プラスマイナス

涙の理由②

　部屋のドアをノックして、声をかける。

「ケイティ、開けてもいい？」

　五秒ほどの間があって、「いいわよ」と返事が返ってくる。そっとドアを開け、部屋に入る。ベッドの縁に腰掛けていたケイティは、私の方を見て「さっきはごめんね」と苦笑いで謝った。

「ううん、いいの」

　ケイティの隣に腰掛け、言葉を探す私。心配で部屋に来たはいいものの、どう声をかけたらいいかわからない。彼女が泣いていた理由を聞いていいのか悪いのかも。

「ケイティ、もしも辛いことがあるなら...」

「何てことないの。ちょっとホームシックになっちゃっただけ」

　私の言葉を遮って笑顔を見せるケイティ。無理に笑っているように見えて、余計に心配になる。

「そっか……。それなら、家にテレビ電話をかけたらいいわ」

「そうね、そうする。あなたのことも紹介したいし」

「うん……」

　本当にホームシックで泣いていたのだろうか。別の理由があるんじゃないか。聞きたかったけれど聞けなかった。ケイティがこれ以上話したくなさそうだったから。

　立ち上がって、部屋を出る間際おやすみと声をかけた。ケイティも笑顔でおやすみと返してくれた。お風呂に入りベッドに入ったあともしばらく眠れず、悶々とした気持ちを抱え続けていた。