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突然の告白
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11月12日(金)
今日は朝から色々あった。登校してすぐソラからメールが来て、教室と同じ二階にあるピアノホールに呼び出された。階段を上がってすぐの場所にある広いホールの隅にはピアノがあって、自由に弾けるようになっているから、ピアノホールって呼ばれている。
教室を出てホールへ続く廊下を歩いてたら、ホールから誰かが弾くピアノの音が聴こえてきた。ショパンのラ・カンパネラ。雨が庇を叩くみたいな、澄んだ美しい音色だ。
ソラはホールの真ん中に立っていた。
ホールに着いた途端に音楽が止んで、ピアノの前に座っていた先輩がこっちを見た。周りにいた十人くらいの二年生と、三年生の生徒たちの視線も一斉に私の方に向く。
ソラは私に笑いかけるでもなく、いつになく神妙な顔で立っている。
何が何だか分からないでいると、クラスメイトの一人が私の背中を押して、ソラと向かい合うように立たされた。
さっきは十人くらいしかいなかったのに、いつの間にかギャラリーが三十人くらいに増えている。見世物でも見るみたいに、友達と連れ立って駆けてくる生徒もいる。
これから始まることを、周りの子たちは知っているけれど私だけが知らない。面白いものを見るみたいな、含み笑いを浮かべた生徒たちの視線が突き刺さる。まるで映画『トワイライト』の世界ーー霧が立ちこめる森の中に一人きりで迷い込んでしまったみたいな、すごく異様な空気だった。
ソラは短めの黒い髪を手櫛で整えたあと、真っ直ぐに私を見た。何故か緊張しているみたいに見えた。
それから何かを決意したみたいに一度深呼吸して、ソラが口を開いた。
「シエル、あなたのことが好き。私の恋人になってください」
ギャラリーがざわつく。キャーッという黄色い歓声も聴こえる。
意味が分からなかった。これは私を揶揄うためのドッキリか何かだと思って、そうなのかってソラに訊いたら違うって言う。
好奇の視線が私たち二人に刺さる。私が次に何を言うか、みんな心待ちにしているみたいだった。風で木々が擦れ合うような囁きが耳に流れ込んでくる。フルートやピアノの音よりも、ずっと耳障りで不快な音だ。
何でソラはわざわざこんなことをしたんだろう。皆の見ている前で告白するなんて訳が分からない。こんなこと、半分以上やらせのテレビ番組でよくやる企画みたいで私は嫌いだ。何だか揶揄われたみたいで頭に来たし、がっかりした。一番の友達だったソラがこんなことをしたことに、何よりムカついた。だから私はこう返事をした。
「誰とも恋人になるつもりはない、例えあなたとも」
ソラの顔に悲しみと失望が宿る。たちまち彼女が泣き出して、野次馬たちが騒然となった。何人かの生徒が彼女の周りに駆け寄っていったけど、私は構わずそのまま踵を返して歩き出した。
今日は朝から色々あった。登校してすぐソラからメールが来て、教室と同じ二階にあるピアノホールに呼び出された。階段を上がってすぐの場所にある広いホールの隅にはピアノがあって、自由に弾けるようになっているから、ピアノホールって呼ばれている。
教室を出てホールへ続く廊下を歩いてたら、ホールから誰かが弾くピアノの音が聴こえてきた。ショパンのラ・カンパネラ。雨が庇を叩くみたいな、澄んだ美しい音色だ。
ソラはホールの真ん中に立っていた。
ホールに着いた途端に音楽が止んで、ピアノの前に座っていた先輩がこっちを見た。周りにいた十人くらいの二年生と、三年生の生徒たちの視線も一斉に私の方に向く。
ソラは私に笑いかけるでもなく、いつになく神妙な顔で立っている。
何が何だか分からないでいると、クラスメイトの一人が私の背中を押して、ソラと向かい合うように立たされた。
さっきは十人くらいしかいなかったのに、いつの間にかギャラリーが三十人くらいに増えている。見世物でも見るみたいに、友達と連れ立って駆けてくる生徒もいる。
これから始まることを、周りの子たちは知っているけれど私だけが知らない。面白いものを見るみたいな、含み笑いを浮かべた生徒たちの視線が突き刺さる。まるで映画『トワイライト』の世界ーー霧が立ちこめる森の中に一人きりで迷い込んでしまったみたいな、すごく異様な空気だった。
ソラは短めの黒い髪を手櫛で整えたあと、真っ直ぐに私を見た。何故か緊張しているみたいに見えた。
それから何かを決意したみたいに一度深呼吸して、ソラが口を開いた。
「シエル、あなたのことが好き。私の恋人になってください」
ギャラリーがざわつく。キャーッという黄色い歓声も聴こえる。
意味が分からなかった。これは私を揶揄うためのドッキリか何かだと思って、そうなのかってソラに訊いたら違うって言う。
好奇の視線が私たち二人に刺さる。私が次に何を言うか、みんな心待ちにしているみたいだった。風で木々が擦れ合うような囁きが耳に流れ込んでくる。フルートやピアノの音よりも、ずっと耳障りで不快な音だ。
何でソラはわざわざこんなことをしたんだろう。皆の見ている前で告白するなんて訳が分からない。こんなこと、半分以上やらせのテレビ番組でよくやる企画みたいで私は嫌いだ。何だか揶揄われたみたいで頭に来たし、がっかりした。一番の友達だったソラがこんなことをしたことに、何よりムカついた。だから私はこう返事をした。
「誰とも恋人になるつもりはない、例えあなたとも」
ソラの顔に悲しみと失望が宿る。たちまち彼女が泣き出して、野次馬たちが騒然となった。何人かの生徒が彼女の周りに駆け寄っていったけど、私は構わずそのまま踵を返して歩き出した。
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