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第8章 無駄な経費削減編

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晏寿と秀英が持ち場に帰り着いた時には、すでに景雲が戻ってきていた。

「遅いぞ、二人とも」
「随分と厠から早く戻ったのだな」

びしっと指摘する景雲の態度に秀英は呆れる。
すると景雲は不敵な笑みを浮かべ、晏寿を手招きした。
晏寿が首を傾げながら近づくと、耳元で囁く。

「せっかく二人の時間を作ってやったんだ。無駄にはしていないだろうな?」
「!」

晏寿はばっと景雲から距離を置き、頬を赤らめながら自身の口元を手で覆う。その反応で、上手くいったことを推測した景雲は更に笑みを深めた。

「お前たちはわかりやすすぎるんだよ」

にやにやする景雲に、段々と苛立ちが募り始めた晏寿は苦し紛れに

「仕事終わらせてくれてありがとう!」

と叫ぶのだった。


「…あれ?」

景雲が済ませたという仕事の書類を確認していると、景雲の筆跡とは違うものを見つける。
景雲の筆跡は文字を流れるように書き、線の太い・細いを使い分けている。
しかし、晏寿が見つけた書類は最初から最後まで同じ墨色で大きさも整っている。
晏寿はすぐにこの書類を作成したのは、秀英だと気づいた。

秀英はまるで自分は関与していないように言っていたが、何割かは行っている事実に晏寿は秀英にも感謝を伝えなければと顔を上げた。
しかし、秀英は既に自分の仕事を行っており、他の人と打ち合わせしていた。

機会を逃してしまい、残念な気持ちで秀英の横顔を見やる。

通った鼻筋、キリッとした目元と眉、真剣な表情をしている秀英を思わず見つめていた。
すると視線に気づいたのか秀英がこちらを向き、目が合い晏寿の心臓が跳ねる。

慌てて視線を外し、邪念を払うように頭を振る。

そんな晏寿の奇妙な行動に秀英は首を傾げるのだった。


自身の仕事は二人が片付けてくれたため、晏寿は後輩達に今後の武官達の食事について引き継ぎを行った。
今後の献立は昴全と最低五日分は考え、必要な食材はこちら側から調達することにした。こうすることで以前のような横流しや物資不足を無くし無駄な経費をかけないようにした。

「あと、削減できそうなところは…」

手元の資料に目をやりながら、次に行うべきことを頭の中で組み立てていく晏寿であった。
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