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第10話
しおりを挟むいつものように仕事をこなすアンドレス王子をマリベルはジッと見た。
アンドレス王子って何考えてるのかよく分からない。
私が舞踏会に参加しない事に拘っていて、私が参加しないって事がハッキリしたら、落ち込んでるように見えたから……、ちょっと私に気持ちがあるのかなんて、おこがましい事も考えちゃったけど、今日は平然としてるし昨日のアレは何だったんだろう……?
「どうしたんだ?マルケル」
ジェルさんに声をかけられて、マリベルばハッとした。
「え!?い、いや、アンドレス王子、昨日は、ちょっと落ち込んだように見えたけど、今日はもう普通なんだなと思って」
「ああ!普通に見えるか?」
「はい」
「俺は、ちょっと無理してるように見えるかな」
やっぱりジェルさんは長年アンドレス王子の護衛をしているから、そういうのも分かるのかな。
「あの、ジェルさんは、どうしてアンドレス王子が、わ……えーと、マリベルが舞踏会に参加する事に拘ってるのか知っていますか?」
「あー、それな。俺も確かに昨日のアンドレス王子の行動には驚いたが……。俺も直接聞いたわけじゃないから、予想だけど……、バランスの問題?」
「バランス?」
「そう。ほら、もしマリベル嬢が参加できないとなると、舞踏会に参加するのは東部の令嬢が多くなる。まあ、それ自体はさほど問題ないが、1番は西部の最有力貴族令嬢がウリオス家のご令嬢だという事だ。ほら、東部はヴァロワ侯爵のお姉様であるハーリス様の娘がシスティナ公爵家に2人いるだろう?そうすると、やっぱり西部のウリオス家から誰か呼ばないとバランスが悪いんじゃないかな?……それか、ただ単純にマリベル嬢の事を……」
バランス!だから、アンドレス王子は私の参加に拘っていると……。うん、それだわ!
「なんだ?二人してコソコソと」
すると、アンドレス王子が書類を片手に睨んでいた。
「アンドレス王子の体調について話していたのです!」
「俺の体調?なんの問題もないが?それよりも、こっちは片付けたから、視察に行くぞ」
「はい」
それからもアンドレス王子は、いつも通りに仕事を終え、夜、自室に戻ってくるとベッドへ倒れ込んだ。
「アンドレス王子!」
「騒ぐな。大丈夫だ」
そう言うアンドレス王子に顔をしかめるとマリベルは、おでこに触れる。
熱いじゃない!
「熱がありますよ!全然、大丈夫じゃないしゃないですか!」
マリベルは急いで医者を手配して診てもらい、アンドレス王子は、今は薬を飲んでぐっすり寝ている。
マリベルは、寝込んでいるアンドレス王子の顔をジッと見つめた。
こんなにアンドレス王子をじっくり見たのは久しぶりだな……。
マリベルは、アンドレスを遠くから見ているだけだった時を思い出す。
アンドレス王子にじゃじゃ馬だって言われてから、あなたの事を素直に見る事が出来なくなったのよ?
マリベルは、頬を染めてアンドレスを見つめた。
「政治的な事だって分かったけど、私が舞踏会に出ないからって家まで来るとか、勘違いしそうになるから、もうしないで下さいよ?」
マリベルが、小さい声で悪態をつくとアンドレス王子の目が開いた。
「す、すみません。起こしてしまいましたか」
聞こえてなかったよね?
王子は虚ろな視線を私に向けると言った。
「マリベルか?俺が臥せっているからって、笑いに来たのか?」
「い、いえ、マルケ……」
マリベルがそう言いかけた時、アンドレスの手がマリベルの後頭部に触れた。
え?
そして、アンドレスはマリベルの頭を自身に寄せると口付けたのだった――
「!?!?」
マリベルは、咄嗟に顔を離すと、顔を真っ赤にして部屋から飛び出した。
それを、見たアンドレス王子は、虚ろな瞳から正気を取り戻す。
「あれ……?今のはマリベル……。――!!じゃないマルケル!?……やってしまった……」
いくら熱で朦朧としていたからってマルケルをマリベルと、間違えて口付けるなんて。
「俺の阿呆……」
アンドレス王子は、自身の目元を手で覆うと盛大なため息を吐いた。
それにしても……、あの顔は、反則だろ。
アンドレスは、頬を染めたマリベルの顔を思い出して、もう一度、大きくため息を吐いたのだった――
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