猫の手、貸します。

りー

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猫の手、貸します。3話

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シルクはルカを見守りながら、他のメンバーの進捗状況の確認をしていた。
メイと楽しそうに演奏練習の手伝いをしているルカを見て、シルクも嬉しかった。
「ルカー!楽しんでるね。」
楽しそうな様子を見て、ルカに声をかけた。
「メイさんが色々教えてくれて、何とかお手伝いしてるよ。どこに行ってたの?」
ルカはメイと居て楽しんでは居たものの、まだ慣れてはいないので、シルクが帰ってきてホッとした様子だった。
「他のメンバーの進捗確認に行ってたよ。豪華な装飾にきっとルカも楽しめると思う。」
「楽しみだな!…じゃあまた練習のお手伝いにいくから、またね!」
ルカは不安を感じながらも、皆のために責任感を持って練習を手伝っているのを見て、シルクは何だか嬉しくなった。
「よし!僕も頑張るぞ!マール!仕上げに入ろう!」
シルクは気合を入れて、装飾の仕上げに取り掛かっていた。
このお祭りは赤を基調にしたデザインが多く、提灯の色や屋台の屋根の色、盆踊りの周りの横断幕なども朱色やワインレッドなど、色んな種類の赤色を使用していて見ている人に元気を与えられるようにと願いを込めてデザインしているようだ。

「合奏も良くなってるわ!あとは数をこなしていきましょう。皆、急に演奏が決まったのにも関わらず、一生懸命取り組んでくれてありがとう。」
短期間のうちに合奏でもミスがほとんどなく盆踊りの演奏もテンポはほとんど完璧になっていた。ルカは皆の頑張り具合に感動していた。
「リズム練習も一緒に出来て嬉しかったです。ほんとにありがとうございます!」
「ルカさんとメイさんのお陰で楽しめそうです。家に帰ったら自主練頑張ります!」
「僕も頑張ります!メイさん、褒めてくれますか?」
鉦を担当する山猫の1人がそう言った。
「偉いぞー!」
メイはその人の頭をわしゃわしゃと撫でながら笑っていた。
ルカはその様子を見て笑っていた。
最近は、人と関わることをずっと避けていたけど、久しぶりに楽しいと思えた。

「皆、今日のところは切り上げて帰ろう!」
シルクが皆にそう伝えると、各々の帰る準備を始めていた。
「ルカ、慣れない事して疲れたでしょ。」
「皆、帰るの?」
「そうだよ。体力を温存しないとね。」
「そっか、分かった。じゃあ帰ろう。」

シルクがルカの手を取ると、光に包まれて風が吹いた。
目を開けるとここに来るまでに見た景色が広がっている。
ピンクや緑色、黄色の光が交わってキラキラと輝いていて、2回目でもまだ慣れず、ルカは辺りをキョロキョロと見ていた。空中を移動するのも楽しくて、夢を見てるような感覚になる。
「この空間ってほんとに綺麗。」
「気に入ってもらえて良かった。ルカ、もうすぐ着くよ。」
あっという間に移動していて、気付いたら家の近くの通りが見えていた。
「あ!家の前の通りだ!」
「ここだったらすぐに家に着くからね。」
シルクが疲れているルカを気遣って、家の近くまで見送ってくれることが嬉しかった。

「シルク、送ってくれてありがとう。また会えるかな。」
ルカはまた会えなくなってしまうんじゃないかと不安を覚えていた。
「勿論!お祭りの日に迎えに来るよ。楽しみに待っててね。」
シルクが優しい声で言うと、ルカの頭を撫でた。
「分かった。シルク、またね。」
ルカはそう言うと、手を振った後に小走りで玄関へと向かった。

「ただいまー!」
ルカは玄関で大きな声で言うと、足早にリビングへと向かった。
お母さんは驚いた顔でルカを見ていた。
「おかえり。久しぶりに元気な声で話してるからびっくりした。何かあったの?」
ここ最近はずっと元気の無いルカを見ていたお母さんにとって、明るいルカの姿を見るのは久しぶりだった。嬉しい気持ちもありつつ、急激な変化に驚きと不安を隠せなかった。
「特に何もないよ。神社まで散歩出来たのが嬉しかったんだ。」
「神社まで?頑張ったね。疲れたでしょう。ゆっくり休んで。」
お母さんはルカを労った。
「ありがとう。着替えてくる。」
ルカは自分の部屋に向かった。

部屋に着くとルカは疲れを感じていた。パジャマに着替えて、ベッドにダイブするとゆっくり深呼吸した。
「怒涛な1日だったけど、楽しかった。」
そう言うとルカは深い眠りについた。

「…ルカ!」
声が聞こえて目を覚ますとお母さんが居た。
「いい加減起きて。ルカ、昨日はそのまま寝ちゃったのよ。」
ルカが目を覚ますと昼間だった。昨日あのまま起きなかったことにようやく気がついた。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。ちょっと散歩に行ってくる。すぐに帰ってくるね。」
「気をつけて行ってらっしゃいね。」
お母さんはルカを見送った。

ルカは昨日の出来事が本当に起きたのかを確かめるため、神社へと歩き出した。
「あの世界は夢だったんじゃないか。本当に起こったのかを確かめたい。」
ルカはシルクに再会できて、妖怪の世界で楽しく過ごした事が半ば信じられなかった。だからこそシルクと会えた神社に行くことにした。
「昨日と同じ昼間だし、本当に起きたことならきっと会えるはず。」
考えながら歩いているとあっという間に神社に着いた。
強い風が吹き、目を開けると目の前にシルクが居た。

「やっぱり神社に来たね。昨日起きた出来事は夢じゃないよ。」
猫又の姿でシルクはルカの前に座っていた。
ルカは驚いた後に嬉しそうな表情になった。
「現実だったんだ。嬉しい。」
「ルカを迎えに来たんだ。一緒に来てくれる?」
ルカは大きく頷き、シルクの手を握った。
「よし、それじゃあ移動するよ。」
ルカとシルクは妖怪の世界へ移動した。

移動した後に2人は妖怪の世界の時の格好に変わっていた。神社はお祭りの準備が整い、神社が華やかな赤色に装飾されている。
美しい光景が広がっていて、芸術作品のようだ。
「綺麗ー!」
ルカは感動している。シルクはそんなルカの姿を嬉しそうに見守っていた。
「よし。じゃあ盆踊りが開催される場所へ行こう。もう準備が整ったんだ。」
シルクがルカの手を握ると、階段を上った。境内には沢山の妖怪たちで溢れかえっている。
「はぐれないように気をつけて。」
シルクがとてもたくましく感じて、ルカはかっこいいなと思った。

「ルカ、着いたよ!」
盆踊りの演奏が辺りに鳴り響いていた。
一緒に演奏練習を行なった山猫の皆が一生懸命に演奏をしていた。
「ルカちゃん、来てくれたんだね。本番が始まったよ。皆、上手に演奏してるね。」
メイがルカに話しかけた。メイは嬉しそうに楽器隊を見守っている。
「メイさん、素晴らしいですね。皆、堂々と演奏していて楽しそうです。」
「ルカちゃんのお陰だよ。無事に出来て本当に良かった。ありがとうね。」
メイはルカの肩をポンと叩き、歩き始めた。
「シルク、今回の依頼は大成功よ。氏神様が呼んでいたわ。ルカと一緒に山の頂上へ行って。」
「メイ、ありがとう。今から行ってくる。」
「2人とも気をつけて行ってらっしゃい。」
シルクとルカはメイに手を振って、山の頂上へと向かった。

「ルカ、大丈夫?あと少しで着くから。」
山の頂上というので、とても遠いのかと思ったが思ったよりも近かった。
でも坂道がきつく、妖怪達が溢れかえっているので歩きづらかったので、とてもハードに感じていた。
「氏神様に会えるなら、頑張るよ!」
ルカは氏神様に会える楽しみが勝っていて、興奮して張り切っていた。

「ルカ、着いたよ。僕の後ろを歩いて。」
「…うん!分かった。」
先程の賑やかな雰囲気からは想像出来ないくらい辺りは静まり返っていた。
シャラララという綺麗な鈴の音が鳴り響き、黄色い光がキラキラと輝き始めた。
ルカはシルクから聞いた話の通りだと思い、目を見開いてしっかりと見ていた。
「シルク、ルカ。来てくれたね。今回はお祭りの運営をしてくれてありがとう。無事にお祭りの当日を迎える事が出来たよ。」
「氏神様、お呼びいただきありがとうございます。微力ながら、お手伝い出来て光栄です。」
シルクは丁寧に氏神様に話している。ルカは優しくて温かい氏神の声を聞いて何だか癒されるような気持ちになった。
「氏神様、初めまして。ルカと申します。こんなに素晴らしいお祭りに参加出来て楽しいです。これからも依頼を頑張りますので、よろしくお願いします!」
ルカは緊張していたが、精一杯の感謝を伝えた。
「ルカ、手を出して。」
氏神様がルカにそう言うと、小さな黄色い光をルカの手に渡した。宝石のような小さな光が、キラキラと輝いている。
「綺麗…。これは何でしょうか?」
ルカはあまりにも美しい光から目が離せなかった。
「これはルカの魔力だよ。依頼をこなすと魔力が与えられる。この魔力が大きくなると、自分で好きな時に魔力が使えるようになるんだ。」
「魔力...。凄い。ずっと見ていたい。」
ルカは感動していた。自分がお手伝いしたことで、魔力を与えられた。自分のやったことが周りに影響力を与えていることが嬉しかった。
「これからもよろしくね。ルカ。」
「よろしくお願いします!」
「シルク、早速だけど河童が依頼したいと言っているんだ。これから河童の池へと向かってもらえるかな。」
「はい。分かりました。」
「屋台で胡瓜を買っていってあげて。どうかよろしくね。」
氏神様が優しくそう言うと、シャラララという音と共に光が消えていった。

「ルカ、これからも依頼を一緒にこなしていこう。僕がフォローするから、不安な事があったら言ってね。」
シルクは氏神様にルカを会わせることが出来て嬉しかった。
「シルク、ありがとう。頑張るね。」
ルカは充実感を感じて、幸せな気持ちになった。
「坂道を下って、胡瓜串を買ってから河童の池へ向かおう。」
「うん!胡瓜串は何本買おうかな?」
ルカは微笑みながら、シルクに問いかけた。
2人は胡瓜串を買いに屋台へと向かったのだった。


※こちらはnote、アルファポリス、小説家になろうで公開しています。
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