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第4章 生贄
第8話
しおりを挟む「やあ、こんなところで人に会うなんて珍しいこともある」
目の前に現れたのはくたびれたスーツを来た男性だった。
しかも無精ひげが生えている。
一見すると疲れたサラリーマンのようなのに
彼がまとう雰囲気は怪しくて、少し気味が悪かった。
誰だろう。こんなところで会う人なんて只者ではない。それだけは分かる。
「てめぇ!なんでここにいる!」
戒さんの怒鳴り声が私の体に響く。
いつもの戒さんじゃない、ぴりぴりした空気が流れる
みんなもそうだった。
一体、この人は誰なの?
「そちらこそ。よくここの存在がわかったね」
よれよれのスーツのその人は
ニヤニヤ笑いながらこっちに近づいてきた。
「おまえこそ、なんでここの存在を知っている!」
鳳先生がみんなより一歩前に出た。
「いやあ、ここには白薔薇姫やその伝説についてたくさんの記録があるからね。たまに見に来ているんだよ。僕は陰陽寮の職員だからね」
陰陽寮?職員?いったいなんのこと?
「知っているのになぜここの存在を俺達に隠していた?何か知られたくないことがあるからじゃないのか?」
蓮さんもまた一歩前にでる。
蛍さんもその言葉にうなづいている。
みんな、この人と面識があるみたいだ。
誰なのか気になるけれど口を挟める空気ではない。
倫になら聞けるかと思ってちらりと横目で彼女を見ると
真青な顔をして体を震わせていた。
あの明るい倫がこんなになるなんて
どういうことなに?
「倫…大丈夫…?」
小声で話しかけると
一瞬びくっと肩を揺らして、それからゆっくりと私の顔を見た。
少し安心したような顔をして、それから私の手をぎゅっと握った。
指先まで冷たくなっている…。
「知らせなかったのは申し訳ないと思っているよ。でも知らせたところで君たちに読めるとも思わなかったんだ」
「チッ!」
戒さんが大きな舌打ちをした。
「それより…君の後ろに隠れているお嬢さん…初めて見る顔だね。もしかしたら君が白薔薇姫の末裔なのかい?」
ヨレヨレスーツの男の人がこちらに近付いて来る。
倫の握る力が強くなる。
「やめろ!二人に近付くんじゃねぇ!」
戒さんと蛍さんが両手を広げて私たちをかくまう。
私も体全体で倫のことを隠した。
そうした方がいいと思った。
倫はこの人のことを怖がっているから。
道をふさがれたその人は
やれやれとため息をついた。
「じゃあせめて、白薔薇姫に挨拶くらいさせてよ」
「断る!」
鳳先生と蓮さんが彼の肩を掴んで動きを止めた。
彼はまた大きなため息をついた。
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