平凡と、もふもふ。

鶴上修樹

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第一章 もふもふを知る

#0 もふもふとの出会い

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 ――あちゅい。
 窓から日の光が差し込み、あたたかさが顔に当たる。目をうっすらと開けても眩しくて、『僕』はまた、目を閉じてしまう。
「うぅ。もう、朝なんだ……」
 僕は、ごく平凡の会社員である。勉強、運動、仕事、どれも平凡。唯一平凡じゃないのは、モテない事――って、これは僕の僻みだ。
「てか、今日から休みなんだった……もう少し寝よう……」
 数週間前。上司から「有休が溜まってるし、少しは休んだらどうだ」と言われたので、ありがたく三日間ほど有休をいただいて、久々のゆっくりデーとなった。今日はもう、一日中寝よう。
 ――もふっ。
 右手を軽く動かした、次の瞬間。手のひらが、やわらかいものに触れた。何だろう、うさぎやモルモットの感触と似てる。目を開けるのは面倒だけど、気になる。僕は、箱の中身を当てるクイズのように、ベタベタと謎のものに触っていた。
「……もふー」
「……んぇ?」
 喋った。鳴き声みたいなのを聞いたら、驚きで右手が固まった。何、今の。もふーって言った? 僕が触ってる奴、何? 次に、指先だけをこちょこちょと動かしてみた。
「もふっ? ……もひゅ! もひゅもひゅ~!」
 はしゃいでるような声が聞こえて、僕は思った。これ、生き物ではないか――と。しかし、昨日の僕はお酒を一滴も飲んでいないし、夜更かししないで普通に寝た。その時に、もふもふ鳴く生き物なんていなかった。
「もふ! もっふぅ~!」
「えっ? うわっ、ぷっ……!」
 僕が考えている間に、謎のものは僕の顔の上に乗った。顔からも無数の毛のやわらかさを感じたので、謎のものは毛深いのかもしれない。――てか、考えてる場合じゃない! 息が苦しくて、窒息する!
「ん~っ、はぁ! はぁ、はぁ……一体、何!」
 死にかけたおかげで目が覚めて、僕は両手ですぐに謎のものを顔からはがした。黒くて丸みのある一頭身の生き物にあるのは、二本の丸みを帯びた触角と、雪のように白い瞳。大きさは人間の顔くらいで、一頭身の下はスカートのフリルみたいになっている。あと、身軽で毛深い。はっきり言って、この生き物は見た事がない。
「えっ……何、これ?」
 未知の生き物は、僕と目が合うと、キャッキャとはしゃいだ。黒くてちっちゃいおててを、上下にパタパタさせている。
「もふっ! もっふふぅ~!」
 ――僕達の出会いは、【突然】から始まった。
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