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第7章 晏寿の奮闘編

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晏寿も隠しても仕方ないとばかりに疲れていることは認めた。
誠真はふむ、と考えたあと懐から小さな懐紙の包みを取り出した。

「これ貰い物なんだけど、甘くて美味しいからこっそり食べて。あと無理しないようにね」

包みを晏寿の手に乗せ、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
いきなり物をもらった晏寿は困惑し、誠真と手のひらの懐紙を交互に見るが、その間に誠真は颯爽と「それじゃ」と行ってしまった。

残された晏寿は手のひらの懐紙をゆっくりと開き、中を確認する。

「月餅?」

中には月餅が一つあり目を丸くするも、もう一度懐紙で丁寧に包み後で有難くいただこうと思うのだった。


晏寿が自分の持ち場に戻ると、そこに秀英と景雲の姿はなかった。
まだ心の整理がついていなかったため、内心ほっとする。

そして、自分の仕事をしようとするとそれが片付いていることに気づく。

「あれ…報告書書かなきゃいけなかったんだけどな」
「報告書なら秀英君が提出していたよ」
「え、そうなんですか?」

晏寿の呟きに近くにいた杜補佐が答える。報告書を書かなくてよくなったのならと、今度は凱と甜丈のところに向かうと二人からも晏寿は言われる。

「少し前に景雲殿からこれを先に済ませるよう言われました」
「僕も書庫に資料はあると言われて進めています」
「そっか…」

晏寿は秀英と景雲が自分の仕事を済ませてくれていることに面食らう。
二人にお礼を言わなくてはと、二人の姿を探す。

「秀英と景雲はどこに行ったか知ってる?」
「お二人は今李大臣のお部屋で次回の仕事の打ち合わせだそうです」
「打ち合わせか。ならまだ出てこないね。ありがとう」

二人が出てくるのを待ちつつ、晏寿は別の仕事を進めようとするのだった。


結局二人が儀円の部屋から出てきたのは、夕刻になってからだった。
ずっと扉が開くのを待っていた晏寿はなかなか出てこない二人にやきもきしながら仕事をすることとなり、全然集中ができなかった。

部屋から出てきてもなお二人は流れで話しており、声をかけられるような雰囲気ではない。
晏寿はずっと待ちわびていたものの、二人の物々しい空気に怯んでしまう。
しかしここで引き下がるわけにはいかないと、意を決して声をかけた。

「秀英!景雲!」

突然話かけられて驚く顔をするも、晏寿とわかると景雲は表情を緩める。秀英はというと朝のことを引きずっていてか顔が強ばる。

「晏寿戻ってたのか」
「うん、二人に話があって」

晏寿がそう言うと、何となく察する景雲が「場所を変えよう」と提案し、普段物置に使われている部屋へとやってきた。
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