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第7章 晏寿の奮闘編
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「いいんじゃないか、三日なら。説明があったほうが覚えやすいし」
「そうよね!」
「しかし!」
味方と思っていた矢先に景雲からビシッと言われる。
「定刻になったら迎えに行くからな。居残りは認めないぞ。それならいいだろう、秀英?」
「わかった。その条件なら認めよう」
異論は認めないと景雲と秀英が結託する。晏寿は条件付きではあったが納得するほかなかった。
翌朝、早くから景雲を訪ねて来た青年がいた。
そこそこに身長のある景雲だが、その景雲よりも頭一つと出た大男である。
景雲はその青年を半眼で見上げる。
「昂全、伝えた時刻よりだいぶ早いぞ」
「…目が覚めたので」
身体の大きさとは違い、声は蚊の鳴くような声である。
「景雲、どちら様?」
「ああ、こいつが昨日話していた料理人だ。名前は昂全」
「っす」
晏寿の問いかけに景雲が答え、昂全が短く挨拶をする。
晏寿が見上げると首が痛くなりそうなくらいの身長差である。
「私は晏寿。今日から三日間で教えるからよろしくね」
「…うす」
「このように口数が少ない奴だが腕は確かだ。晏寿、よろしく頼む」
「わかったわ」
晏寿はひとまず秀英が連れてくると言っていたもう一人を待つことにした。
だが、景雲は早々に自分の仕事にいき、昂全のことは放置で手持ち無沙汰である。
昂全を不憫に思った晏寿は、昂全に提案する。
「先に仕事場の視察しておかない?」
「いいんすか?」
「うん、もう一人にはそっちに来てもらうことにしてさ。昂全君することないでしょ」
「そっすね」
「なら決まりー」
晏寿は近くにいた文官に秀英とその連れは調理場に行くよう伝え、昂全と調理場へと向かった。
道中昂全が何かを話すわけでもなくあっという間に着き、「ここだよ」と晏寿が扉を開けた。
「…!」
中では下働き達が包丁などの道具の準備や支度などに追われて、慌ただしく動いていた。
昂全は場を目の当たりにして固まっている。
「あれ、文官ちゃん今日はごついの連れてきたな」
「越さん!こちらは今日から調理長見習いの昂全君よ。よろしくね」
越と呼ばれた男は手を止めて、口をぽかんとさせながら昂全を見上げる。
そしてにかっと笑いかけた。
「なんでもいいや、仕事さえやってくれりゃあ。よろしくな!」
「…っす」
「声小さいなー」と昂全は背中をばしばし叩きながらも迎えられる。
戸惑っているようではあったが、不愉快という様子ではなかったので晏寿もほっとする。
「そうよね!」
「しかし!」
味方と思っていた矢先に景雲からビシッと言われる。
「定刻になったら迎えに行くからな。居残りは認めないぞ。それならいいだろう、秀英?」
「わかった。その条件なら認めよう」
異論は認めないと景雲と秀英が結託する。晏寿は条件付きではあったが納得するほかなかった。
翌朝、早くから景雲を訪ねて来た青年がいた。
そこそこに身長のある景雲だが、その景雲よりも頭一つと出た大男である。
景雲はその青年を半眼で見上げる。
「昂全、伝えた時刻よりだいぶ早いぞ」
「…目が覚めたので」
身体の大きさとは違い、声は蚊の鳴くような声である。
「景雲、どちら様?」
「ああ、こいつが昨日話していた料理人だ。名前は昂全」
「っす」
晏寿の問いかけに景雲が答え、昂全が短く挨拶をする。
晏寿が見上げると首が痛くなりそうなくらいの身長差である。
「私は晏寿。今日から三日間で教えるからよろしくね」
「…うす」
「このように口数が少ない奴だが腕は確かだ。晏寿、よろしく頼む」
「わかったわ」
晏寿はひとまず秀英が連れてくると言っていたもう一人を待つことにした。
だが、景雲は早々に自分の仕事にいき、昂全のことは放置で手持ち無沙汰である。
昂全を不憫に思った晏寿は、昂全に提案する。
「先に仕事場の視察しておかない?」
「いいんすか?」
「うん、もう一人にはそっちに来てもらうことにしてさ。昂全君することないでしょ」
「そっすね」
「なら決まりー」
晏寿は近くにいた文官に秀英とその連れは調理場に行くよう伝え、昂全と調理場へと向かった。
道中昂全が何かを話すわけでもなくあっという間に着き、「ここだよ」と晏寿が扉を開けた。
「…!」
中では下働き達が包丁などの道具の準備や支度などに追われて、慌ただしく動いていた。
昂全は場を目の当たりにして固まっている。
「あれ、文官ちゃん今日はごついの連れてきたな」
「越さん!こちらは今日から調理長見習いの昂全君よ。よろしくね」
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そしてにかっと笑いかけた。
「なんでもいいや、仕事さえやってくれりゃあ。よろしくな!」
「…っす」
「声小さいなー」と昂全は背中をばしばし叩きながらも迎えられる。
戸惑っているようではあったが、不愉快という様子ではなかったので晏寿もほっとする。
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