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第7章 晏寿の奮闘編
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「それにさ、お見合いの席で景雲の友人で私に、その、気があるって言ってたじゃない?誰かもわからないのに、私はどうすることもできないよ」
「あーそんなこと言ったな。大丈夫だ。気にするな」
「でも…」
「それ秀英だから」
「は!?」
伝えてなかったか?と悪びれる素振りもなく景雲は宣う。
晏寿は開いた口が塞がらない。
「これで晏寿の中で一人は絞れただろう?他はどんな奴なんだ?」
景雲はにやりとしながら晏寿を伺う。これはこの話を話の種にする気だと晏寿は直感する。
京雅のことを話してすっきりしたい気持ちもあるが、如何せん相手が次期国王となると事が大きすぎる。
しかも景雲に話したらあっという間に広まってしまうのではないかという不安もあった。
故に。
「内緒!」
そう叫んで逃げることにした。
小走りで自部門に戻って来ると、秀英が難しい顔をして書類を見ていた。
「秀英、ただいま」
「…ああ、晏寿おかえり。何をそんなに慌てている?」
「ちょっとね。それより難しい顔してるけど、そんなに難解な案件?」
晏寿が秀英の手に合った書類を見ようと体を寄せると、秀英はそっと見やすいように寄せた。
「国王の謁見が行われる予定だが、国王の体調が思わしくないのが引っかかっている」
「確かにこの謁見って長時間行われるものね。心配だわ」
「国王の代わりに殿下をと考えたが、時期尚早ではないかとも感じてならない」
「京雅殿下か…」
京雅の話が出るとどうしても頭を過ぎるのは、教育係として仮妃となっていた日々である。
京雅は自分がいなくなってからも勉学を怠っていないだろうかとか、紅露と喧嘩をしていないだろうかとか考えてしまう。
「そういえば秀英、紅露は元気にしてる?」
すぐ近くにある秀英の顔を見る。
晏寿にしてみれば繋がっている話であるが、秀英からしてみればいきなり脈絡のない妹の話が出てきたので、頭が混乱する。
「紅露は以前晏寿が教育係を務めた家からまだ戻って来ないが…なぜ今紅露の話なんだ?」
秀英に言われて、自分が口を滑らせてしまったことにはっと気づく。
「な、なんとなく…じゃ、納得してくれないわよね?」
「そうだな」
「ここでは話せないの!後で話すから今は勘弁して!」
必死に手を合わせる晏寿に疑問を持ちつつも秀英は頷くしかなかった。
秀英の肯定に晏寿はほっとした表情を見せる。
ゆるっと頬を緩めた晏寿に秀英は内心でぐっときていた。
「二人は仲がいいんだねぇ」
不意に第三者の声に振り向くと、そこには杜補佐が立っており、言われて初めて晏寿と秀英は肩が触れ合うほどの距離にいることに気づき、頬を赤らめるのだった。
「あーそんなこと言ったな。大丈夫だ。気にするな」
「でも…」
「それ秀英だから」
「は!?」
伝えてなかったか?と悪びれる素振りもなく景雲は宣う。
晏寿は開いた口が塞がらない。
「これで晏寿の中で一人は絞れただろう?他はどんな奴なんだ?」
景雲はにやりとしながら晏寿を伺う。これはこの話を話の種にする気だと晏寿は直感する。
京雅のことを話してすっきりしたい気持ちもあるが、如何せん相手が次期国王となると事が大きすぎる。
しかも景雲に話したらあっという間に広まってしまうのではないかという不安もあった。
故に。
「内緒!」
そう叫んで逃げることにした。
小走りで自部門に戻って来ると、秀英が難しい顔をして書類を見ていた。
「秀英、ただいま」
「…ああ、晏寿おかえり。何をそんなに慌てている?」
「ちょっとね。それより難しい顔してるけど、そんなに難解な案件?」
晏寿が秀英の手に合った書類を見ようと体を寄せると、秀英はそっと見やすいように寄せた。
「国王の謁見が行われる予定だが、国王の体調が思わしくないのが引っかかっている」
「確かにこの謁見って長時間行われるものね。心配だわ」
「国王の代わりに殿下をと考えたが、時期尚早ではないかとも感じてならない」
「京雅殿下か…」
京雅の話が出るとどうしても頭を過ぎるのは、教育係として仮妃となっていた日々である。
京雅は自分がいなくなってからも勉学を怠っていないだろうかとか、紅露と喧嘩をしていないだろうかとか考えてしまう。
「そういえば秀英、紅露は元気にしてる?」
すぐ近くにある秀英の顔を見る。
晏寿にしてみれば繋がっている話であるが、秀英からしてみればいきなり脈絡のない妹の話が出てきたので、頭が混乱する。
「紅露は以前晏寿が教育係を務めた家からまだ戻って来ないが…なぜ今紅露の話なんだ?」
秀英に言われて、自分が口を滑らせてしまったことにはっと気づく。
「な、なんとなく…じゃ、納得してくれないわよね?」
「そうだな」
「ここでは話せないの!後で話すから今は勘弁して!」
必死に手を合わせる晏寿に疑問を持ちつつも秀英は頷くしかなかった。
秀英の肯定に晏寿はほっとした表情を見せる。
ゆるっと頬を緩めた晏寿に秀英は内心でぐっときていた。
「二人は仲がいいんだねぇ」
不意に第三者の声に振り向くと、そこには杜補佐が立っており、言われて初めて晏寿と秀英は肩が触れ合うほどの距離にいることに気づき、頬を赤らめるのだった。
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