上 下
108 / 133
第7章 晏寿の奮闘編

20

しおりを挟む
「いいんじゃないか、三日なら。説明があったほうが覚えやすいし」
「そうよね!」
「しかし!」

味方と思っていた矢先に景雲からビシッと言われる。

「定刻になったら迎えに行くからな。居残りは認めないぞ。それならいいだろう、秀英?」
「わかった。その条件なら認めよう」

異論は認めないと景雲と秀英が結託する。晏寿は条件付きではあったが納得するほかなかった。


翌朝、早くから景雲を訪ねて来た青年がいた。
そこそこに身長のある景雲だが、その景雲よりも頭一つと出た大男である。
景雲はその青年を半眼で見上げる。

昂全こうぜん、伝えた時刻よりだいぶ早いぞ」
「…目が覚めたので」

身体の大きさとは違い、声は蚊の鳴くような声である。

「景雲、どちら様?」
「ああ、こいつが昨日話していた料理人だ。名前は昂全」
「っす」

晏寿の問いかけに景雲が答え、昂全が短く挨拶をする。
晏寿が見上げると首が痛くなりそうなくらいの身長差である。

「私は晏寿。今日から三日間で教えるからよろしくね」
「…うす」
「このように口数が少ない奴だが腕は確かだ。晏寿、よろしく頼む」
「わかったわ」

晏寿はひとまず秀英が連れてくると言っていたもう一人を待つことにした。
だが、景雲は早々に自分の仕事にいき、昂全のことは放置で手持ち無沙汰である。
昂全を不憫に思った晏寿は、昂全に提案する。

「先に仕事場の視察しておかない?」
「いいんすか?」
「うん、もう一人にはそっちに来てもらうことにしてさ。昂全君することないでしょ」
「そっすね」
「なら決まりー」

晏寿は近くにいた文官に秀英とその連れは調理場に行くよう伝え、昂全と調理場へと向かった。

道中昂全が何かを話すわけでもなくあっという間に着き、「ここだよ」と晏寿が扉を開けた。

「…!」

中では下働き達が包丁などの道具の準備や支度などに追われて、慌ただしく動いていた。
昂全は場を目の当たりにして固まっている。

「あれ、文官ちゃん今日はごついの連れてきたな」
えつさん!こちらは今日から調理長見習いの昂全君よ。よろしくね」

越と呼ばれた男は手を止めて、口をぽかんとさせながら昂全を見上げる。
そしてにかっと笑いかけた。

「なんでもいいや、仕事さえやってくれりゃあ。よろしくな!」
「…っす」

「声小さいなー」と昂全は背中をばしばし叩きながらも迎えられる。
戸惑っているようではあったが、不愉快という様子ではなかったので晏寿もほっとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

処理中です...