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3. ロマンチストとリアリスト
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糸は、高校の天文学部の後輩だった。新入部員として入ってきた彼女に最初に話しかけたのは私だった。打ち解けるまで、大体三ヶ月くらいを要した。私たちの共通点は殆どなかった。私は洋楽が好きだけれど糸はほとんど音楽を聴かない。私は犬派、糸は猫派。私は文系で糸は理系。私はロマンチストだけれど、糸は現実主義者で冷めたところがある。だけど一緒にいるのが楽しかったのは、分かり合えない部分を埋める何かがあったからだろう。
部活の時はよく話したけれど、糸は私と二人きりで遊びたがらなかった。誘っても「用事がある」と断った。彼女はいつも私の目を見ないから、嘘なのか本当なのかすら分からなかった。
11月の半ば、インドのマッハラージャ大学への進学が決まった。私は中学の頃から、YouTubeでインド旅行をするバックパッカーや、インド在住の日本人の動画を観ては憧れをつのらせていた。インドの食文化や生活、人々や街の雰囲気全てが私を虜にした。だから、留学が決まったときはボリウッド映画のように歌いながら小躍りするくらいに舞い上がった。
糸が私を徹底して避け始めたのは、その頃だった。最初は気に障るようなことをしてしまったかな?と思っていたが、同じ部で唯一の男子である沖田はその考えを否定した。
「思うに、金沢はお前と離れるのが寂しいんじゃないか?」
「何で寂しいからって避けるわけ?」
「そこがアイツの難しいとこなんだよ、きっと」
理解ができなかった。寂しさが避けるという行動に直結する理由が。もうすぐ会えなくなるなら、残りの時間を有効に使って一緒に遊んだりして思い出を増やしたらいいじゃないか。
「どうしたらいいと思う?」
「そっとしとくしかないんじゃないか? 今は」
「そっか」
トムから逃げるジェリーみたいに避けられたら、思い出どころか話すらできない。もどかしい気持ちばかりが募った。
結局そのまま三月になって、まともに会話をすることもないままインドに渡った。日本を発つ日、糸は見送りに来なかった。やっぱりなと思いつつ、寂しかった。
部活の時はよく話したけれど、糸は私と二人きりで遊びたがらなかった。誘っても「用事がある」と断った。彼女はいつも私の目を見ないから、嘘なのか本当なのかすら分からなかった。
11月の半ば、インドのマッハラージャ大学への進学が決まった。私は中学の頃から、YouTubeでインド旅行をするバックパッカーや、インド在住の日本人の動画を観ては憧れをつのらせていた。インドの食文化や生活、人々や街の雰囲気全てが私を虜にした。だから、留学が決まったときはボリウッド映画のように歌いながら小躍りするくらいに舞い上がった。
糸が私を徹底して避け始めたのは、その頃だった。最初は気に障るようなことをしてしまったかな?と思っていたが、同じ部で唯一の男子である沖田はその考えを否定した。
「思うに、金沢はお前と離れるのが寂しいんじゃないか?」
「何で寂しいからって避けるわけ?」
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トムから逃げるジェリーみたいに避けられたら、思い出どころか話すらできない。もどかしい気持ちばかりが募った。
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