99 / 133
第7章 晏寿の奮闘編
11
しおりを挟む
遅めの昼食をとりながら、秀英と景雲は晏寿の話を聞いていた。
「それでね、斉将軍から許可をもらったから明日も押し掛けようと思って」
「初めは目的から外れていたからどうなるのかと思ったが、まさか将軍直々に許可を取り付けるとはな」
耳は晏寿の話を聞き、口はもぐもぐと動かし目の前の皿を空にしていく。
「一つ怪しいのが調理場なの。どうしても仕入れと出来上がった食事が噛み合わなくて。仕入れ通りの品であれば、もっと沢山の食事が作れるわ」
「それは調理を経験している晏寿だから気づく点ではないのか?」
「私の経験が活かせるのであれば、なお私が動かなきゃ」
食べながら仕事の話をする秀英と晏寿に対し、景雲は少し距離を置き傍観していた。
「景雲は、あれ?なんでそんな離れているの?」
晏寿が景雲に話を振ってようやく距離があることに気づいた。
景雲は呆れたように二人を見やる。
「俺は飯のときくらい、仕事以外の話がしたい。だがこれは俺の我儘だからな距離を置くことにしたんだよ」
「俺はお前達のような仕事人間ではない」と付け加えて、箸休めをボリボリと食べていた。
景雲の様子に晏寿と秀英はきょとんとする。同じ表情の二人に呆れていた景雲は噴き出してしまったのだった。
翌日、晏寿は武官の料理を作る所を訪れていた。そこでも晏寿は驚くこととなる。
「え…食材はこれだけですか?」
武官用に用意されていた食材は武官の半分の人数分程しかなく、全員分を賄える量ではなかった。
「これだけの食材を用意する分しか金は渡されてないな。邪魔だからとっとと帰んな」
「あ、ちょっ…!」
あからさまに除け者扱いを受け、すぐに調理場から追い出されてしまった晏寿。
大きな音を立てて扉も閉められてしまった。
「おかしい…」
晏寿は呟くと、そのまま財務を担当している部署へと足を運んだ。
「すみません、武官用に供給されている食糧の費用についてお尋ねしたいんですけど」
「ん?そんなもの聞いてどうするんだ?」
近くにいた文官が首を傾げながら尋ねる。
晏寿は今しがた見てきたことを説明し、資金の割り振りを確認した。
「やっぱり…この金額なら倍は用意できるはず。どこかに流れているんだわ」
晏寿の呟きを聞いていた文官は、「そういえば」と思い出したことを語った。
「今の調理担当になってから、食べるものが粗末になったって知り合いの武官がぼやいていたよ。前の担当のほうが料理が美味かったって言っていたな」
「そうなんですね…これが仕入れた食材の一覧なんですけど、金額も量もおかしいんです」
「本当だな。天候の影響で仕入れ値は確かに変動はするが、これは酷い」
話しかけた相手が話のわかる文官で、晏寿の意見をすんなりと聞きいれてくれた。少しの違和感を晏寿は感じ、思わず聞いてしまった。
「それでね、斉将軍から許可をもらったから明日も押し掛けようと思って」
「初めは目的から外れていたからどうなるのかと思ったが、まさか将軍直々に許可を取り付けるとはな」
耳は晏寿の話を聞き、口はもぐもぐと動かし目の前の皿を空にしていく。
「一つ怪しいのが調理場なの。どうしても仕入れと出来上がった食事が噛み合わなくて。仕入れ通りの品であれば、もっと沢山の食事が作れるわ」
「それは調理を経験している晏寿だから気づく点ではないのか?」
「私の経験が活かせるのであれば、なお私が動かなきゃ」
食べながら仕事の話をする秀英と晏寿に対し、景雲は少し距離を置き傍観していた。
「景雲は、あれ?なんでそんな離れているの?」
晏寿が景雲に話を振ってようやく距離があることに気づいた。
景雲は呆れたように二人を見やる。
「俺は飯のときくらい、仕事以外の話がしたい。だがこれは俺の我儘だからな距離を置くことにしたんだよ」
「俺はお前達のような仕事人間ではない」と付け加えて、箸休めをボリボリと食べていた。
景雲の様子に晏寿と秀英はきょとんとする。同じ表情の二人に呆れていた景雲は噴き出してしまったのだった。
翌日、晏寿は武官の料理を作る所を訪れていた。そこでも晏寿は驚くこととなる。
「え…食材はこれだけですか?」
武官用に用意されていた食材は武官の半分の人数分程しかなく、全員分を賄える量ではなかった。
「これだけの食材を用意する分しか金は渡されてないな。邪魔だからとっとと帰んな」
「あ、ちょっ…!」
あからさまに除け者扱いを受け、すぐに調理場から追い出されてしまった晏寿。
大きな音を立てて扉も閉められてしまった。
「おかしい…」
晏寿は呟くと、そのまま財務を担当している部署へと足を運んだ。
「すみません、武官用に供給されている食糧の費用についてお尋ねしたいんですけど」
「ん?そんなもの聞いてどうするんだ?」
近くにいた文官が首を傾げながら尋ねる。
晏寿は今しがた見てきたことを説明し、資金の割り振りを確認した。
「やっぱり…この金額なら倍は用意できるはず。どこかに流れているんだわ」
晏寿の呟きを聞いていた文官は、「そういえば」と思い出したことを語った。
「今の調理担当になってから、食べるものが粗末になったって知り合いの武官がぼやいていたよ。前の担当のほうが料理が美味かったって言っていたな」
「そうなんですね…これが仕入れた食材の一覧なんですけど、金額も量もおかしいんです」
「本当だな。天候の影響で仕入れ値は確かに変動はするが、これは酷い」
話しかけた相手が話のわかる文官で、晏寿の意見をすんなりと聞きいれてくれた。少しの違和感を晏寿は感じ、思わず聞いてしまった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる