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第7章 晏寿の奮闘編
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「…好き放題言いやがって!こんなところ辞めてやる!」
一人が負け惜しみで叫び、他の二人も我に返ったように「そうだ!」と呼応する。
「どう困るのはお前らだ!金にならねぇなら辞めたほうがましだ!」
そう言い残して、男達は逃げるように出ていった。
急に静まり返った部屋で、晏寿はずっと秀英に支えてもらっていた事に気づく。
「秀英、ありがと…場も納めてくれて」
「いや、勝手な振る舞いに頭にきただけだ。しかし武官達の食事問題をどうするか」
「それは私が作るよ。他にできる人いないし」
晏寿の発言に秀英の眉がぴくりと動いた。
晏寿はその事に気付かず、仕事に戻ろうとする。
「…どうしてお前はそうなんだ?」
「?秀英…?」
「何故一人で全てを行おうとする?今晏寿は自身の業務に陽明から引継がれた業務で人の倍は働いている。そして更に武官達の食事まで作るだと?何故他に頼ろうとしない?」
「だってそれは私が蒔いた種だから…」
「全てが中途半端になる懸念はしていないのか?」
「ちゃんと全てやり切るわ!」
乗り込んできた男達には冷静に対応していたのに、晏寿と秀英のやりとりはどんどんと過熱していく。
周りもどうやって止めたらいいのかわからず、思わず近くにいなかった景雲を探しにいくほどだった。
「景雲殿!こちらです!」
「あいつらはまた…」
甜丈が景雲を呼び、なおも二人の口論は激しくなる。
景雲はその姿を見て、呆れるしかなかった。
「さっきは私の実力を認めてくれたじゃない!」
「もちろん晏寿の頑張りはわかっている。だが時と場合があるだろう!」
そろそろ止めようと景雲が割って入ろうとした矢先だった。
「そうやって一人で溜め込む晏寿のことは、嫌いだ」
「あ」
「っ!」
晏寿の目が大きく見開かれる。景雲はまずいという表情で二人を見た。
発言した秀英も自分の言葉に驚いており、ぐっと手を握ると踵を返し「頭を冷やしてくる」と言って出ていった。
晏寿は暫く動かなかったが、腰を抜かしてその場にへたり込む。
景雲が近づき、晏寿の肩を叩く。
「晏寿…?」
「…、ぅう、けいうんー!」
景雲の顔を見ると晏寿の目からぶわっと涙が溢れ出した。
いきなり泣き出した晏寿に景雲もわたわたとする。
「だ、大丈夫か?」
「しゅ、しゅぅえいが、き、嫌いって…!」
わぁあっと大きな声を上げて泣く晏寿に周囲もまさか大泣きするとは思ってもみなかったため、皆が慌て出す。
「秀英も本心ではないさ!本人も驚いた顔をしていた!」
「で、でもしゅえい、は、うそ言わな、もん」
顔をぐしゃぐしゃにしながら泣く晏寿には、先程まで男達に憮然と立ち向かっていた姿は全く見られなかった。
「とにかく落ち着け。でないと秀英と話もできない」
「ぅ…ぐずっ…」
一人が負け惜しみで叫び、他の二人も我に返ったように「そうだ!」と呼応する。
「どう困るのはお前らだ!金にならねぇなら辞めたほうがましだ!」
そう言い残して、男達は逃げるように出ていった。
急に静まり返った部屋で、晏寿はずっと秀英に支えてもらっていた事に気づく。
「秀英、ありがと…場も納めてくれて」
「いや、勝手な振る舞いに頭にきただけだ。しかし武官達の食事問題をどうするか」
「それは私が作るよ。他にできる人いないし」
晏寿の発言に秀英の眉がぴくりと動いた。
晏寿はその事に気付かず、仕事に戻ろうとする。
「…どうしてお前はそうなんだ?」
「?秀英…?」
「何故一人で全てを行おうとする?今晏寿は自身の業務に陽明から引継がれた業務で人の倍は働いている。そして更に武官達の食事まで作るだと?何故他に頼ろうとしない?」
「だってそれは私が蒔いた種だから…」
「全てが中途半端になる懸念はしていないのか?」
「ちゃんと全てやり切るわ!」
乗り込んできた男達には冷静に対応していたのに、晏寿と秀英のやりとりはどんどんと過熱していく。
周りもどうやって止めたらいいのかわからず、思わず近くにいなかった景雲を探しにいくほどだった。
「景雲殿!こちらです!」
「あいつらはまた…」
甜丈が景雲を呼び、なおも二人の口論は激しくなる。
景雲はその姿を見て、呆れるしかなかった。
「さっきは私の実力を認めてくれたじゃない!」
「もちろん晏寿の頑張りはわかっている。だが時と場合があるだろう!」
そろそろ止めようと景雲が割って入ろうとした矢先だった。
「そうやって一人で溜め込む晏寿のことは、嫌いだ」
「あ」
「っ!」
晏寿の目が大きく見開かれる。景雲はまずいという表情で二人を見た。
発言した秀英も自分の言葉に驚いており、ぐっと手を握ると踵を返し「頭を冷やしてくる」と言って出ていった。
晏寿は暫く動かなかったが、腰を抜かしてその場にへたり込む。
景雲が近づき、晏寿の肩を叩く。
「晏寿…?」
「…、ぅう、けいうんー!」
景雲の顔を見ると晏寿の目からぶわっと涙が溢れ出した。
いきなり泣き出した晏寿に景雲もわたわたとする。
「だ、大丈夫か?」
「しゅ、しゅぅえいが、き、嫌いって…!」
わぁあっと大きな声を上げて泣く晏寿に周囲もまさか大泣きするとは思ってもみなかったため、皆が慌て出す。
「秀英も本心ではないさ!本人も驚いた顔をしていた!」
「で、でもしゅえい、は、うそ言わな、もん」
顔をぐしゃぐしゃにしながら泣く晏寿には、先程まで男達に憮然と立ち向かっていた姿は全く見られなかった。
「とにかく落ち着け。でないと秀英と話もできない」
「ぅ…ぐずっ…」
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