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3.無能聖女、馬車の中で考える
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そもそも、貴族の結婚ははっきり言って政略結婚だ。当事者同士の心情など関係なく、国家を滞りなく動かすための手段に他ならない。10歳の時、トルテが聖女に選ばれると同時に殿下と結ばれた婚約もその為のものだった。
もちろんトルテも、ゆくゆくは聖女としてだけでなく王妃としても、この国の為に殿下を支えていく事に拒否感は無かった。
そして、出来れば殿下と心から愛し合いたかった。聖女としての役目を果たす傍ら、殿下が授業をサボった時は探し回り呼び戻し、有力貴族に失礼な事をすれば、慌てて謝罪をしに行ったりとしりぬぐいばかりをしていた。行動を諌めれば、自分はいずれ国王になるのだから、そんな事は気にしなくてもいいのだと、トルテよりも3歳年上のはずの殿下は、幼子のような事を言うばかりだった。
そうやって7年間、彼の自分本位な行動に振り回されたトルテは、彼と心を通わせようと思う事も無くなってしまった。何よりも、1年前に知ってしまった聖女の秘密…。今まで自分が正道と思いやって来た事が、どれだけ酷い事だったのかを思い知ってしまった。
聖女の役目は主に二つある。一つは国を守る結界を維持し、国土を護る事。もう一つは魔神ダークによって呪いを受けた者たちを救う事。
前者の役目は、トルテと他の6人の聖女たちで交代しながら魔力を流すことで維持されている。後者の役目に関しては、トルテ以外の聖女は一度の多くの呪いを解くことが出来ないらしく、いつもトルテ一人が任されていた。その実力を認められ、トルテは筆頭聖女になったのだった。
この呪いを解くという役目は年に数回、呪われの森という場所に囚われている者たちを救う事だった。この役目の始まりはツイース王国建国の歴史にも関係している。
このツイース王国はぐるりと国を囲むように結界が張られていて、精霊やエルフ、魔獣などの人間以外の種族が出入りできないようになっている。建国当初は、それだけではなく、鳥や獣達が一度結界の中に入ると外には出られなくなるようになっていた。
何故そのような事になっていたのかと言えば、結界が張られた当初この国は肥沃な草原が多くを占め、多くの野生動物がいたが、続々と逃げてくる人々を支えるには足りなかったのだ。そのため食料を確保する為に、他種族のもとから逃盗んできた動物達も含め、この結界内にとどめておかなければならなかったのだ。
500年前まで人間は、光の女神ライトと魔神ダークの加護を殆ど受ける事の出来なかった半端者として、エルフやドワーフたちの奴隷となっていた。長くても100年ほどしか生きられず、肉体も脆く体力も魔力も殆ど持たなかった人間と言う種族は、彼らにとって使い捨ての労働力でしかなかった。その為、人間たちの扱いは酷い物だったらしい。
そんな中、とある少女が広大な土地に人間だけが出入りできる結界を張り巡らせたのだ。「人間だけの安住の地」それがツイース王国の始まりだった。国が発展し落ち着いてくると、結界のこの効果は取り外され動物たちは自由に結界の内と外を行き出来るようになった。
しかし、一部の場所ではその効果が生き続けている場所がある。それが今トルテを乗せた馬車が向かっている、呪われの森だった。この森は、非常に多くの魔力が溜まっている。そのため、魔術の素材になる動植物が多く生息している。その大量の魔力のせいか、この森の結界だけが動物が外に出ることを許さずにいるのだった。
この森に囚われている者たちは、かつて闇の神ダークの呪いにより人から獣の姿へ変えられてしまった者たちの末裔で、獣の気配が混じったせいで結界の外に出ることができないのだ。その呪いを解き、森から解放するのが聖女の二つ目の役目であった。
そしてこれが、トルテが放棄した聖女の役目でもあった。
(あれを見たおかげで、この国の欺瞞に気が付けたのよね…)
そんな事を考えていると、馬車がガタンと止まった。どうやら呪われの森に着いたようだ。
思った以上に早く着いたようで、夜明けの気配は遠かった。
※-----------------------※
トルテが役目を放棄した理由、さんざんじらしますがもう少し後できちんと出てきますのでお待ちください。
もちろんトルテも、ゆくゆくは聖女としてだけでなく王妃としても、この国の為に殿下を支えていく事に拒否感は無かった。
そして、出来れば殿下と心から愛し合いたかった。聖女としての役目を果たす傍ら、殿下が授業をサボった時は探し回り呼び戻し、有力貴族に失礼な事をすれば、慌てて謝罪をしに行ったりとしりぬぐいばかりをしていた。行動を諌めれば、自分はいずれ国王になるのだから、そんな事は気にしなくてもいいのだと、トルテよりも3歳年上のはずの殿下は、幼子のような事を言うばかりだった。
そうやって7年間、彼の自分本位な行動に振り回されたトルテは、彼と心を通わせようと思う事も無くなってしまった。何よりも、1年前に知ってしまった聖女の秘密…。今まで自分が正道と思いやって来た事が、どれだけ酷い事だったのかを思い知ってしまった。
聖女の役目は主に二つある。一つは国を守る結界を維持し、国土を護る事。もう一つは魔神ダークによって呪いを受けた者たちを救う事。
前者の役目は、トルテと他の6人の聖女たちで交代しながら魔力を流すことで維持されている。後者の役目に関しては、トルテ以外の聖女は一度の多くの呪いを解くことが出来ないらしく、いつもトルテ一人が任されていた。その実力を認められ、トルテは筆頭聖女になったのだった。
この呪いを解くという役目は年に数回、呪われの森という場所に囚われている者たちを救う事だった。この役目の始まりはツイース王国建国の歴史にも関係している。
このツイース王国はぐるりと国を囲むように結界が張られていて、精霊やエルフ、魔獣などの人間以外の種族が出入りできないようになっている。建国当初は、それだけではなく、鳥や獣達が一度結界の中に入ると外には出られなくなるようになっていた。
何故そのような事になっていたのかと言えば、結界が張られた当初この国は肥沃な草原が多くを占め、多くの野生動物がいたが、続々と逃げてくる人々を支えるには足りなかったのだ。そのため食料を確保する為に、他種族のもとから逃盗んできた動物達も含め、この結界内にとどめておかなければならなかったのだ。
500年前まで人間は、光の女神ライトと魔神ダークの加護を殆ど受ける事の出来なかった半端者として、エルフやドワーフたちの奴隷となっていた。長くても100年ほどしか生きられず、肉体も脆く体力も魔力も殆ど持たなかった人間と言う種族は、彼らにとって使い捨ての労働力でしかなかった。その為、人間たちの扱いは酷い物だったらしい。
そんな中、とある少女が広大な土地に人間だけが出入りできる結界を張り巡らせたのだ。「人間だけの安住の地」それがツイース王国の始まりだった。国が発展し落ち着いてくると、結界のこの効果は取り外され動物たちは自由に結界の内と外を行き出来るようになった。
しかし、一部の場所ではその効果が生き続けている場所がある。それが今トルテを乗せた馬車が向かっている、呪われの森だった。この森は、非常に多くの魔力が溜まっている。そのため、魔術の素材になる動植物が多く生息している。その大量の魔力のせいか、この森の結界だけが動物が外に出ることを許さずにいるのだった。
この森に囚われている者たちは、かつて闇の神ダークの呪いにより人から獣の姿へ変えられてしまった者たちの末裔で、獣の気配が混じったせいで結界の外に出ることができないのだ。その呪いを解き、森から解放するのが聖女の二つ目の役目であった。
そしてこれが、トルテが放棄した聖女の役目でもあった。
(あれを見たおかげで、この国の欺瞞に気が付けたのよね…)
そんな事を考えていると、馬車がガタンと止まった。どうやら呪われの森に着いたようだ。
思った以上に早く着いたようで、夜明けの気配は遠かった。
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トルテが役目を放棄した理由、さんざんじらしますがもう少し後できちんと出てきますのでお待ちください。
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