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【1部】第四章.旅立ちの準備

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駅馬車は料金が高いとナビが言っていたので、少し多めの30万ミルスを財布に入れて宿を出た。
朝行った市場を抜けた先にある街の西門へと向かう。この門の付近に、ザラック行の駅馬車の営業所があるのだそう。

「えっと…あ、冒険者ギルドってこっちにあるんだ」
場所で言うならば、城の後ろ側に位置する西側。
そこに、レンガと木材で作られた無骨な3階建ての建物が有った。

入り口の上に大きく【冒険者ギルド】と看板が掲げられているのですぐにわかる。
普通冒険者ギルドって、街の正面に位置する場所にある物じゃないの?とも思ったけど、表向きだけでも国を立てておかなきゃいけないのかも知れない。

冒険者ギルドには用は無いのでそのまま通り過ぎ、駅馬車の営業所に行く。
そこには幌の付いた大小さまざまな馬車が停まっていた。

「いらっしゃいませ、ブロドー交通へようこそ。ご用件をどうぞ」

駅馬車のチケット販売をしている窓口へ行くと、愛想の良い女性が対応してくれた。

「ザラック行の駅馬車に乗りたいのですが、一番早く出発する馬車を教えてください」
「はい、ザラック行ですね。それでしたら、明日の夕方出発する便があります。お一人でしたら座席に空きもございます」
「じゃあ、それでお願いします」

「今回は護衛の冒険者のランクが銀の上級となっておりますので、料金が15万ミルスになりますが…よろしいですか?」

「はい、お願いします」

15万でも護衛も居て食事も出るなら安いんじゃないだろうか。冒険者のランクは正直良く解らないんだけどね。
財布から金貨を15枚支払うと、受付の女性から金属でできた割符の片方を受け取った。

「馬車の出発は明日の夕方5時となります。必ず出発時間より前にこの営業所へお越しください。お客様が来なくても出発しますのでお気を付けくださいね」

馬車に乗る前に一度乗客を集めて割符のチェックをして、その後に乗客の荷物を積み込んで出発となるそうだ。

「あの、こちらで何か用意しておくべきものなどは有りますか?」
「そうですね…お客様の不便の無いようにはしておりますが、酔い止め薬や座る際に敷くクッション、寝る際の毛布などはご自分で用意なさった方が良いですね。あと、昼間は殆ど停車いたしませんので、簡単につまめるものや、水場で水を汲む水筒などはしっかりご用意なさってください」

「なるほど、参考になりました。ありがとうございます」
「はい、では明日お待ちしております」

なんともあっけなく駅馬車の予約が出来てしまったので、ご飯を食べに市場の方へ戻ることにした。


お昼はケバブサンドだ!
スパイシーな味付けに、しゃきしゃきの野菜がたまらなく美味しい。
別の店で買った果実水も、レモンのような爽やかな酸味とすっきりした甘さが絶妙で美味しい。
果実水の入っていた木製のコップはお店に返却しないといけない。

やっぱりご飯が美味しいと幸せだね。

お腹もいっぱいになったので、市場の中で色々と食材を買っていく。

とは言った物の、人が見ている前でアイテムボックスに収納する事は出来ないので、カバンがいっぱいになったら、物陰でこそこそとアイテムボックスに移動させた。

野菜はニホンに居た時に食べていた物と見た目は殆ど変わりが無く、あれもこれもと色々買ってしまった。
果物も同じで、馴染みのあるリンゴや柑橘類、ベリー類が沢山並んでいたので、こちらも沢山買ってしまった。

肉類は魔獣の肉ばかりだった。

お店にはフォレストブルみたいに、頭にフォレストが付く名前の魔獣が多く、フォレストブル、フォレストボア、コカトリスこの3種が主に食べられている肉類のようだ。

他にもフォレストシープだったりフォレストラビット、オークの肉なんかも売っていた。
オークの肉は高級品らしく、他の肉の倍の値段が付いていた。美味しいのかな?

とりあえず、コカトリスの卵、チーズ、牛・猪・鳥の3種類の肉と、ソーセージや燻製肉を購入した。

ミルクは入れ物が無いから買わなかった。液体関係を買う時は何か考えないとだなぁ…
ついでに隣のお店でバゲットを10本買った。

しかし、ミルクやチーズなどの加工品やコカトリスの卵と言った物はあるので、ある程度の畜産という物は有るようだが完全な食肉の為の畜産はあまり無いっぽい。

肉の次は魚と言いたいところだったが、魚に関しては色んな意味でファンタジーだった。
何か沢山足の生えた魚とか、虹色をした蛇みたいなのとか、見た目のインパクトが凄いものばかりだったので買うのは諦めた。

ある程度食材を買い終わって、今の所持金は9万ミルス。
調子に乗って食材買い過ぎたわ。

とりあえず、道具屋さんへ足を運んだ。

道具屋では、革製の水袋や小さいスコップなどを購入した。
買った物は鞄に収まるように選んだ。旅をする人間がカバンに何も荷物が入っていないのはおかしいからね。

それと、毛布と薄めのクッションも買った。なんと、ドーナツクッションが売ってましたよ。
名前もまんまドーナツクッション。

お店の入り口付近では、本物のドーナツも売ってたので思わず買ってしまった…。

一個200ミルス。
砂糖がたっぷり使われているけど、そこまで高いわけでもない。
やっぱり砂糖や香辛料は市民にも浸透しているようだ。

店を出てぶらぶらと歩いていると、売店のような場所では数種類の新聞が売って居たり、本屋も数件ある。
製紙、印刷、製本の技術がしっかりしているのだろう。

しかし、本は高価なようで一冊10万ミルスとかで売っている。
装丁も豪華だし、中世ヨーロッパみたいに本はお金持ちのステータス的な立ち位置っぽい。

このあたりは本当に活気があってにぎやかだ。
冒険者ギルドが治安を守り、商人ギルドが物流を担っているのだろうか?

じゃあ国は何やってるんだって話になるけど…貴族を優遇してるんだろうねぇ。
ただ、ここは王都だからこんな感じなだけで、他の領地に行けばちゃんとした領主もいると思いたいね。

明日から向かうザラックを治めている領主さんは、良い人だと良いんだけど。

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