高層ビルでも星は隠せぬ

11. ゾンビ

　真白さんの見送りに、私は行かなかった。昨夜真白さんからこれまで楽しかったよ、元気でねという内容のいつもより長めのメールが届いたけれど、返事をしなかった。

　真白さんは今、空の上にいる。私は布団の中から出られずにいる。いっそこのまま即身仏になってデッドエンドでかまわない。真白さんは行ってしまった。はらわたが抜け落ちたみたいに、私の中は空っぽだ。

　それからの私は、抜け殻のようだった。

　真白さんがいなくなって、全ての風景も、音も、感触も、何もかもが命を失った無機質なものになった。中でも一番命を失ったようになっているのは、この私自身だ。これじゃあまるでゾンビだ。彼らと私が違うのは、何かを食べたいという明確な欲がないということくらいか。

　もしも恋する機能が備わってなかったら、もう少しくらいは楽だったのだろうか。食事も喉を通らないし、進んで人と喋る気にも笑う気にもなれない。ゲラゲラと大声をあげて笑っている人たちに、何が楽しいのだろう、こっちはまるで屍のように生きているのになどと心の中で八つ当たりをしてみても、何も変わらないことなど分かっているのに。