82 / 89
【1部】第五章.いざ行かん馬車の旅
073
しおりを挟む
「おはようございます、ブロッサム様。昨夜はゆっくりお休みいただけましたか?」
「アンナさんおはようございます。おかげ様で疲れも取れました」
「それは良かったです」
私がブロッサム様を起こしに来た時には、既にお目覚めになりお着替えも済ませておられました。
昨日こちらで用意したワンピースは皺だらけにしてしまったと、とても恐縮されておりましたが、元々皺のできやすい素材でしたのでお気になさらないで下さいと、何とか落ち着いていただきました。
それにしても、やはりブロッサム様は磨けば光る原石でございます。
手足もすらりと長く、首もほっそりとされている。
今着ている物は、ご本人がお持ちになっていたワンピースのようで、生地も仕立ても良くブロッサム様に非常に似合っておりますが、惜しむらくは櫛を通してそのままの御髪でしょうか…。
黒々と艶やかな髪を、ただ流したままというのは何とも野暮ったい。
ワンピースに合わせて、もう少しアレンジを加えたくなりました。
「お食事の前に、少し御髪を整えさせていただきますね!!」
「えッと…?」
「お召しになっているお洋服はとても似合っておりますが、御髪を整えればもっと素敵になりますので、さ、ドレッサーの前へ」
少々強引ではありますが、ブロッサム様を鏡の前に座らせます。
ブラシで梳くと、やはりサラサラで艶やかで綺麗な御髪でございます。
編み込みをしたり毛先に軽くカールをつけたりしてアレンジし、綺麗な襟足がしっかり見えるように少し高く結っていきます。
最後に、バルコニー付近に咲いていたネモフィラとマーガレットに保存魔法をかけ、髪飾り代わりに飾らせていただきました。
「ついでに軽くお化粧もさせていただきますね」
「えっ!?そこまでしなくても…」
「昨日は到着直後で仕方ありませんでしたが、お食事の後は子爵様にお会いしていただきますので、流石にすっぴんで。という訳には行かないのでございます…」
「そ、そうなんですね…」
「はい。そうなのです」
屋敷の中で多くの調合士を抱えるガイドーン家では、すっぴんに作業着の女性が普通にうろついているので、子爵様も女性の身なりを気にするような方では無いのですが、そこはあえて秘密にしておきます。
とりあえず、納得していただけたようなので、鏡の前に自前の化粧道具を広げていきます。
もともとお顔立ちの整った方ですので、本当にうっすらとお化粧するだけにしておきました。
髪を整え、薄く化粧をしただけですが、ワンピースを着ただけよりもグッと華やかな印象になりました。
元々整った顔立ちをされているブロッサム様ですから、夜会用のドレスとお召しになれば会場の視線を釘付けにすること間違いなしでしょう。
「アンナさん、ありがとうございます。私、髪型をいじるの苦手で…。いつも後ろで縛るかそのままだったので…こんなに綺麗に整えて貰えるのは久しぶりです」
「いえ、私もブロッサム様の綺麗な御髪を整える事が出来て嬉しく思います」
ガイドーン家のお嬢様方も美しい方達ではありますが、私はお嬢様たちの専属ではございませんので、身なりを整えるというお役目をする機会がございませんでした。
今回、お客様であるブロッサム様の御髪を整える事が出来て非常に満足しました。
自分の欲望を優先した事は褒められた事では無いと自覚しておりますが、自分の仕事に満足をした私は、手早く朝食をテーブルに並べていきます。
ブロッサム様の横では、従魔であるスライムのライム様も、勢いよく山盛りになっている薬草を食べています。
そんなライム様をニコニコと眺めながらお食事をされているブロッサム様は、平民とは思えない優雅さでカトラリーを扱っております。
先ほども、過去には髪や身なりを整えてくれる人が居たというような事をおっしゃっていましたし、やはり何か理由があって市井で暮らしておられる貴族の方なのでしょう。
無闇に詮索は致しませんが、色々と妄想が膨らみます。
ブロッサム様が食後のお茶を飲まれたのを見計らい、子爵様との面会についてお伝えしました。
「しばらくしたらお迎えに上がりますので、それまでお寛ぎください」
そう言って、私は食器などをサービスワゴンに乗せて退室いたしました。
「アンナさんおはようございます。おかげ様で疲れも取れました」
「それは良かったです」
私がブロッサム様を起こしに来た時には、既にお目覚めになりお着替えも済ませておられました。
昨日こちらで用意したワンピースは皺だらけにしてしまったと、とても恐縮されておりましたが、元々皺のできやすい素材でしたのでお気になさらないで下さいと、何とか落ち着いていただきました。
それにしても、やはりブロッサム様は磨けば光る原石でございます。
手足もすらりと長く、首もほっそりとされている。
今着ている物は、ご本人がお持ちになっていたワンピースのようで、生地も仕立ても良くブロッサム様に非常に似合っておりますが、惜しむらくは櫛を通してそのままの御髪でしょうか…。
黒々と艶やかな髪を、ただ流したままというのは何とも野暮ったい。
ワンピースに合わせて、もう少しアレンジを加えたくなりました。
「お食事の前に、少し御髪を整えさせていただきますね!!」
「えッと…?」
「お召しになっているお洋服はとても似合っておりますが、御髪を整えればもっと素敵になりますので、さ、ドレッサーの前へ」
少々強引ではありますが、ブロッサム様を鏡の前に座らせます。
ブラシで梳くと、やはりサラサラで艶やかで綺麗な御髪でございます。
編み込みをしたり毛先に軽くカールをつけたりしてアレンジし、綺麗な襟足がしっかり見えるように少し高く結っていきます。
最後に、バルコニー付近に咲いていたネモフィラとマーガレットに保存魔法をかけ、髪飾り代わりに飾らせていただきました。
「ついでに軽くお化粧もさせていただきますね」
「えっ!?そこまでしなくても…」
「昨日は到着直後で仕方ありませんでしたが、お食事の後は子爵様にお会いしていただきますので、流石にすっぴんで。という訳には行かないのでございます…」
「そ、そうなんですね…」
「はい。そうなのです」
屋敷の中で多くの調合士を抱えるガイドーン家では、すっぴんに作業着の女性が普通にうろついているので、子爵様も女性の身なりを気にするような方では無いのですが、そこはあえて秘密にしておきます。
とりあえず、納得していただけたようなので、鏡の前に自前の化粧道具を広げていきます。
もともとお顔立ちの整った方ですので、本当にうっすらとお化粧するだけにしておきました。
髪を整え、薄く化粧をしただけですが、ワンピースを着ただけよりもグッと華やかな印象になりました。
元々整った顔立ちをされているブロッサム様ですから、夜会用のドレスとお召しになれば会場の視線を釘付けにすること間違いなしでしょう。
「アンナさん、ありがとうございます。私、髪型をいじるの苦手で…。いつも後ろで縛るかそのままだったので…こんなに綺麗に整えて貰えるのは久しぶりです」
「いえ、私もブロッサム様の綺麗な御髪を整える事が出来て嬉しく思います」
ガイドーン家のお嬢様方も美しい方達ではありますが、私はお嬢様たちの専属ではございませんので、身なりを整えるというお役目をする機会がございませんでした。
今回、お客様であるブロッサム様の御髪を整える事が出来て非常に満足しました。
自分の欲望を優先した事は褒められた事では無いと自覚しておりますが、自分の仕事に満足をした私は、手早く朝食をテーブルに並べていきます。
ブロッサム様の横では、従魔であるスライムのライム様も、勢いよく山盛りになっている薬草を食べています。
そんなライム様をニコニコと眺めながらお食事をされているブロッサム様は、平民とは思えない優雅さでカトラリーを扱っております。
先ほども、過去には髪や身なりを整えてくれる人が居たというような事をおっしゃっていましたし、やはり何か理由があって市井で暮らしておられる貴族の方なのでしょう。
無闇に詮索は致しませんが、色々と妄想が膨らみます。
ブロッサム様が食後のお茶を飲まれたのを見計らい、子爵様との面会についてお伝えしました。
「しばらくしたらお迎えに上がりますので、それまでお寛ぎください」
そう言って、私は食器などをサービスワゴンに乗せて退室いたしました。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ある犬のリアルティー
汐兎
ファンタジー
日々の暮らしの中で、僕ら犬が何を見て、何を感じているのか、床から数センチの僕らの目線に広がる世界を垣間見たいという全ての人間たちへ贈る史上初のエッセーである。(〜2022夏)
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
来世にご期待下さい!〜前世の許嫁が今世ではエリート社長になっていて私に対して冷たい……と思っていたのに、実は溺愛されていました!?〜
百崎千鶴
恋愛
「結婚してください……」
「……はい?」
「……あっ!?」
主人公の小日向恋幸(こひなたこゆき)は、23歳でプロデビューを果たした恋愛小説家である。
そんな彼女はある日、行きつけの喫茶店で偶然出会った32歳の男性・裕一郎(ゆういちろう)を一眼見た瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
――……その裕一郎こそが、前世で結婚を誓った許嫁の生まれ変わりだったのだ。
初対面逆プロポーズから始まる2人の関係。
前世の記憶を持つ恋幸とは対照的に、裕一郎は前世について何も覚えておらず更には彼女に塩対応で、熱い想いは恋幸の一方通行……かと思いきや。
なんと裕一郎は、冷たい態度とは裏腹に恋幸を溺愛していた。その理由は、
「……貴女に夢の中で出会って、一目惚れしました。と、言ったら……気持ち悪いと、思いますか?」
そして、裕一郎がなかなか恋幸に手を出そうとしなかった驚きの『とある要因』とは――……?
これは、ハイスペックなスパダリの裕一郎と共に、少しずれた思考の恋幸が前世の『願望』を叶えるため奮闘するお話である。
(🌸だいたい1〜3日おきに1話更新中です)
(🌸『※』マーク=年齢制限表現があります)
※2人の関係性・信頼の深め方重視のため、R-15〜18表現が入るまで話数と時間がかかります。
この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します
ロゼ
ファンタジー
魔法なしで家を追い出された俺。
王都に向かう途中で出会った黒龍から、生まれ持っていたスキルを発動してもらい、この世界にはいない猫に変身!
黒龍を相棒に、倒した魔物で稼いだ金でのんびり旅。
でも気付けば猫の俺、捕獲対象として賞金掛けられてた!
でもまぁ、人間の姿なら誰にも分かんないよな。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
最強ドラゴンを生贄に召喚された俺。死霊使いで無双する!?
夢・風魔
ファンタジー
生贄となった生物の一部を吸収し、それを能力とする勇者召喚魔法。霊媒体質の御霊霊路(ミタマレイジ)は生贄となった最強のドラゴンの【残り物】を吸収し、鑑定により【死霊使い】となる。
しかし異世界で死霊使いは不吉とされ――厄介者だ――その一言でレイジは追放される。その背後には生贄となったドラゴンが憑りついていた。
ドラゴンを成仏させるべく、途中で出会った女冒険者ソディアと二人旅に出る。
次々と出会う死霊を仲間に加え(させられ)、どんどん増えていくアンデッド軍団。
アンデッド無双。そして規格外の魔力を持ち、魔法禁止令まで発動されるレイジ。
彼らの珍道中はどうなるのやら……。
*小説家になろうでも投稿しております。
*タイトルの「古代竜」というのをわかりやすく「最強ドラゴン」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる