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第4章 後宮潜入編

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秀英が建物内にいる間景雲は建物の裏に周り、何かないか探していた。
裏には人気はなかったが、景雲は細心の注意を払っていた。

「…ん?」

景雲は裏口を発見し、そこに入ることにした。
中は薄暗く、じめじめとしている。
カビ臭い中を進んでいった。

どんどん進んでいくと幾つかの部屋が現れ、景雲は手始めに一番手前の部屋へと入っていった。
その部屋の中には複数の棚があり、多くの書簡が置いてある。一冊を手にとり中を確認した。

「!」

景雲は驚愕した。
そして慌てて次の書簡に手を伸ばす。

「これは…!」

次に取った書簡で景雲は更に驚いた。
取った二冊を懐に隠し別の書簡を確認しようとしたが、景雲の動きが止まった。
足音が近づいてくる。
すぐさま景雲は物陰に隠れた。
足音はどんどん景雲の部屋に近づいてきて、思わず息をのんだ。
そして部屋の前で止まり、部屋に入ってきた。

「へへ、話のわかる客だなぁ。ちょっと話しただけでこんなにくれるとは」

入ってきた男は巾着の中の金をにやにやしながら数えだした。
横目で見た景雲は男の持っている巾着に見覚えがあった。
一目で秀英の物だと気付き、秀英の身を心配したが男の一人言から何となくだが無事であることを確信した。

「はぁ~、これなら酒をいくらでも飲めるなぁ。また来ねぇかなぁ」

男は満足したのか、金を数え終わったら部屋をあとにした。
景雲はほっと息をついて、つい油断して音を立ててしまった。

「ん?」

男がせっかく部屋を出ていったのに戻ってきてしまう。
景雲はもう逃げられないと思って、わざと出ていった。

「誰だぁ、お前」
「いや、すまない。本当は表から入ろうとしたんだが、迷ってしまって」

男は訝しげに景雲を睨みつける。しかし、景雲は負けていなかった。

「ここに来たら、良い娘が簡単に手に入ると聞いて来たんだ。しかしこちらは裏のようだな。これで勘弁してくれ」

そう言って、男に金を握らせる。
手元を男は確認して
「仕方ないっすねぇ」
と納得していた。

景雲はしめた、と思い更に畳みかけた。

「ん?そこの懐から少し見えている巾着だが…すごく良い品だな。きっと高く売れる」
「へぇ、お兄さん目利きができるんですかぁ?」
「俺の家はそこそこの家柄だ。だから小さいときから良い物は見てきた。金に困ったらそれを売ればいい。高く買い取ってくれる店を紹介してやろうか?」
「おぉ、是非に!」

そして景雲は男に店の名前を教え、建物を出た。

景雲は確信があった。
この男はすぐに秀英の巾着を売ると。

これから忙しくなると思いながら秀英との待ち合わせ場所まで行くのだった。


合流した二人はすぐさま仕事場に戻り、互いの情報を共有した。

景雲は懐から書簡を取り出す。

「いいもの持ってきた」
「盗んだのか?」
「非合法の場所のものだ。どうせこれから取り締まられる。むしろ、ここまで丁寧に記帳してあることに驚いたよ」

景雲の行動に秀英は眉をひそめたが、景雲の言うことにも一理あるので口を閉ざした。
一冊景雲から受け取り確認すると、秀英は目を見開いた。

「驚いただろう?それは顧客一覧だ。もう一冊はどこで人を攫ってきたのかを書いてある。まさかここまで整理されているとはな」
「確かに…それにこれは良い証拠になる」
「秀英の収穫は?」

ぱたんと書簡を閉じる。

「景雲ほどではない。ただ、糸 稜現が大きく関わっているらしい」
「というと?」
「一番の顧客であり、投資もしているようだ。
だからあの店を粛清することにより、糸 稜現を追い込むこともできる」
「ほぉ、それは晏寿のためにもなるな。ところで秀英」
「なんだ」

唐突に名前を呼ばれて、少し目を見開く。

「店にいた、やけに語尾を伸ばす男を覚えているか?」
「ああ、いたな」
「あの男に金の巾着を渡したろう?」
「会ったのか?」
「これを取りにいったときにばったり会ってしまってな。だか俺もただでは帰って来なかったぞ」

意味深に笑う景雲に訝しげな気分になる。
秀英は景雲の言葉を待った。

「あの巾着は高く売れると吹っ掛けておいて、そして俺の知りあいの店を紹介しておいた。あの調子じゃ、きっとすぐに売りに行くはずだ。だから店側に話を通しておいてあの男を捕まえよう」
「なるほど…そして証人にするわけか」
「ああ。あの男は簡単に寝返るさ」

互いの得た情報を共有し、二人は急ぎ足で戻るのだった。
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