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たらこ飴

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買い物③

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「私、ケイティのことが好きなんだ」

 歩道を歩きながら打ち明けた私を、ミコトの褐色の目が見つめた。脇には若者向けのアパレルショップや雑貨屋、洋菓子店などが建ち並んでいる。

「マジ?」

「うん」

「じゃああの時の鼻血ってやっぱり...」

「あ...あれは違うの!!」

「いや違わないでしょ」

 そう、何も違わない。あの鼻血は完全に興奮して出たものだった。思い出すだけで恥ずかしい。穴があったら飛び込みたい。本人にバレていないだけいいが。

「確かにケイティっていい子だよね、すごく。あなたが好きになるのも分かるよ」

「でしょでしょ? ケイティって超凄いんだよ。演劇コンペ用に書いた脚本とかもう神がかってたし日本語覚えるのもすごい早くて笑った顔もめちゃくちゃキュートでプニプニしたお腹も二の腕もほっぺたも堪んなくて全力で抱きしめたくなっちゃうの。すごい優しくて時々天然なとことか最高だし寝顔もアザラシみたいで死ぬほど可愛くてこれはもはやヒーリング・エンジェルと呼んでしまっても過言では......」

 いつもの癖で興奮のあまり早口になってしまった私を、いかにもどん引いていますという引き攣り笑いで見つめるミコト。ああ、またやってしまった。幼馴染にまで引かれてしまうなんて。

「レンカ...今普通の人の話す速度の3.5倍速くらいになってたよ」

「ごめん」

「よっぽどケイティのこと好きなんだね」

「うん。だけど、トウマもケイティのことが好きみたいなのよ。まだ言えてないんだけど...」

「話したらいいじゃん? トウマに」

「だけど...。トウマは凄くいい人だし、ケイティを幸せにできると思う。ケイティには幸せになって欲しいのよ、もちろんトウマにも。二人がもし国際結婚とかなったとしてもそれはそれで...」

「レンカはそれでいいの?」

「え?」

「他人の幸せを願うだけでいいのかってこと。確かにトウマと付き合ったらケイティは幸せになれるかもしれない。だけど、あなたの幸せはどこにある?」

 いつになく真剣なミコトの眼差しと言葉に圧倒されて、返事をすることができない。完全に言葉を失っていた。彼女が言ったことが、あまりにも真実すぎて。

 考えてみれば、これまで自分を抑えることばかりだった。その生き方が当たり前になりすぎていた。フランスに一人で行って変わった部分、成長できたところは確かにあるけれど、考え方の根本は変わっていない。自分の幸せについて考えるのが、凄く怖いのだ。
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