上 下
113 / 133
第8章 無駄な経費削減編

1

しおりを挟む
秀英に後で話すとは言ったものの、話す場所に困っていた。
王宮内で話せばどこで聞かれているかわからない状況になるし、晏寿の家には胡蘭と玲峯がいる。
玲峯は口止めすれば黙っていられるだろうが、胡蘭はついうっかりが恐ろしい。

晏寿は頭を悩ませていた。

「ならうちの屋敷に行くか?」
「伯家のお屋敷?」
「離れもあるし、人はらいもできる」

伯家の屋敷には一度入口までは行ったことがあるが、とても大きかったことを覚えている。
離れがあるということも納得できた。
晏寿は秀英の言葉に甘えて伯家へと行くことにした。

「鈴はうまくやって行けそうか?」

歩く道中、秀英は自分の家から出した使用人のことを尋ねてきた。

「すごく気が利くし、配慮が細かいよ。まだ一日目でわからないことだらけなはずなのに、すぐ先回りして仕事してくれるから助かっちゃった」
「元々鈴は気配りの上手い娘だ。だから今回のことに推薦したというのもある。それに幼い頃から伯家に仕えてきて伯家以外のことを知らないから、今後のことを考えれば一度でも外の世界を知っておいたほうがいい」
「…なんだか父親みたい」

ぼそりと言った言葉だったが秀英の耳には届いていた。
ふと、柳家が落ちぶれていった原因は晏寿の父の死だということを秀英は思い出し、晏寿に問いかける。

「晏寿の父上はどんな方だったんだ?」
「父様?そうね、小さい時の記憶しかないけど、厳しくも優しい人だったと思う」
「その話も後で聞いてもいいか?」
「きっと面白い話ではないよ?」
「晏寿のことなら何でも知りたい。晏寿の父上とは会うことができないからなお話を聞きたい」

秀英は至って真面目な様子なため、晏寿は言葉を詰まらせる。
真っ直ぐ前を向く秀英の横顔を見て、顔が赤くなるのを感じるのだった。


秀英の屋敷に到着し、晏寿は離れに通された。
茶の準備がされたところで、茶を持ってきた使用人に秀英は誰も立ち寄らないようにと指示を出していた。

使用人が恭しく出ていくまでをぼんやりと見ていた晏寿は、やはり自分の家とは違うということを感じていた。

「どうかしたか?」

ぼんやりとしていた晏寿に首を傾げながら秀英が声をかける。

「いや、うちとは違うなーって思って。うちは母屋しかないし、お茶も自分で用意するから」
「離れがあっても管理や維持が必要だ。それに何でも自分でできるほうが俺はすごいと思う。少なくとも俺は茶は淹れられない」

椅子に腰掛けながら、晏寿の感じていた違和感のようなものを一蹴する秀英。
帰宅中の会話といい、とことん自分のことを持ち上げてくる秀英を今度はむず痒く感じる。

そんな気持ちを知ってか知らずか、秀英は真っ直ぐと晏寿を見つめながら聞いてきた。

「昼間、誤魔化したことについて聞かせてもらおうか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

処理中です...