ロマンドール

たらこ飴

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48. ピザの晩餐

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 携帯で注文を取りピザが到着したあと、1階のだだっ広い大広間に並べられた長テーブルの1つに向かい合いLサイズのシーフードとポテトのピザを頬張った。ウミはピザならよく食べるのだと意外な台詞を吐いた。

「ピザって楽だからつい頼んじゃうんだよね。でも結局あんまり食べられなくて沢山余って処分に困って、家に来る友達や仕事仲間にあげちゃうんだけど」

「それなら進んであなたの家の残飯処理係になるわ」

 私が大きなピザを齧るのとほとんど同時に、ウミの白い手がおまけでついてきたペットボトルのジンジャーエールのキャップの口を切った。炭酸の弾けるプシュッという音が広間にこだまする。

 シャンデリアがぶら下がる天井、ホールの真ん中にある長いテーブルに向かい合う私たち。まるで二人だけの最後の晩餐みたいだ。時計は既に11時をまわっている。

「友達を泊めることなんて滅多にないんだけど、たまにはこういうのもいいね」と私よりもずっと遅いペースでピザを食べ進めるウミが言う。

「泊まりたい人はいっぱいいるだろうね」

 ウミと仲が良いという理由だけでゲーム部屋付きの豪邸をほぼ貸し切りできる私はかなりの幸せ者なのかもしれない。満足感に満たされながら私はピザの上に横たわるエビを手で摘んで口に放った。

 ウミ宅での楽しすぎる体験と空腹で加速した私の食欲によりピザが半分なくなったあたりで、私は今撮影している映画のことやチャドやルーカスや他のスタッフのこと、共演しているユニークな仲間たちのことについて話した。ウミは静かに微笑みながら話を聞いていた。

「何だか凄く生き生きしてるね」

 ウミは言った。

「あ、そう?」

 確かにあの映画の撮影が始まってから以前よりも毎日が充実していたし、前向きな気持ちで仕事に取り組めていた。撮影が始まってからはというよりかは、その少し前から感情に変化が現れつつあったのだが。ストレスといったらあの胸糞悪いニコルの顔を連日で拝まなければならないことくらいだ。

「以前のあなたはゲームで勝ったとき以外ほとんど笑わなかった。柔らかくなったのかもね、心が」

 ウミの安堵の表情を見て、きっと彼女なりに私のことを心配してくれていたのだろうと思い温かい気持ちになった。

 そこでふと、ウミは声を上げて笑うことがあるのだろうかという疑問が頭に浮かんだ。

「あなたは普段爆笑することとかある?」

 素朴な疑問にウミは首をかしげ、「言われてみればそんなにないかもな」と答えた。

「やっぱり。あなたってコメディドラマ観て腹抱えて笑ったりとか、そういうことなさそうだなって」

「あなたはある?」

「最近はよくある」

 子供の頃祖父と一緒にチャップリンの映画や『フルハウス』や『フレンズ』なんかのコメディドラマをよく観ていた。だが祖父が亡くなってからはそれらを観ることも、ドラマのオープニングの音楽を聴くことすら辛くなった。また観て笑えるようになったのはつい最近のことだ。

「そうだ、『ビッグバン・セオリー』って観たことある?」

 私は数年前に最終回を迎えたお気に入りコメディドラマをウミに勧めてみようと思い立った。彼女が笑うところを見たいという密かな願望もあった。

「タイトルだけ聞いた事はあるけど観たことはない」

「よし、じゃあこのあと観せてやろう」
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