3 / 12
第3話 お誘いは突然
しおりを挟む
「シルヴィア様、今日もとてもお綺麗です」「プレーヘム伯爵はお元気ですか?」「シルヴィア様、私とダンスは如何ですか?」「いいえ、僕と踊って下さい!」
今日も舞踏会に参加したシルヴィアは男達が囲まれていた。
「シルヴィア様と一番最初に踊る栄誉をどうか私に」「いや、私と踊って下さい」「いや、僕と」
シルヴィアは自身を囲む男達を見渡す。
ミラヴェル侯爵令息、オリビアン伯爵令息にシスタリー男爵、その他の貴族男性方も……、何度も私に声をかけて下さっている方々。お手紙やプレゼントを受け取ったり、時にはダンスの誘いを受ける事も個別にお話をした事もあったけれど、どれも貴族令嬢としての義務感からだった。
きっとお父様はいずれこの中の誰かと私を婚約させるつもりでしょうから……。
はあ。どうしようもない事と分かっていても、私は一生、恋愛小説のような気持ちは知る事は出来ないのよね……。
シルヴィアは力のない笑みを浮かべると、気を引き締めプレーヘム伯爵家の名に恥じぬようにと、何とかよそ行き用の笑みを引き出した。そして、一番早くシルヴィアに声を掛けた男性の手を取ろうとした――が、視線を感じたシルヴィアはその手を止めた。
シルヴィアが視線を感じた方を見ると、エドワルドがこちらを見ていたのだ。
あら、エドワルド様もいらしていたのね。
するとシルヴィアは考えるよりも先に伸ばしかけていた手を引っ込めると、囲んでいる男達に微笑んだ。
「申し訳ございません。ご挨拶しなければならない方がいらっしゃるので、失礼いたします」
シルヴィアは、軽くカーテシーをするとエドワルドの方へと歩き出した。
案の定、エドワルドも令嬢達に囲まれていたが、シルヴィアが近付いてくるのが分かると、令嬢達を断ってシルヴィアの方へとやって来た。
シルヴィアは挨拶をしようとカーテシーの姿勢を取ろうとしたが、エドワルドは挨拶もそこそこにシルヴィアの耳元で囁いてきたのだ。
「シルヴィア嬢、少し話せるか?」「え?ええ」
突然の事に驚いたのも束の間、シルヴィアの返事を聞いたエドワルドは、シルヴィアの手を取ってバルコニーへとエスコートして行く。
その様は何ともスマートで、きっと彼は毎回こんな感じで女性を口説いているんだろうと、シルヴィアは一人納得していた。
バルコニーへ出ると少し肌寒くて、シルヴィアは肩をすくめた。すると、エドワルドが自身のジャケットを脱いでシルヴィアにの肩に掛けてくれる。
「寒いのに、外に連れ出してすまない」
「いいえ。こちらこそ、上着を貸して頂きありがとうございます。それで……お話とはなんでしょうか?」
シルヴィアがエドワルドを見上げると「ああ、その……」とエドワルドは、頬を少し赤らめて口籠るので、シルヴィアはエドワルドが言わんとしている事にピンときた。
本屋で会った事を秘密にするって再度の確認ね。
「この間、あそこで会った事でしたら、誰にも言っておりませんし、今後も言うつもりはありませんわ」
「え?ああ……。それも、そうなんだが……。その……」とエドワルドは、さらに言いにくそうに顔をしかめた後、意を決したようにシルヴィアを見た。
「シルヴィア嬢は、他にもああいう本を読んだ事はある……のか?」
「え……?」
シルヴィアは思ってもいなかった事を聞かれて、頬が熱くなり、目が泳いだ。
も、もしかして、恋愛小説を読むのが趣味だってバレてしまった?ど、どうしよう。軽蔑されてしまうわ……
「あ、あのそれは……」
早く否定しなければと思うのに、上手く言葉が出て来なくて、今度はシルヴィアが口籠ってしまう。すると、エドワルドが言いにくそうに話し始めた。
「も、もし良ければ、今度うちで一緒にお茶などどうだろうか?その……この間の本を読んでの考察などを話し合えれば、庶民の生活についての知識をより深められるのではないかと思ったのだ!」
「ええ!?」
思いもよらない突然の誘いに、シルヴィアは驚きを隠せない。
「もちろん、シルヴィア嬢が嫌でなければなんだが……」
とエドワルドは照れくさそうに髪をかくと、シルヴィアを見た。
こ、これは新刊の感動を分かち合えるって事!?い、いいえ、エドワルド様が仰っているのは、あくまで内容の考察をして、庶民の生活をより深く知る……、そうあの話をより深く分かち合えるチャンスという事よ!!
「は、はい!ぜひお伺いさせて下さい!!」
シルヴィアの答えにエドワルドが照れたような笑みを溢すとシルヴィアも釣られて照れくさそうに笑ったのだった――
今日も舞踏会に参加したシルヴィアは男達が囲まれていた。
「シルヴィア様と一番最初に踊る栄誉をどうか私に」「いや、私と踊って下さい」「いや、僕と」
シルヴィアは自身を囲む男達を見渡す。
ミラヴェル侯爵令息、オリビアン伯爵令息にシスタリー男爵、その他の貴族男性方も……、何度も私に声をかけて下さっている方々。お手紙やプレゼントを受け取ったり、時にはダンスの誘いを受ける事も個別にお話をした事もあったけれど、どれも貴族令嬢としての義務感からだった。
きっとお父様はいずれこの中の誰かと私を婚約させるつもりでしょうから……。
はあ。どうしようもない事と分かっていても、私は一生、恋愛小説のような気持ちは知る事は出来ないのよね……。
シルヴィアは力のない笑みを浮かべると、気を引き締めプレーヘム伯爵家の名に恥じぬようにと、何とかよそ行き用の笑みを引き出した。そして、一番早くシルヴィアに声を掛けた男性の手を取ろうとした――が、視線を感じたシルヴィアはその手を止めた。
シルヴィアが視線を感じた方を見ると、エドワルドがこちらを見ていたのだ。
あら、エドワルド様もいらしていたのね。
するとシルヴィアは考えるよりも先に伸ばしかけていた手を引っ込めると、囲んでいる男達に微笑んだ。
「申し訳ございません。ご挨拶しなければならない方がいらっしゃるので、失礼いたします」
シルヴィアは、軽くカーテシーをするとエドワルドの方へと歩き出した。
案の定、エドワルドも令嬢達に囲まれていたが、シルヴィアが近付いてくるのが分かると、令嬢達を断ってシルヴィアの方へとやって来た。
シルヴィアは挨拶をしようとカーテシーの姿勢を取ろうとしたが、エドワルドは挨拶もそこそこにシルヴィアの耳元で囁いてきたのだ。
「シルヴィア嬢、少し話せるか?」「え?ええ」
突然の事に驚いたのも束の間、シルヴィアの返事を聞いたエドワルドは、シルヴィアの手を取ってバルコニーへとエスコートして行く。
その様は何ともスマートで、きっと彼は毎回こんな感じで女性を口説いているんだろうと、シルヴィアは一人納得していた。
バルコニーへ出ると少し肌寒くて、シルヴィアは肩をすくめた。すると、エドワルドが自身のジャケットを脱いでシルヴィアにの肩に掛けてくれる。
「寒いのに、外に連れ出してすまない」
「いいえ。こちらこそ、上着を貸して頂きありがとうございます。それで……お話とはなんでしょうか?」
シルヴィアがエドワルドを見上げると「ああ、その……」とエドワルドは、頬を少し赤らめて口籠るので、シルヴィアはエドワルドが言わんとしている事にピンときた。
本屋で会った事を秘密にするって再度の確認ね。
「この間、あそこで会った事でしたら、誰にも言っておりませんし、今後も言うつもりはありませんわ」
「え?ああ……。それも、そうなんだが……。その……」とエドワルドは、さらに言いにくそうに顔をしかめた後、意を決したようにシルヴィアを見た。
「シルヴィア嬢は、他にもああいう本を読んだ事はある……のか?」
「え……?」
シルヴィアは思ってもいなかった事を聞かれて、頬が熱くなり、目が泳いだ。
も、もしかして、恋愛小説を読むのが趣味だってバレてしまった?ど、どうしよう。軽蔑されてしまうわ……
「あ、あのそれは……」
早く否定しなければと思うのに、上手く言葉が出て来なくて、今度はシルヴィアが口籠ってしまう。すると、エドワルドが言いにくそうに話し始めた。
「も、もし良ければ、今度うちで一緒にお茶などどうだろうか?その……この間の本を読んでの考察などを話し合えれば、庶民の生活についての知識をより深められるのではないかと思ったのだ!」
「ええ!?」
思いもよらない突然の誘いに、シルヴィアは驚きを隠せない。
「もちろん、シルヴィア嬢が嫌でなければなんだが……」
とエドワルドは照れくさそうに髪をかくと、シルヴィアを見た。
こ、これは新刊の感動を分かち合えるって事!?い、いいえ、エドワルド様が仰っているのは、あくまで内容の考察をして、庶民の生活をより深く知る……、そうあの話をより深く分かち合えるチャンスという事よ!!
「は、はい!ぜひお伺いさせて下さい!!」
シルヴィアの答えにエドワルドが照れたような笑みを溢すとシルヴィアも釣られて照れくさそうに笑ったのだった――
0
お気に入りに追加
292
あなたにおすすめの小説
貴方の子どもじゃありません
初瀬 叶
恋愛
あぁ……どうしてこんなことになってしまったんだろう。
私は眠っている男性を起こさない様に、そっと寝台を降りた。
私が着ていたお仕着せは、乱暴に脱がされたせいでボタンは千切れ、エプロンも破れていた。
私は仕方なくそのお仕着せに袖を通すと、止められなくなったシャツの前を握りしめる様にした。
そして、部屋の扉にそっと手を掛ける。
ドアノブは回る。いつの間にか
鍵は開いていたみたいだ。
私は最後に後ろを振り返った。そこには裸で眠っている男性の胸が上下している事が確認出来る。深い眠りについている様だ。
外はまだ夜中。月明かりだけが差し込むこの部屋は薄暗い。男性の顔ははっきりとは確認出来なかった。
※ 私の頭の中の異世界のお話です
※相変わらずのゆるゆるふわふわ設定です。ご了承下さい
※直接的な性描写等はありませんが、その行為を匂わせる言葉を使う場合があります。苦手な方はそっと閉じて下さると、自衛になるかと思います
※誤字脱字がちりばめられている可能性を否定出来ません。広い心で読んでいただけるとありがたいです
散財系悪役令嬢に転生したので、パーッとお金を使って断罪されるつもりだったのに、周囲の様子がおかしい
西園寺理央
恋愛
公爵令嬢であるスカーレットは、ある日、前世の記憶を思い出し、散財し過ぎて、ルーカス王子と婚約破棄の上、断罪される悪役令嬢に転生したことに気が付いた。未来を受け入れ、散財を続けるスカーレットだが、『あれ、何だか周囲の様子がおかしい…?』となる話。
◆全三話。全方位から愛情を受ける平和な感じのコメディです!
◆11月半ばに非公開にします。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる