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「ダーシャ嬢!この度は本当に申し訳なかった!!」
私は今、王宮で国王様に頭を下げられていた。
いや、恐れ多すぎる。
今回の婚約破棄の事で、お父様はやはり腹の虫が収まらなかったのか、国王に情報の漏洩があったのではないかと意見していたようだ。
「国王様、仕方がありませんわ。長年、秘密を抱えていれば、こういう事も起こりえます。国で代々の聖女の血筋を持つご先祖様達をずっと陰ながら保護対象として守って下さっている事、とても感謝しているんですよ」
「い、いや、だがしかし……そのせいでしたくもない婚約を迫られ、あまつさえ破棄をするなど……、やはりディデスの奴は極刑に!!」
国王の顔が極悪人のようになったので、ダーシャは慌てて言った。
「そんな事をしなくても良いんです。それに、私の素性を出せないのにディデス侯爵が突然極刑になったら、それこそ国王の乱心だと思われ国が乱れてしまいますよ」
「だ、だが……」
「本当に、良いんです。私は婚約破棄された事も気にしてませんから」
だって、今後ディデス侯爵家がどうなろうと、私はもう関わらなくて良いのだから。
私がニッコリと笑うと国王もやっと肩の力を抜いて、極悪人の顔から戻ってくれた。そして、少し国王と雑談した後、私は謁見の間を出たのだった。
今回、ディデス侯爵に私が聖女の末裔だとバレてしまったのは、以前私達を護衛してくれていた者が、ディデス侯爵家と懇意にしていた者だったらしい。その護衛が侯爵に漏らしてしまったようなのだ。残念ながらその護衛は他にも余罪があるようで、地下牢から一生出られないらしい。
国王との謁見を終えて、王宮の廊下を歩いていると
「ダーシャ嬢!」
とラデク王子に呼び止められた。ラデクは急いでダーシャの元へやって来た。
「ラデク王子、どうしたのですか?そんなに慌てて」
「君が、王宮に来ていると聞いて……。その……、婚約破棄されたと聞いたんだが……大丈夫か?」
ラデク王子はこちらを気遣うように聞いてきた。
「ええ。大丈夫ですよ。元々、お互いに恋愛感情があったわけでもないですし。すっきりとお別れ出来て良かったですわ」
ダーシャはあっけらかんとした様子で答えた。
「そ、そうか。それなら良かった。では、今度開催する私の誕生日の舞踏会にはぜひ参加してくれないだろうか?」
ラデク王子は、照れた様子でそう言った。
確か、先日招待状が届いていたけれど、アーモスにエスコートを頼まなければいけないから、気が進まなかったけれど、もう気にしなくていいものね。
「ええ、お伺いしまうわ」
「そうか!良かった!」
ダーシャの答えに、ホッとしたような笑みを見せたラデク王子にダーシャも釣られるようにクスリと笑うと、丁寧にカーテシーをして王宮を出た――
私は今、王宮で国王様に頭を下げられていた。
いや、恐れ多すぎる。
今回の婚約破棄の事で、お父様はやはり腹の虫が収まらなかったのか、国王に情報の漏洩があったのではないかと意見していたようだ。
「国王様、仕方がありませんわ。長年、秘密を抱えていれば、こういう事も起こりえます。国で代々の聖女の血筋を持つご先祖様達をずっと陰ながら保護対象として守って下さっている事、とても感謝しているんですよ」
「い、いや、だがしかし……そのせいでしたくもない婚約を迫られ、あまつさえ破棄をするなど……、やはりディデスの奴は極刑に!!」
国王の顔が極悪人のようになったので、ダーシャは慌てて言った。
「そんな事をしなくても良いんです。それに、私の素性を出せないのにディデス侯爵が突然極刑になったら、それこそ国王の乱心だと思われ国が乱れてしまいますよ」
「だ、だが……」
「本当に、良いんです。私は婚約破棄された事も気にしてませんから」
だって、今後ディデス侯爵家がどうなろうと、私はもう関わらなくて良いのだから。
私がニッコリと笑うと国王もやっと肩の力を抜いて、極悪人の顔から戻ってくれた。そして、少し国王と雑談した後、私は謁見の間を出たのだった。
今回、ディデス侯爵に私が聖女の末裔だとバレてしまったのは、以前私達を護衛してくれていた者が、ディデス侯爵家と懇意にしていた者だったらしい。その護衛が侯爵に漏らしてしまったようなのだ。残念ながらその護衛は他にも余罪があるようで、地下牢から一生出られないらしい。
国王との謁見を終えて、王宮の廊下を歩いていると
「ダーシャ嬢!」
とラデク王子に呼び止められた。ラデクは急いでダーシャの元へやって来た。
「ラデク王子、どうしたのですか?そんなに慌てて」
「君が、王宮に来ていると聞いて……。その……、婚約破棄されたと聞いたんだが……大丈夫か?」
ラデク王子はこちらを気遣うように聞いてきた。
「ええ。大丈夫ですよ。元々、お互いに恋愛感情があったわけでもないですし。すっきりとお別れ出来て良かったですわ」
ダーシャはあっけらかんとした様子で答えた。
「そ、そうか。それなら良かった。では、今度開催する私の誕生日の舞踏会にはぜひ参加してくれないだろうか?」
ラデク王子は、照れた様子でそう言った。
確か、先日招待状が届いていたけれど、アーモスにエスコートを頼まなければいけないから、気が進まなかったけれど、もう気にしなくていいものね。
「ええ、お伺いしまうわ」
「そうか!良かった!」
ダーシャの答えに、ホッとしたような笑みを見せたラデク王子にダーシャも釣られるようにクスリと笑うと、丁寧にカーテシーをして王宮を出た――
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