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57. すぐ会いに行きます
しおりを挟む私がルーシーを好き?
好き?
Like?
Love?
ルーシーのことを好きか嫌いかと問われたら、もちろん好きだ。だがそれが友達としての好きなのかと問われたらよく分からない。
「どうしたの? リオ、大丈夫? 応答せよ!」
ミシェルが私の顔を覗き込み目の前で手をひらひらと動かした。
「好きってどういう気持ち?」
私は誰にともなく尋ねた。
「そうね……。自然に相手を目で追っちゃったり、側にいると何話していいか分からなくなったりするわ」
ジョーダンが先陣を切って答える。
「相手のことを放っておけないとか、何かをしてあげたくなっちゃうとか? あと無条件に会いたい、話したいって思うよね」
ミシェルが続く。
「例え凄く嫌なことでも……ヨガやピラティスでも、相手がやりたいと言えば一緒に行こうと思うな、俺の場合」
タケオが腕組みをして言う。
全て当てはまっている。
ルーシーが近くにいると、いや、遠くにいたとしても無意識に見てしまう。
何故だかルーシーを放って置けなくて、泣いている顔を見ると心がざわめいて何とかして笑わせなければと思う。
話したいことは沢山あるのに、側にいるとまるで話題が頭から抜け落ちたように見当たらなくなる。
ルーシーといると不思議と気持ちが安らいで、ずっとこうしていたいと思う。
もし彼女がミュージカルを観たいと言えば一緒に行くだろう。
そうか。
そういうことか。
今までこの不可解な感覚について深く考えたことがなかった。
あえて考えないようにしていたと言ったほうが正しい。
だけど今答えが出た。
私はルーシーが好きなのだ。
まるでネジの外れたパペットのようにぼんやりとしている私にジョーダンが声をかけた。
「私はずっと気づいてたけど、あなたは自分の気持ちに気づくのがかなり遅かったみたいね」
この胸の高鳴りも、火照る身体も、心が締め付けられるような感覚も、全てトリュフに入ったブランデーのせいと言い訳が出来たら良かった。これは酔いとは違う。少し似ているけれど違う。酒に酔っても、こんなに苦しくはならない。
「マジ? ねぇ、マジで好きなの?」
ミシェルが何故か目を輝かせて私の肩を揺する。私はミシェルの方を見て、ゆっくり一度頷いた。
3人が帰ったあとダイニングとキッチンの片付けをして、しばしの間ぼんやりと窓の外を眺めた。ルーシーは風邪をひいて寝込んでいると聞いた。ちゃんとご飯を食べれているだろうか。お世話をしてくれる人はいるのだろうか。彼女は一人暮らしのはずだ。きっとルーシーのことだから、具合が悪くて誰かに側にいてもらいたかったとしても、気を遣って助けを求められないに違いない。
気づいたら私は車の中にいた。エンジンをかけたところで財布も携帯も何も持ってきていないことに気づいた。ルーシーが心配なあまり手ぶらで家を飛び出してきてしまったらしい。流石に財布くらいは持っていかなければ。我にかえった私は一度車を降りて家に戻った。
また出かけたとなれば母は怒り狂うはずだ。だけど怒られたって構わない。行かずに心配し続けるよりも行ってルーシーの顔を直接見たい。
財布と携帯だけ持ってもう一度家を出た私は、エンジンをかけっぱなしの車に乗り込んでアクセルを踏んだ。
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