびりと毛繕いするのを見たと言った。
「退院したら見られる?」
弟の感激した様子に笑いが溢れた。
今日が続くということは弟の病はこれ以上進行しない。弟は僕の嘘を本当だと信じているし、2人で笑って他愛ない話をしていられる。僕は心からあの老人に感謝した。
次目覚めた時には4月2日に戻っているんじゃないかと不安に思ったが、また朝にデジタル時計に映る4月1日の文字を見てほっと胸を撫で下ろした。
僕は同じ日を数えきれないほど繰り返して、その度にオーツに纏わる嘘をついた。ある時は僕の頭の上を羽音を響かせて横切ったと、またある時は鼠を咥えて飛んでいたと。その度に弟は目を輝かせ自分もオーツのように自由になるぞと言った。
家に帰り春休みの宿題を済ませると、24時前に眠りについた。
翌朝目覚めて枕元のデジタル時計を見た僕は驚いた。何と数字は4月1日のままだったんだ!
驚いてスマートフォンの日付も確認したが同じ4月1日。テレビをつけたらオーツの特集をやっているじゃないか。
僕は驚きの余り身動きが取れなかった。願いが現実になってしまうなんて。
また僕は両親と一緒に病院へ向かった。その日は弟と外を散歩しカフェテリアで彼の好きなパスタとパフェを奢った。半分残したのは僕が食べた。
弟は一度聞いたのと同じ話をした。彼や他の人は僕と同じで今日を繰り返しているという認識はないようだ。
僕はまた同じ嘘をついた。今度は前よりも誇張して、オーツが檻から逃げ出して大空を飛び回ったあと木の上に着地し、のんびりと毛繕いするのを見たと言った。
「退院したら見られる?」
弟の感激した様子に笑いが溢れた。
今日が続くということは弟の病はこれ以上進行しない。弟は僕の嘘を本当だと信じているし、2人で笑って他愛ない話をしていられる。僕は心からあの老人に感謝した。
次目覚めた時には4月2日に戻っているんじゃないかと不安に思ったが、また朝にデジタル時計に映る4月1日の文字を見てほっと胸を撫で下ろした。
僕は同じ日を数えきれないほど繰り返して、その度にオーツに纏わる嘘をついた。ある時は僕の頭の上を羽音を響かせて横切ったと、またある時は鼠を咥えて飛んでいたと。その度に弟は目を輝かせ自分もオーツのように自由になるぞと言った。
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